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血の通っていないような青白い手が、私に触れる瞬間、青い炎が私の目の前スレスレを駆け抜けた。
その瞬き程の時間に、私は走り去る火の粉に魅せられる。
そして、いつの間にか、私の体は逞しい腕に抱き寄せられていた。


「化け物が!彼女に触れるな!」
広い胸に視界を覆われた私の耳にも、怒りを湛えた低い声が届いた。

その声に、顔を上げると、会いたくて仕方がなかった人の姿がそこにあった。


「ヴェイル様、どうして…。」

「ステラ、無事だな!?」

「はい。」

「良かった…。いいか、ステラ、絶対に俺の側から離れるなよ。」
ヴェイル様は、私を腕から離すと、自分の背後へ押しやった。


「ああ、青炎の異能か…。世代が変わっても、相変わらず忌々しい力だ…。」
ヴェイル様の背中越しに、しゃがれた不気味な声が聞こえてきた。

恐る恐る声がした方へ目を向けると、両腕を真っ黒に焦がした青年の姿が目に入った。その青年は、痛がる素振りを見せる事なく、不思議そうに、自分の腕を眺めている。


「ああ、ああ、本当に忌々しい。腹立たしい!我らを押し退けた神の力が憎い!」
青年は漆黒の瞳を見開き、ヴェイル様を観察するように見ている。深い闇を孕んだその瞳は、まさに捕食者のそれだった。
その時、突然、青年が声を上げて笑い出した。そして、その瞳を私に向ける。


「ハハハハハハ!まあ、いい!また殺せばいい!沢山、沢山食い殺そう!同腹と共に、皆殺しを楽しもう!ハハハハ!恐怖せよ、脆弱な命どもよ!それが、我らの糧になる!ああ、殺戮の日が待ち遠しい…。」

青年は狂ったように笑い続けた後、焼けた腕を、こちらに伸ばしてきた。
底知れない狂気に襲われた私は、恐怖に囚われ息が出来なくなる。


イヤだ…。
怖い…。
やめて。
私を見ないで。
こっちに来ないで。


青年の闇のような瞳と目が合った瞬間、私の心臓が痛み出す。助けを求めた私は、無意識にヴェイル様の服の裾を掴んでいた。


「大丈夫だ。大丈夫だから、怯えなくていい。ステラは、俺が必ず守るから。」

ヴェイル様は、私の震える指先をギュッと握り返してくれた。すると、段々と痛みが消えていく。
私は、詰まっていた息を吐き出して、ヴェイル様の目を見つめた。


「ハハハハハ!その娘は、お前の番か!?ああ、これは良い!実に面白い。青炎の異能者の番が、我の一部を持っているのだからな!ハハハ!ああ、愉快だ!決めたぞ!その娘は、お前の前で愛でながら、ゆっくりゆっくり食ってやろう。」

「ふざけるな!誰がステラを渡すか!お前達は全て、俺が駆逐してやる!」

ヴェイル様は、そう叫ぶと、陶酔しながら笑う青年目掛けて剣を振り下ろした。







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