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昔話

⑧昔話、くろ

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 家に帰ると怒られた…。

「どうして勝手にいっちゃうの!」
 僕はシュンとした。
 お手伝いしたかったけど、いいものはなかったし、村の人の話のせいもあって、なんだか落ち着かなくなって、帰りたくなったから、帰ってきた。

「勝手にいっちゃだめだからね」
 そう言って、いつものようにぎゅっと抱きしめてくれた。
 僕はここにいるからね。どこにも、行かないよ。

 あの後、二人で畑に行った。でも畑の様子をみただけで、ため息をついていた。

「これじゃ、どうしようもないね……」
 畑は雨が降り過ぎて、所々流れていたし、残った所もほとんどが腐り始めている。

「帰ろうか…」
 少し暗くなってきて、日暮れが近いみたい。雨雲がずっとかかっていて暗く、いつ日が落ち始めたのかもわからない。
 とぼとぼと暗い表情のまま家に帰っていった。

 二人で帰って、少しのご飯を分けて食べた。食べるものもあまりないなかでも、僕にも分けてくれる。
 一人で食べても大したことのない量なのに。

「ごめんね、これだけしかないの」
 そう言って、困った顔をして分けてもらったご飯。
 すぐに食べて終わってしまうけど、とっても嬉しいことだ。

 そろそろ寝ようと、僕は土間の隅に置いてある藁の上に丸くなって、
 前足の上に頭をのせて寝るようにした。
 布団は僕が見えるように、土間の近くに敷いて寝ている。

「……お腹空いたね…」
 僕は顔をそっちに向けた。

「明日になったら、何か探しに行こう。食べるもの見つかるといいね…」
 そうだね。また明日探しに行こう。
 せめて、雨も小降りぐらいなればいいのに。

「おやすみ…」
 僕も(わん)と吠えて寝た。

 明日は、いいことがありますように。





 


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