休憩室の端っこ

seitennosei

文字の大きさ
上 下
7 / 24

しおりを挟む
西日が差し込む部屋。
尊先輩の顔が近付いてくる。
「一花。」
それを合図に、私は持っていたマグカップをテーブルに置き、そちらの方に向き座り直す。
薄いラグが敷いてあるだけのフローリングに暫く座っていたので、脚にほんのり痺れを感じる。
尊先輩もこちらを向き胡座をかくと、自身の膝の上に私を導く。
膝の上に乗ってもまだ尊先輩の方が高くて、目の前にシャープな顎が見える。
口の横のホクロが色っぽくて好きだ。
「一花、良い?」
耳元で囁かれる。
コクリと私が頷くのと同時に制服のシャツの裾から手が侵入してきて、背中を直に撫でてくる。
擽ったがりの私は、肌の上を滑る手の動きに合わせて、ビクビクと身体を震わせてしまう。
「自分でシャツ開けて。」
この声で言われると、何でも言うことを聞いてしまう。
言われるがまま、シャツのボタンを上から外していると、尊先輩はついばむようなキスを何度かした後、舌で私の口をこじ開けた。
「ふぁっ…は…。」
強引に押し入った舌に口内をまさぐられ、堪えていた吐息が洩れる。
片手で私の背中を撫で回しながらブラのホックを外し、もう片方の手をスカートの中に入れヤワヤワとお尻を揉む。
いつもこの手馴れている感じに少し胸が痛むが、すぐに強い刺激に流されて忘れてしまう。
段々とお尻を揉む手が中心に近づき、指がショーツの中に侵入してくる。
「ふっ…あぁ。」
クチッと微かな音がし、指が秘部を掠める。
「もう良い?」
「…はい。」
本当はまだ完全に解れていない気がして不安に思いつつ、煩わしいと思われたくなくて拒否できない。
キスをしながらボトムのポケットに入っていたゴムを取り出した後、尊先輩はほんの少し唇を離し「一花、そのままチュウしてて。」と呟く。
微かに口を開き舌を見せ、見下ろしてくる目にゾクゾクと身震いがする。
いつも受け身の私が唯一任されている時間。
私はその舌に吸い付くと、尖らせた舌で尊先輩の舌の裏筋をゆっくりとなぞる。
緩急を付けて吸い続けながら、頭を前後させて扱く。
されるがままになっている舌をしつこく舐り続ける。
フェラを連想させるこのキスが尊先輩のお気に入りだ。
「はぁ…はぁ…。」
興奮から息を荒くし、手元も見ずにゴムをはめていく尊先輩。
装着中邪魔にならないよう腰を浮かせていると、時々固くなっている物がショーツ越しに入口を刺激してくる。
「ふっ、むぅ…ん…。」
舌を虐めることに集中して疎かになっていた下半身に、突然訪れた刺激が腰をヒクつかせる。
尊先輩は装着し終えると私の肩を掴み、少し強引に体制を変えた。
ラグの上に膝を付き、上半身を前に組み敷かれ、お尻を高く突き出さされる。
「隣に兄貴いるから声抑えろよ。」
首だけで振り返った私に、冷たく囁く。
ショーツをズラされる感覚があり、火照った秘部が外気に曝されヒクつく。
もっとゆっくり優しく解して欲しい。
そんな希望は口にできないまま、固くて熱いものが宛てがわれ、ズリズリと侵入される。
「ふっ…う、うぅ。」
潤いが足りず、僅かに引き攣れるような痛みが襲う。
「はは、…きっつ。」
嬉しそうな声。
強い抵抗感を無視し、グリグリと奥に進んでくる。
「いっ…。」
増していく圧迫感と押し入られる痛みから声が洩れると、背後から手が伸びてきて胸を撫でられる。
「ここすげぇ固くなってんじゃん。気持ち良いだろ?」
胸の先端を指でコロコロと転がされる。
「んんっ。」
「だから声出すなって。」
慌てて唇を固く結び、両手で口を覆う。
床に付いた肘と膝が尊先輩の動きに合わせてゴリゴリと痛む。
「んっ…ふっん…。」
完全に出口を塞がれた息が声と一緒に鼻から洩れる。
「一花のさ、…ふ、その、はぁ、鼻にかかる声、はぁ…興奮する。」
尊先輩は息を乱しながら満足そうに言う。
普段ドライな恋人の乱れた声も、激しく求められている喜びも、胸が詰まるような幸福感をもたらしてくれるが、それを持ってしても拭えない虚しさが鳩尾の辺りに沈んでいて消えてくれない。
早く終わって欲しい。
一方的な強い刺激と、存在し続ける虚無感で頭がおかしくなる。
急激に視界がボヤけ、涙が溢れる。
泣いたらウザがられるかもしれない。
バレないようラグに顔を沈める。
その反動でお尻がつき上がり、尊先輩のものを奥に押し付ける形になる。
「うぁ、やっば…。」
腰を叩きつけられる速度が速くなり、尊先輩の息も一層乱れる。
「…。ふっ…。ぅ…。」
私は歯を食いしばり、近付いた終わりまで気力をもたせる。
「あ、イク…。」
一定のリズムで動いていた腰を不規則に痙攣させ、尊先輩は私の中でビクビクと数回跳ねた。

