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*ヴェイル視点 39
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影の中に等間隔で並ぶソレは、人形のように無表情で目は虚ろだった。
「何だ、コレは…?」
「いいだろう?我の自慢のコレクション、かつて神に愛されていた者達だ。コレらは、異能者や番でこそないが、その輝く魂で、弱者を導いていた。そんな者達の堕ちた魂だからこそ、良き闇を生み出してくれている。」
「母上も、その一人だというのか?」
「ああ、そうだ。この体の持ち主は、異国に嫁ぎたくないと泣いていたからな、優しく慰めてやったのだ。ハハ、そう言えば、コレは、初めてまともな形で保存出来た異能者の番だったな。」
魔物の王は、上機嫌で言葉を発しながら、自らの体を撫で下ろす。
母上は、魔物の王に精神を汚染されていたのか。
父上は、そうとも知らず…。
俺は、伸ばされた母上の手を強く振り払った。その拍子に、母上の手首が逆方向に曲がる。
「あーあ、人間の体は脆いな。この程度で壊れるとは。」
魔物の王は、折れた腕を見せつけるように、俺の前でプラプラと揺すってみせた。
「それにしても、青炎の異能者は、母親に厳しいな。ハハ、では、これはどうだ?」
母上の姿が闇に消えると、展示品のように並んでいた者達も、同じく闇に溶けていく。更に闇が深まり、不快な沈黙が俺を包んだ。
その中に、ポツンと赤い髪が浮かび上がる。
「ステラ!」
ステラの下に駆けるも、なぜか俺とステラの距離が縮まらない。俺は、無表情で佇むステラに向かって、名前を叫び続けた。
すると、ステラの背後の影から腕が伸び、彼女の体に巻き付いた。
「ステラに触るな!」
俺は、ステラを抱きしめる魔物の王へ青炎を放った。
しかし、その炎は、ステラの体に吸収されていく。
「怖い、怖い。お前の愛しい番に当たったら、どうするつもりだ?」
魔物の王が、ステラの首に手をかける。その指が、ステラの首に食い込んだ。
苦しいはずなのに、ステラはただ、虚ろな目で俺を見ていた。
「やめろ!」
どんなに強力な魔法を放っても、ステラの吸収の力で止められてしまう。しかも、俺達の距離すら縮まらず、彼女に触れることさえ出来ない。俺の中に、焦りだけが募った。
そんな俺の状況を楽しむように、魔物の王はニヤリと笑うと、ゆっくりステラの首に噛み付いた。
ステラの首筋に、いく筋もの赤い血液が流れ落ちる。俺の耳にも、血を啜る不快な音が届いた。
「クソ野郎ーーー!」
俺は、有りったけの力で、剣を魔物の王目掛けて投げつけた。しかし、その一撃も、魔物の王によって軽々と止められる。
すると、ステラの首元から視線を上げた魔物の王が、彼女の目に手を翳した。何かを解くかのように。
「い、や、やだ…。やめて。」
突然、ステラの目に生気が戻り、彼女が魔物の王の腕から逃れようと抵抗し始めた。
「ステラ!ステラ!」
「ヴェ、ヴェイル、さま、助けて…。」
俺に気付いたステラが、俺に向かって手を伸ばす。虚ろだったステラの目は、苦痛に歪み、恐怖の涙を流していた。
「何だ、コレは…?」
「いいだろう?我の自慢のコレクション、かつて神に愛されていた者達だ。コレらは、異能者や番でこそないが、その輝く魂で、弱者を導いていた。そんな者達の堕ちた魂だからこそ、良き闇を生み出してくれている。」
「母上も、その一人だというのか?」
「ああ、そうだ。この体の持ち主は、異国に嫁ぎたくないと泣いていたからな、優しく慰めてやったのだ。ハハ、そう言えば、コレは、初めてまともな形で保存出来た異能者の番だったな。」
魔物の王は、上機嫌で言葉を発しながら、自らの体を撫で下ろす。
母上は、魔物の王に精神を汚染されていたのか。
父上は、そうとも知らず…。
俺は、伸ばされた母上の手を強く振り払った。その拍子に、母上の手首が逆方向に曲がる。
「あーあ、人間の体は脆いな。この程度で壊れるとは。」
魔物の王は、折れた腕を見せつけるように、俺の前でプラプラと揺すってみせた。
「それにしても、青炎の異能者は、母親に厳しいな。ハハ、では、これはどうだ?」
母上の姿が闇に消えると、展示品のように並んでいた者達も、同じく闇に溶けていく。更に闇が深まり、不快な沈黙が俺を包んだ。
その中に、ポツンと赤い髪が浮かび上がる。
「ステラ!」
ステラの下に駆けるも、なぜか俺とステラの距離が縮まらない。俺は、無表情で佇むステラに向かって、名前を叫び続けた。
すると、ステラの背後の影から腕が伸び、彼女の体に巻き付いた。
「ステラに触るな!」
俺は、ステラを抱きしめる魔物の王へ青炎を放った。
しかし、その炎は、ステラの体に吸収されていく。
「怖い、怖い。お前の愛しい番に当たったら、どうするつもりだ?」
魔物の王が、ステラの首に手をかける。その指が、ステラの首に食い込んだ。
苦しいはずなのに、ステラはただ、虚ろな目で俺を見ていた。
「やめろ!」
どんなに強力な魔法を放っても、ステラの吸収の力で止められてしまう。しかも、俺達の距離すら縮まらず、彼女に触れることさえ出来ない。俺の中に、焦りだけが募った。
そんな俺の状況を楽しむように、魔物の王はニヤリと笑うと、ゆっくりステラの首に噛み付いた。
ステラの首筋に、いく筋もの赤い血液が流れ落ちる。俺の耳にも、血を啜る不快な音が届いた。
「クソ野郎ーーー!」
俺は、有りったけの力で、剣を魔物の王目掛けて投げつけた。しかし、その一撃も、魔物の王によって軽々と止められる。
すると、ステラの首元から視線を上げた魔物の王が、彼女の目に手を翳した。何かを解くかのように。
「い、や、やだ…。やめて。」
突然、ステラの目に生気が戻り、彼女が魔物の王の腕から逃れようと抵抗し始めた。
「ステラ!ステラ!」
「ヴェ、ヴェイル、さま、助けて…。」
俺に気付いたステラが、俺に向かって手を伸ばす。虚ろだったステラの目は、苦痛に歪み、恐怖の涙を流していた。
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