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「ごめん、なさい、キャロライン様。貴女の魔力を貰います。」

「な、何...?何なの、これ…、ああ、イヤ、やめて!」

私は触れたキャロライン様の肌から、無理矢理魔力を吸い上げる。一気に魔力を失ったキャロライン様は、苦痛に顔を歪め、床に倒れ込んだ。
人から魔力を奪い取るこの方法は、相手に激しい不快感と苦痛を与える。しかも、大量に魔力を奪って魔力枯渇状態にしてしまうのだ。


今の私は、本物の悪魔ね。
それでも、ニルセン様を守らなきゃ!

私は、ぐったりしているニルセン様に駆け寄って、回復魔法をかけた。
キャロライン様から奪った魔法は、見る見るうちに、ニルセン様の傷を治していった。


「ニルセン様、良かった。立てますか?」

「ええ、ありがとうございます。」

ホッと一息吐き出した瞬間、腕を強く引かれ、扉の方へ連れて行かれる。そして、私の体は、すっぽりとニルセン様の背に庇われた。
それと同時に、憎しみの籠った叫び声が聞こえた。


「何なのよ、いったい!ああ、イラつく!殺してやるわ!もう手加減なんてしない!すぐに殺す!」

ニルセン様の背中から辛うじて見えたキャロライン様の姿は、幽鬼のようだった。
乱れた髪から覗く瞳孔は縦に割れ、噛み締めた唇からは血が滴っていた。


「逃げようとしても無駄よ。この邸には、結界が張ってあるから、家主が許可しない限り出る事も入る事も出来ないわ。それにね。貴方達のために、腕利きの傭兵を雇ったのよ。貴方達が逃げたら、殺すように命じてあるわ!アハハ!さっさと、ゴミは処分してあげる!」

私の背後の扉からは、こちらに向かって駆けてくる複数の足音が聞こえる。
絶望的な状況に、私の足が震え出した。


「走りますよ、バレリーさん!」
掛け声と共に、ニルセン様が後ろの扉を蹴り開ける。その勢いのまま、扉の近くにいた大柄な獣人を押し倒して、私達は廊下を駆け抜けた。


「結界は厄介ですが、不特定多数の出入りがある正門の玄関扉なら開くはずです!」

「分かりました!」
集まってきたガラの悪い獣人達を躱し続けて、私達は広い屋敷のエントランスホールを目指した。


やっとの思いで、辿り着いたエントランスホールには、武器を持った傭兵達が集結していた。彼らは、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて私達を見ていた。

「これはこれは。随分と可愛らしい嬢ちゃんと兄ちゃんだな。やっちまうのは勿体無いから、嬢ちゃんだけでも貰っていくか?ガハハハ!」

「下衆が!バレリーさん、下がっていて下さい。すぐに片付けます。」
ニルセン様は、傭兵から奪った剣を構えて駆け出した。




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