「はーっ、スッキリした。」
自身の汚れたところをティッシュで適当に拭うと、尊先輩は膝まで下ろしていたボクサーパンツとボトムを履いた。
「早く帰ってシャワーしろよ。」
放心し、ラグにうつ伏せで倒れている私を見下ろしながら言う。
「早くパンツ履き替えた方が良いぞ。」
ケラケラと随分楽しそうだ。
何が面白いのか私にはさっぱり分からない。
入口の辺りにジンジンと痛みが残る。
濡れてひんやりと冷めたショーツが悲しい。
ベッドで抱いてくれたのはいつが最後だろう。
裸で抱き合ったのは。
繋がったままキスをしたのは。
向かい合って愛を囁きながら果てたのは。
そのどれも最初の数回だけで、最近はずっと服も脱がずに入れるだけだ。
身体を重ねれば重ねるほど虚しくなる。
私は尊先輩しか知らないから、これが普通なのかがわからない。
だけど、もしこれが世の中の当たり前なセックスなのだとしたら、とても愛の行為だとは思えない。
尊先輩は本当に私を好きなのだろうか。

「いやー、おっぱいちっせぇし、タイプじゃないから処女だけ貰って終わらそうとしたのにさぁ。身体が結構良かったからズルズルしちゃったんだよなぁ。」

ハッとして目が覚める。
「はーっ。なんで…。」
ガバッと身体を起こし、大きく息を吐き出す。
今吐いた息と一緒に、この記憶が身体から出ていってくれれば良いのに。
沈殿したヘドロのように、普段は底で大人しくしているのに、何かの拍子に巻き上がり身体全体を酷く濁らせる記憶。
寝覚めが悪過ぎる。
私の初めての彼氏だった尊先輩。
初めて身体を許した人でもあった。
高校時代の部活の先輩で、部活の上下関係を引き摺っていたからか、元々のお互いの気質なのか、どうしても彼には逆らえなかった。
1年生の頃から一年以上付き合ったが、先輩の卒業を機に別れた。
別れたというよりも私が逃げたと言う方が正しいかもしれない。
先輩には他にも複数の彼女がいたのだ。
それと同時に先輩が全く私を好きでないことも知ってしまった。
事実を知ってしまってからは、先輩に会うのが怖くなり、メールで一方的に別れを告げて全てブロックした。
もう完全に終わっていて、忘れたくて、記憶を奥底に押し込め、気にしないようにできていたのに。
初めてこんな夢を見た。
別れた直後の辛い時だってこんなもの見なかったのに。
それはきっと、昨日3年以上ぶりに尊先輩に会ったからだ。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

友達に誘われてヤリサーでオモチャにされた僕

BL / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:317

結婚できない男

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,054pt お気に入り:2,821

32今日は、私の結婚式。幸せになれると思ったのに、、、

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:23,722pt お気に入り:949

わたしはただの道具だったということですね。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,650pt お気に入り:4,135

【完結】そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:91,285pt お気に入り:3,328

わたしは不要だと、仰いましたね

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:454pt お気に入り:179

 だから奥方様は巣から出ない 〜出なくて良い〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:43,815pt お気に入り:2,567

処理中です...