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ヴェイル様の嘆きを聞いても、私は、魔力を送ることをやめなかった。そして、闇を取り込むことも。


姫様が言っていた通り、私の体は、あらゆる力を浄化出来るようだ。ミシャの闇を取り込んで、上手く魔力に変換出来ているのが分かる。今の私の体には、闇から生成した魔力が、少しずつ蓄積されていた。
でも、ヴェイル様に渡すのは、元々私の中にあった魔力だけ。
殆どただの勘だけど、なんとなく、ヴェイル様にミシャの魔力を送ってはいけないような気がしたのだ。


さあ、時間がないわ。
ヴェイル様をこのミシャの闇の空間から脱出させなきゃ。
そのためにも、一刻も早く、私の魔力を彼に…。
それに、外の姫様達も心配だわ。

ミシャの闇が私の心に入ってきた時、今、ミシャが感じているものを、少しだけ私も理解することが出来た。
多分、この空間の外では、姫様達が、ミシャが作った変種の魔物と戦っている。私が見た一瞬の場面では、苦戦しているように見えた。



少しだけでも、隙を作れれば、みんなが、ヴェイル様が、何とかしてくれる。
だから、私が、ミシャを止めなきゃ。


私は、覚悟を決めて、更に多くの魔力をヴェイル様に送り出した。
それと同じくして、闇の吸収量も増やす。ミシャの力を削ぐために。




フローラ、何をしている?
死ぬ気か?


ミシャ…。

幼い私の姿をしたミシャが、闇の中から現れた。そして、その小さな手で、私の首を締め上げる。

今の私は、肉体のない意識だからか、首を絞められても息苦しさはない。けれど、ミシャが私に触れたことで、一気に闇の吸収量が増え、心臓が焼けるように痛み出した。



痛い、痛い、痛い。
何で?
どうして?


痛いだろう?
辛いだろう?
それなのに、抵抗するのか?
確かに、お前の無能な体は、魔力を蓄積出来ない代わりに、無限に浄化が出来る。
だが、お前の心臓部には、我の核があることを忘れたか?
皮肉にも、お前の魔力貯蔵器官となった我の核が、無限の浄化に制限をかけているのだ。
分かるか?
このまま闇を取り込めば、我の核は、お前の中でどんどん成長するぞ。
脆弱な人間のお前には、耐えられまい?
さあ、どうするのだ、フローラ?


ミシャは、満足そうに語ると、唐突に、私の首から手を離した。
私は、地面に落ち、胸を押さえて蹲る。そんな私に、ミシャは追い討ちをかけるように、闇を放った。
更なる闇を意図せず、取り込まされた私は、激痛に叫び声を上げた。


ほら、フローラ。
もう、諦めろ。
そして、受け入れろ。
醜い己を。
お前は、無能で、卑屈で、脆弱で、愚鈍で、無価値なのだ。
そんな風に生んだ神を恨め!
苦痛の日々を思い出せ!
ハハハハハハ!
お前は、我のもの。
我からは逃げられない。



無価値という言葉が、私の痛む胸を更に締め付ける。でも、その痛みが、逃げたいと思った私を引き戻してくれた。






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