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「ステラ?ステラ?ククッ。謝るから機嫌を直してくれ。」
「...怒っては、いません。」
「そうか?ならば良かった。クッ、ハハハ。」
さっきからずっと笑っているヴェイル様に、私は少しだけ腹を立てていた。
だって、ダンス中、何度もお願いしているのに、全然止まってくれないんだもの。目を回している私の事も笑っていたし。
私は、ヴェイル様に抱き上げられている事を忘れて、ずっとそっぽを向いていた。
「ステラ、俺の胸元からリボンを取ってくれないか?」
立ち止まったヴェイル様が、視線で左胸のポケットを示す。
私は、渋々ポケットに指を入れ、綺麗に折りたたまれた真紅のリボンを取り出した。
「ご機嫌斜めのステラ、上を見てごらん。」
ヴェイル様に優しく言われて、私は不貞腐れながらも頭上に広がる大樹を見上げる。
「わあ!」
私の視線の先、大樹が大きく伸ばした枝には、色とりどりのリボンが結ばれ、その周りを小さな光が飛び交っていた。
「ヴェイル様!凄く綺麗!でも、どうして、あんなに沢山のリボンが?周りを飛んでいる光は何ですか?」
身を乗り出して頭上を見回すと、また、ヴェイル様の笑い声が聞こえてきた。
「それ以上乗り出すと危ないぞ。ほら、もう少し上に行くから、大人しくしていなさい。」
大はしゃぎの私を、ヴェイル様が落ち着いた声で諭す。そして、私を抱えたまま、やぐらの頂上まで登って行った。
「あの光は、かつて精霊だったもののカケラだ。」
「精霊...。」
「サウザリンド王国が出来る前、ここは、獣人が精霊と共に暮らす小さな集落だったんだ。残念ながら、精霊は、魔物によって滅ぼされてしまったが、その残滓が今もこの大樹に残り、気まぐれに現れては、ああして遊んでいる。人の強い思いに惹かれているらしい。」
「強い想い、ですか?」
「枝に付いている沢山のリボンは、永遠に続く絆を願って結ばれたものなんだ。家族や恋人、特別な関係を持つ者達が、ああしてリボンを結び付けるんだよ。」
ヴェイル様が示した先には、幸せそうに微笑み合う男女がいた。そのお互いの手に長いリボンを絡めて。
「では、あの光は、素敵な絆を祝福しているんですね。」
「ああ、そうだな。」
精霊に祝福された絆か...。羨ましい。
私はそう思いながら、大樹の枝を、時間も忘れて見つめ続けた。
その時、フヨフヨと飛んできた小さな光が、私の手の中にあるリボンに止まった。
それに応えるように、リボンの端が、フワリと風に舞う。その不思議な光景を目で追っていると、ヴェイル様と視線が交わった。
ヴェイル様の黄金の瞳が、精霊の光に照らされて、星のように瞬いている。
月よりも清廉で、太陽よりも力強い眼光が、私を貫く。
その距離があまりにも近くて、私はどうしても目が離せなかった。
どうして、こんなに近いの?
「あ、あの、ヴェイル様、すみません!私、ずっと、抱き上げてもらっていました!」
やっと今の自分の状況に思い至った私は、慌てて体を引く。
「こら、危ないぞ。」
「す、すみません。」
「折角だ。このまま、そのリボンを結んでこよう。」
ヴェイル様は、私を下ろすことなく、大樹の側まで歩いて行った。
いいの?
私がヴェイル様と絆を結んでもいいの?
どうしよう。
凄く嬉しい...。
私、ヴェイル様と絆が欲しい。
初めて感じた心の底から溢れる欲求に、今の私は戸惑うことしか出来ない。
私は、初めて生まれた感情を自分の髪色に似たリボンと共に、胸元で強く握りしめた。
「...怒っては、いません。」
「そうか?ならば良かった。クッ、ハハハ。」
さっきからずっと笑っているヴェイル様に、私は少しだけ腹を立てていた。
だって、ダンス中、何度もお願いしているのに、全然止まってくれないんだもの。目を回している私の事も笑っていたし。
私は、ヴェイル様に抱き上げられている事を忘れて、ずっとそっぽを向いていた。
「ステラ、俺の胸元からリボンを取ってくれないか?」
立ち止まったヴェイル様が、視線で左胸のポケットを示す。
私は、渋々ポケットに指を入れ、綺麗に折りたたまれた真紅のリボンを取り出した。
「ご機嫌斜めのステラ、上を見てごらん。」
ヴェイル様に優しく言われて、私は不貞腐れながらも頭上に広がる大樹を見上げる。
「わあ!」
私の視線の先、大樹が大きく伸ばした枝には、色とりどりのリボンが結ばれ、その周りを小さな光が飛び交っていた。
「ヴェイル様!凄く綺麗!でも、どうして、あんなに沢山のリボンが?周りを飛んでいる光は何ですか?」
身を乗り出して頭上を見回すと、また、ヴェイル様の笑い声が聞こえてきた。
「それ以上乗り出すと危ないぞ。ほら、もう少し上に行くから、大人しくしていなさい。」
大はしゃぎの私を、ヴェイル様が落ち着いた声で諭す。そして、私を抱えたまま、やぐらの頂上まで登って行った。
「あの光は、かつて精霊だったもののカケラだ。」
「精霊...。」
「サウザリンド王国が出来る前、ここは、獣人が精霊と共に暮らす小さな集落だったんだ。残念ながら、精霊は、魔物によって滅ぼされてしまったが、その残滓が今もこの大樹に残り、気まぐれに現れては、ああして遊んでいる。人の強い思いに惹かれているらしい。」
「強い想い、ですか?」
「枝に付いている沢山のリボンは、永遠に続く絆を願って結ばれたものなんだ。家族や恋人、特別な関係を持つ者達が、ああしてリボンを結び付けるんだよ。」
ヴェイル様が示した先には、幸せそうに微笑み合う男女がいた。そのお互いの手に長いリボンを絡めて。
「では、あの光は、素敵な絆を祝福しているんですね。」
「ああ、そうだな。」
精霊に祝福された絆か...。羨ましい。
私はそう思いながら、大樹の枝を、時間も忘れて見つめ続けた。
その時、フヨフヨと飛んできた小さな光が、私の手の中にあるリボンに止まった。
それに応えるように、リボンの端が、フワリと風に舞う。その不思議な光景を目で追っていると、ヴェイル様と視線が交わった。
ヴェイル様の黄金の瞳が、精霊の光に照らされて、星のように瞬いている。
月よりも清廉で、太陽よりも力強い眼光が、私を貫く。
その距離があまりにも近くて、私はどうしても目が離せなかった。
どうして、こんなに近いの?
「あ、あの、ヴェイル様、すみません!私、ずっと、抱き上げてもらっていました!」
やっと今の自分の状況に思い至った私は、慌てて体を引く。
「こら、危ないぞ。」
「す、すみません。」
「折角だ。このまま、そのリボンを結んでこよう。」
ヴェイル様は、私を下ろすことなく、大樹の側まで歩いて行った。
いいの?
私がヴェイル様と絆を結んでもいいの?
どうしよう。
凄く嬉しい...。
私、ヴェイル様と絆が欲しい。
初めて感じた心の底から溢れる欲求に、今の私は戸惑うことしか出来ない。
私は、初めて生まれた感情を自分の髪色に似たリボンと共に、胸元で強く握りしめた。
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