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目覚めてから、ヴェイル様のスキンシップが甘い。キスやハグは当たり前にしてくるし、夜は私を抱きしめて眠る。さすがに一緒の入浴は、全力でお断りしたけど…。
彼は、常に私のどこかに触れていたがるのだ。

私も結婚を望んでいるとはいえ、恥ずかしすぎてどうにかなりそう…。
でも、毎朝私が目を覚ますと、ヴェイル様が安堵した顔をするので、私は彼の過剰な愛情表現を拒否出来ないでいた。
きっとヴェイル様の中で、半年間も眠っていた私がトラウマになっているのだと思う。


でも、人前で、触れるのはやめて欲しい。
言えばやめてくれるだろうか。
いや、何だかんだはぐらかされて、やめてくれない気がする…。

私は、指の隙間からヴェイル様を覗き見る。すると、目が合ったヴェイル様に頭を撫でられた。


「兄上、早めに式の日程を組んで下さい。俺の我慢も限界に近いので。」

ヴェイル様の謎な一言に、今までずっと黙っていたガイル陛下が、大きな溜息をついた。


「まったく、お前という奴は…。バレリー嬢が目覚めた事を黙っていた挙句、早く結婚させろだと?相手の身内から許可が出ていない結婚など、王族のお前が出来るわけがないだろう。どれだけ、こちらの気を揉ませれば気が済むのだ?まずは、アデライード王を説得することだな。式の話はそれからだ、馬鹿者!」

ガイル陛下の当然と言える叱責に、部屋の空気が冷え込む。
そんな中、チッとヴェイル様の舌打ちが聞こえた。


多分今のは、ここにいる全員に聞こえていたと思う。
兄とはいえ、陛下にそんな態度で大丈夫なのかしら?

恐る恐る視線を上げると、ガイル陛下は呆れた顔でヴェイル様を見ていた。


すると、突然、ヴェイル様が動いた。私を丁寧に膝から下ろし、立ち上がったのだ。そして、長い足を素早く動かして主人に近付き、その足元に跪いた。


「アデライード陛下、俺は、何度も何度も罪を犯しました。それが、決して赦される事ではないと、分かっています。ですが、もう二度とステラを傷つけるようなことはしません。何よりも大切にします。俺の全てを賭けて、幸せにすると誓います。ですからどうか、ステラを俺の妃として迎える許可をください!どうか…」

ヴェイル様は床に膝を突いたまま、深く頭を下げた。自分の髪が床に突くことも厭わずに。

ヴェイル様の切実な言葉が、私の心を揺さぶった。そして、そこから、自分でもどうする事も出来ない強い感情が湧き出る。居ても立っても居られなくなった私は、気付くと主人の下に駆け寄っていた。


「アデライード様、私もヴェイル様と共に生きたいです。私のような者でいいのかと正直、葛藤はあります。でも、それでも、精一杯、彼を支えたいと、今はそう思えるようになったんです。だから、私からもお願いします。どうか、私にヴェイル様の隣にいる権利をくださいませ」

私もヴェイル様と同じように、床に頭が突きそうな程、深く頭を下げた。




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