4 / 28
昔話
①昔話
しおりを挟む
村外れの小屋のような小さな家。
そこに家族で住んでいた。
父と母、そしてわたし。三人で貧しいながらも、慎ましく幸せに暮らしていた。
わたしが小さな頃に、天気が悪い日が続き、作物の収穫が少なくなってきた。ギリギリまで両親はやりくりしていたと思う。それも限界がきて、父さんは出稼ぎにいくことになった。
母さんと二人で働いて、父さんが帰ってくるのを待っている。
また、仲良く暮らしていけると思うから。
でも、父さんは帰って来なかった。
いつまでも待っても……。
待っている間、苦しい生活でも、いつか父さんは帰ってくるからと、母さんは笑っていた。
そうして、無理に働いていたせいか、具合が悪くなることが増えてゆき、最後には寝込んでいった。
最後まで、父さんが帰ってくるからと、信じていた。
母さんはいなくなった…。
最後に一人にして、ごめんと言って。
母さんに言われていた通りに、すべてを終わらせて、いくつか時がたって、父さんの知り合いだという人がきた。
父さんの形見を持ってきてくれた。聞けば、流行り病でなくなって、ずっとわたし達のことを心配しながら、終わったという。
受け取ったのは、二つの小さな櫛だった。椿の花模様のある櫛。いつか持って帰るのだと、聞いていたから、わざわざここまで持ってきてくれたのだと。
言葉でお礼を言うことしかできないけど、ついでがあって持ってきたのだから気にするなと、その人は言って、帰っていった。
母さんの所に持っていって、二つのうちのひとつを、綺麗に紙に包み直して、埋めてきた。
誰もいなくなってしまった。
手元にあるのは、母さんが使っていたものと、小さな櫛。それと家。
自分一人での日々は、暮らしているだけで精一杯だった。
そこに家族で住んでいた。
父と母、そしてわたし。三人で貧しいながらも、慎ましく幸せに暮らしていた。
わたしが小さな頃に、天気が悪い日が続き、作物の収穫が少なくなってきた。ギリギリまで両親はやりくりしていたと思う。それも限界がきて、父さんは出稼ぎにいくことになった。
母さんと二人で働いて、父さんが帰ってくるのを待っている。
また、仲良く暮らしていけると思うから。
でも、父さんは帰って来なかった。
いつまでも待っても……。
待っている間、苦しい生活でも、いつか父さんは帰ってくるからと、母さんは笑っていた。
そうして、無理に働いていたせいか、具合が悪くなることが増えてゆき、最後には寝込んでいった。
最後まで、父さんが帰ってくるからと、信じていた。
母さんはいなくなった…。
最後に一人にして、ごめんと言って。
母さんに言われていた通りに、すべてを終わらせて、いくつか時がたって、父さんの知り合いだという人がきた。
父さんの形見を持ってきてくれた。聞けば、流行り病でなくなって、ずっとわたし達のことを心配しながら、終わったという。
受け取ったのは、二つの小さな櫛だった。椿の花模様のある櫛。いつか持って帰るのだと、聞いていたから、わざわざここまで持ってきてくれたのだと。
言葉でお礼を言うことしかできないけど、ついでがあって持ってきたのだから気にするなと、その人は言って、帰っていった。
母さんの所に持っていって、二つのうちのひとつを、綺麗に紙に包み直して、埋めてきた。
誰もいなくなってしまった。
手元にあるのは、母さんが使っていたものと、小さな櫛。それと家。
自分一人での日々は、暮らしているだけで精一杯だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる