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*ヴェイル視点 22

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「ハハハハハハ!」
一度飛び出した笑いは、中々治らない。
俺の狂ったような笑い声が、広いエントランスホールに響き渡った。


ああ、全て邪魔だな。
キャロラインだけじゃなく、この愚か者共も一緒に消してしまおう。

そう思った瞬間、図に乗り出した貴族達に向かって、俺の殺気が襲いかかった。
本気の殺意に当てられ、貴族達が次々に床へへたり込む。その合間を、俺は血に濡れた剣を軽く振りながら歩いた。


「ハハハ!俺の寝室に許可なく入り、俺の大切にしているものを盗んでおいて、罪ではないだと?それが、お前達の考えなのだな?ならば、お前達は俺の敵だ。俺は、敵には容赦しない。お前達全員の首をこの邸の門に並べてやる。」

ここへ来て、やっと俺の本気の怒りに気付いた貴族達が、一斉に焦り出す。そして、手のひらを返して俺に縋り付いてきた。


「で、殿下、我々は、貴方を思って…。」

「で、殿下…。お、落ち着いて、下さい。…私達は、あ、貴方の味方、です。」

「ハハ…冗談が過ぎますぞ、殿下。」


体を震わせ、息も絶え絶えな貴族達を横目に、俺は先ず、マイケルの首に刃を当てる。


「殿下…、本気で、私を?私が今までどれだけ王族に尽くしてきたか、お忘れですか?」

「お前もお前の息子も、騎士でありながら守るべき民を貶めた。そんな者は、我が国に必要ない。」

「そんな…、そんな…。私は、こんなところで終わる男ではないのに…。」
青い顔で震え出したマイケルの背後では、ウィルソンとキャロラインが、逃げ出そうと踠いている。その姿にはもう、公爵家としての威厳はなかった。
そんな二人に見せつけるように、俺は剣を握る手に少しずつ力を加える。


マイケルの首から、一筋の赤が流れ落ちたその時、俺の背中に小さな優しい衝撃を感じた。


「ヴェイル様、ダメです。」

「…ステラ?」

「はい。ヴェイル様、落ち着きましたか?」

細い華奢な腕が俺の腰に回る。その拍子に、ステラが被っていたマントが、足元に落ちた。そのマントと共に、俺の怒りも腹の底に落ちていった。


「ああ、大丈夫だ。ありがとう、ステラ。」
俺は腕を後ろに回して、温かいステラの体を抱き寄せた。

俺の…、俺のステラ。

ステラに触れたことで、負の感情に呑まれていた本来の自分が戻ってくる。丁寧にステラを抱き上げると、心が安らぎに包まれた。そんな俺の耳に、今は聞きたくない耳障りな声が届く。



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