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「やめて!わたくしの殿下に触れないで!汚らしいゴミの分際で、至高の存在に触れるなんて許されないの!お前はさっさと死ねばいいのよ!」
ヴェイル様の腕に包まれている私の下に、キャロライン様の叫び声が聞こえてきた。その鋭利な言葉は、私に現実を突きつける。
私は、そっとヴェイル様の胸に手を置いて、彼から離れようとした。
けれど、ヴェイル様の腕は緩まない。私は腕の中から、ヴェイル様の顔を見上げた。
するとすぐに、頭からすっぽりと、分厚く重い布を被せられる。ヴェイル様の匂いがするそれは、よく見ると彼の防刃用のマントだった。
「ステラ、そのまま、目を瞑っていろ。」
そう言ったヴェイル様は、私を抱えて歩き出す。私は言われた通り、マントの中でしっかり目を閉じた。
「ニルセン、邪魔だ、どけ。」
ヴェイル様の言葉の後に、ぶつかり合っていた気配が止まる。その内の一つの気配が、身を固くしている私の側に近付いた。
「おいおい、黒髪の兄ちゃん、邪魔すんじゃねえよ!今から、そっちの細っこい兄ちゃんをぐちゃぐちゃにすんだからよ。それとも黒髪の兄ちゃんが、先にぐちゃぐちゃになるか?それが嫌なら…。」
ズサッという音と共に、ガラの悪い傭兵の声が消える。それに代わり、大きなものが倒れる振動を感じた。
「ニルセン、ステラを任せる。」
「はい。」
二人の短い会話の後、ヴェイル様は私を床に下ろした。私は、マントの隙間から、キャロライン様の下へ向かうヴェイル様の後ろ姿を見送る。
思わず、行かないでと叫びそうになった口を、私は強く押さえた。
「ヴェイル殿下!ヴェイル殿下!ああ、わたくしの愛しい方…。」
壁際で蹲っていたキャロライン様が、ヴェイル様に手を伸ばす。
その手に向かって、ヴェイル様も手を伸ばしていた。
その様子が、美しいお姫様を助けに来た騎士の物語の一幕に見えて、私の胸が痛む。
「ああ、殿下、愛していますわ…。」
キャロライン様の愛の告白を聞いたヴェイル様が、彼女の伸ばしていた手をしっかり掴んだ。その時、キャロライン様の悲鳴が広いエントランスホールに響き渡る。
「キャー!痛い!痛い!」
キャロライン様の右の手首が、変な方向を向いている。彼女は、腕を抱えて泣き叫んでいた。
「お前が、愛しているのは、異能者という俺の地位だろう?俺の婚約者だと、調子に乗っていたが、いつ、お前が俺の婚約者になった?お前みたいな女は、吐き気がするんだがな。」
「つ、番のいない殿下を支えられるのは、公爵家唯一の姫である、わたくしだけですわ!わたくしは、純粋な獣人族なのです。わたくしと殿下が結ばれれば、必ず異能者の子が生まれます!そうなれば、ヴェイル殿下は王になれるのですよ!」
「くだらないな。言いたい事はそれだけか?お前は、俺の逆鱗に触れた。簡単に死ねるとは思うなよ。ステラにした事をそっくりそのまま返してやる。」
「そ、そんな…、今のわたくしは、魔力を奪われているのに…。た、助けて。」
キャロライン様は、ヴェイル様が向けた剣先から逃れようと、負傷した右手を庇いながら這っていく。
その姿を、私は冷めた目で見ていた。
貴女は、ヴェイル様の婚約者じゃなかったのねと。
ヴェイル様が剣を握り直したその時、エントランスの扉が開き、着飾った獣人達が次々に雪崩れ込んできた。
ヴェイル様の腕に包まれている私の下に、キャロライン様の叫び声が聞こえてきた。その鋭利な言葉は、私に現実を突きつける。
私は、そっとヴェイル様の胸に手を置いて、彼から離れようとした。
けれど、ヴェイル様の腕は緩まない。私は腕の中から、ヴェイル様の顔を見上げた。
するとすぐに、頭からすっぽりと、分厚く重い布を被せられる。ヴェイル様の匂いがするそれは、よく見ると彼の防刃用のマントだった。
「ステラ、そのまま、目を瞑っていろ。」
そう言ったヴェイル様は、私を抱えて歩き出す。私は言われた通り、マントの中でしっかり目を閉じた。
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ズサッという音と共に、ガラの悪い傭兵の声が消える。それに代わり、大きなものが倒れる振動を感じた。
「ニルセン、ステラを任せる。」
「はい。」
二人の短い会話の後、ヴェイル様は私を床に下ろした。私は、マントの隙間から、キャロライン様の下へ向かうヴェイル様の後ろ姿を見送る。
思わず、行かないでと叫びそうになった口を、私は強く押さえた。
「ヴェイル殿下!ヴェイル殿下!ああ、わたくしの愛しい方…。」
壁際で蹲っていたキャロライン様が、ヴェイル様に手を伸ばす。
その手に向かって、ヴェイル様も手を伸ばしていた。
その様子が、美しいお姫様を助けに来た騎士の物語の一幕に見えて、私の胸が痛む。
「ああ、殿下、愛していますわ…。」
キャロライン様の愛の告白を聞いたヴェイル様が、彼女の伸ばしていた手をしっかり掴んだ。その時、キャロライン様の悲鳴が広いエントランスホールに響き渡る。
「キャー!痛い!痛い!」
キャロライン様の右の手首が、変な方向を向いている。彼女は、腕を抱えて泣き叫んでいた。
「お前が、愛しているのは、異能者という俺の地位だろう?俺の婚約者だと、調子に乗っていたが、いつ、お前が俺の婚約者になった?お前みたいな女は、吐き気がするんだがな。」
「つ、番のいない殿下を支えられるのは、公爵家唯一の姫である、わたくしだけですわ!わたくしは、純粋な獣人族なのです。わたくしと殿下が結ばれれば、必ず異能者の子が生まれます!そうなれば、ヴェイル殿下は王になれるのですよ!」
「くだらないな。言いたい事はそれだけか?お前は、俺の逆鱗に触れた。簡単に死ねるとは思うなよ。ステラにした事をそっくりそのまま返してやる。」
「そ、そんな…、今のわたくしは、魔力を奪われているのに…。た、助けて。」
キャロライン様は、ヴェイル様が向けた剣先から逃れようと、負傷した右手を庇いながら這っていく。
その姿を、私は冷めた目で見ていた。
貴女は、ヴェイル様の婚約者じゃなかったのねと。
ヴェイル様が剣を握り直したその時、エントランスの扉が開き、着飾った獣人達が次々に雪崩れ込んできた。
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