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*ヴェイル視点 41

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「おはよう、ステラ。今朝は一段と寒いな。もう冬も終わりだというのに。だが、サージェントの冬よりは、随分暖かいだろう?ステラの生まれは北の辺境だから、雪は沢山降ったのだろうな。サージェントにいると雪を見る機会は殆どないんだ。だから、サージェントの獣人は、寒さにめっぽう弱い。正直、俺も、あまり得意ではないな。それでも、ステラと見る一面の銀世界は美しいのだろうな。いつか、二人で見に行こう」


サージェントの王宮にある俺の寝室では、自分の声だけが虚しく響く。会話の相手であるステラは、眠ったまま、目を開ける気配がない。

こんな朝を、俺はもう半年も経験していた。



魔物の王が最後に残した闇を、ステラと俺で何とか浄化しきった後、ステラはその場に崩れるように気を失ってしまった。
幸い、ステラの体を蝕んでいた魔物の王の核は、俺の異能で綺麗に消え去っていた。だから、安心していた。ステラはすぐに目を覚ますと。

だが、ステラは、あれから一度も目を開けていない。

巫女殿やサウザリンドから駆け付けたゼイン医官に診てもらっても、原因が分からない。
魔力が底を突いたからかと、俺の魔力を治療の時の要領で送ってみたが、手応えがなく、魔力が蓄積されているようには感じられなかった。
それは、ステラの体から魔物の王の核が消えたことで、魔力貯蔵器官がなくなり、完全に魔力欠如症の体に戻ったからだった。
つまり、ステラは、今後、一切の魔力を貯められない代わりに、魔力を失えば心臓が止まるという障害から解放されたことになる。

それを喜ぶ反面、今のステラの体に干渉する方法がないという壁にぶつかってしまった。

一日、一日と、無駄に時間だけが過ぎていく。



だが、俺がステラを諦めることはない。
ステラは、俺と約束したのだから。
必ず生きると。
あれだけ、自分の生に無頓着だった彼女が、最後まで生き残る希望にしがみ付いたのだ。
だから、ステラは戻ってくる。


そう信じて、俺は、ステラをサウザリンドに連れ帰ることにした。
その頃、続々と集まってきていたステラを慕うサージェントの者達を蹴散らして。



サウザリンドの王宮に帰ってきた後は、主治医のゼイン医官のみ滞在を許した。その日以来、眠るステラの世話は、大体俺がしている。

魔物の王が消え、魔物達の被害がめっきり減った今、騎士団長である俺の仕事がないことを理由にして、こうしてずっと俺達は二人だけの時間を過ごしていた。

俺が望んだ環境だな…。
誰にも邪魔されず、たった二人だけの時間だ。

けれど、寂しい。
ステラを待つと決めたのに。

ステラ、ステラ、ステラ…。
どうか俺を置いていかないでくれ。

俺は、眠るステラの横に寝転んで、華奢な体を抱きしめた。





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