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「ハハハハハハ!アハハハハハハハ!」
闇の中に、ミシャの声だけが響く。辺りは、闇の暴風が吹き荒れていて、目を開けていられない。
この中で、ヴェイル様や姫様達は大丈夫だろうか。
薄目を開けて周りを見たその時、私の心臓がドクンと大きく脈打った。
「あうっ…。」
体が熱い。
胸が痛い。
胸の皮膚が内側から破られたような鋭い痛みを感じ、私はブラウスの胸元のボタンを外す。丁度心臓の真上、異能者の番の証がある場所に、花印を覆い消すように黒い鉱石が張り付いていた。それは、少しずつ範囲を広げて成長していく。
「我の闇の力の味どうだ、フローラ?」
唐突に現れた気配が、私の背後で囁いた。そして、私の体に腕を回す。その腕は、所々、皮膚が捲れていて、その下の奇怪な黒い肉を露出させていた。
「ミシャ…。」
「これほどの闇は、さすがのお前の体でも浄化出来まい。このまま成長した我の核に、内側から食い破られてしまえ。」
ミシャの意志に従って、闇はどんどん私の周りに集まってくる。それを、私の体は際限なく吸収していた。
「我は直、母たる魔の下へ帰る。だが、ただでは、去ってやらぬ。我の闇を世界に刻む。そうだ、お前が我の置き土産だ。ハハ、お前は、我の核となり、この世界を汚すのだ。ハハハハ…。」
ミシャの思惑に、自分を利用されるのが悔しくて、私は必死にミシャの腕の中で暴れた。
すると突然、後ろからミシャの声が途絶え、私を拘束していた腕も消えた。
そして、フワリと暖かな風が私の背中を掠めていった。
「ヴェイル様!」
「ステラ、大丈夫か!?グッ、ゴホッ…。」
闇を孕んだ激しい風が吹く中を、ヴェイル様がこちらに向かって駆けてくる。けれど、その顔色は悪く、呼吸も荒い。
「ヴェイル様、大丈夫ですか!?あれ…。」
ヴェイル様の下へ駆け寄ろうとしたのに、体が動かない。でも、ミシャに体を乗っ取られた時の感覚とは違う。体の関節が固まったかのように曲がらず、足が前に出ないのだ。
ふと視線を下に落とすと、袖から出た手が黒く汚れていることに気付いた。それに、何だか嫌な予感を感じ、背筋が冷える。
よくよく見ると、力が入らず震えている私の手には、結晶化した鉱石が鱗のように張り付いていた。
「ステラ!これは!?」
「ミシャの…、魔物の王の核です。闇を吸ってここまで大きくなってしまいました。」
「クソッ!それならば、ここにいては駄目だ!今すぐ、脱出するぞ!」
「は、はい。」
動けない私の体をヴェイル様が抱き上げたその時、影が私達の足に纏わり付いた。
闇の中に、ミシャの声だけが響く。辺りは、闇の暴風が吹き荒れていて、目を開けていられない。
この中で、ヴェイル様や姫様達は大丈夫だろうか。
薄目を開けて周りを見たその時、私の心臓がドクンと大きく脈打った。
「あうっ…。」
体が熱い。
胸が痛い。
胸の皮膚が内側から破られたような鋭い痛みを感じ、私はブラウスの胸元のボタンを外す。丁度心臓の真上、異能者の番の証がある場所に、花印を覆い消すように黒い鉱石が張り付いていた。それは、少しずつ範囲を広げて成長していく。
「我の闇の力の味どうだ、フローラ?」
唐突に現れた気配が、私の背後で囁いた。そして、私の体に腕を回す。その腕は、所々、皮膚が捲れていて、その下の奇怪な黒い肉を露出させていた。
「ミシャ…。」
「これほどの闇は、さすがのお前の体でも浄化出来まい。このまま成長した我の核に、内側から食い破られてしまえ。」
ミシャの意志に従って、闇はどんどん私の周りに集まってくる。それを、私の体は際限なく吸収していた。
「我は直、母たる魔の下へ帰る。だが、ただでは、去ってやらぬ。我の闇を世界に刻む。そうだ、お前が我の置き土産だ。ハハ、お前は、我の核となり、この世界を汚すのだ。ハハハハ…。」
ミシャの思惑に、自分を利用されるのが悔しくて、私は必死にミシャの腕の中で暴れた。
すると突然、後ろからミシャの声が途絶え、私を拘束していた腕も消えた。
そして、フワリと暖かな風が私の背中を掠めていった。
「ヴェイル様!」
「ステラ、大丈夫か!?グッ、ゴホッ…。」
闇を孕んだ激しい風が吹く中を、ヴェイル様がこちらに向かって駆けてくる。けれど、その顔色は悪く、呼吸も荒い。
「ヴェイル様、大丈夫ですか!?あれ…。」
ヴェイル様の下へ駆け寄ろうとしたのに、体が動かない。でも、ミシャに体を乗っ取られた時の感覚とは違う。体の関節が固まったかのように曲がらず、足が前に出ないのだ。
ふと視線を下に落とすと、袖から出た手が黒く汚れていることに気付いた。それに、何だか嫌な予感を感じ、背筋が冷える。
よくよく見ると、力が入らず震えている私の手には、結晶化した鉱石が鱗のように張り付いていた。
「ステラ!これは!?」
「ミシャの…、魔物の王の核です。闇を吸ってここまで大きくなってしまいました。」
「クソッ!それならば、ここにいては駄目だ!今すぐ、脱出するぞ!」
「は、はい。」
動けない私の体をヴェイル様が抱き上げたその時、影が私達の足に纏わり付いた。
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