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夜も深まり、窓から入り込んだ肌寒い風がカーテンを揺らす。
サウザリンド王国の昼と夜の激しい寒暖差には、どうもまだ慣れない。私は窓を閉めようと、窓際に近寄った。すると、賑やかな演奏が風と共に運ばれてきた。
「シャンデリアの灯りに照らされたアデライード様も見たかったな。」
正直に言えば、給仕係でもいいから参加したかった。陰ながら、サウザリンド王宮の華やかな世界を見てみたかったから。
でも...。
私は、自分が着ている長袖の侍女服を見下ろして溜息を吐く。
給仕係もドレスの着用が決まりなんだから、私じゃ無理でしょう?
ドレスを着られない自分が悪いんじゃない。アデライード様のドレス姿を見られただけでも、良かったと思わなきゃ。
さあ、片付けを終わらせちゃいましょ!
私は、畳み終わった服を、どんどん衣装箱の中に詰めていった。
コンコン
「はい。」
ノックの音に返事をすると、正装したサージェントの騎士がひょっこり顔を出した。
「あれ?侍女さん、夜会に行かなかったの?」
「あ、はい。私、今日は夜勤なので。」
「えー!それは、ついてないね。じゃあ、これ!一緒に食べない?」
騎士は、効果音が出そうなほど大袈裟に、バスケットを掲げてみせた。
「これ、どうしたんですか?」
覗き込むと、バスケットの中には、沢山のご馳走が入っていた。
「俺も、これから夜勤でさ。夜会をちょこっと見に行ったついでに貰ってきたんだー!でも、流石に多過ぎたから、一緒に食べてくれると嬉しい!」
人懐っこいこの騎士は、バスケットを抱え直すと、私にダンスを申し込むように、手を差し出してきた。
「ふふ、では、少しだけ。」
片付けも粗方終わった。
後は、主人の帰りを待つだけ。
だから、今ぐらい楽しんでも大丈夫よね。
私は、目の前の騎士の魅力的な誘いに乗ることにした。
とは言え、主人の部屋で食事なんて出来ない。私達は、今は誰もいない使用人用の控え室に移動した。
騎士がテーブルに料理を並べてくれている間に、私はヴェイル殿下から習ったお茶を淹れる。
「良い香り!酒が飲めないのが残念だと思ってたけど、このお茶は、料理に凄く合うよ!美味しい!」
「それは、良かったです。おかわりは、遠慮なく言って下さいね。」
「うん!」
夜会で出される料理は、どれも美味しくて、話しながら食べていたら、いつの間にか完食していた。
「ああー!美味しかった!これで夜勤も乗り越えられるよ!付き合ってくれて、ありがとう。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
「でさ...、その、よ、良かったら、なんだけど...。」
騎士が、何かを話そうとした時、廊下の方から言い争うような、ざわざわした声が聞こえた。
「何だろう?ちょっと見てくるから、君はそこに居て。」
そう言って、騎士は警戒しながら、扉に近付いていく。すると、勢いよく扉が開いて、人が入ってきた。
「え?サウザリンドの王弟殿下?」
ポカンとしている騎士を、ヴェイル殿下が睨みつける。そしてすぐ、彼のその鋭い瞳が、私を捉えた。
「なぜ、夜会に来なかった?」
いつもより低い声が、私の耳に届く。けれど、あまりの迫力に、私の喉が張り付いて、上手く声を出すことが出来なかった。
サウザリンド王国の昼と夜の激しい寒暖差には、どうもまだ慣れない。私は窓を閉めようと、窓際に近寄った。すると、賑やかな演奏が風と共に運ばれてきた。
「シャンデリアの灯りに照らされたアデライード様も見たかったな。」
正直に言えば、給仕係でもいいから参加したかった。陰ながら、サウザリンド王宮の華やかな世界を見てみたかったから。
でも...。
私は、自分が着ている長袖の侍女服を見下ろして溜息を吐く。
給仕係もドレスの着用が決まりなんだから、私じゃ無理でしょう?
ドレスを着られない自分が悪いんじゃない。アデライード様のドレス姿を見られただけでも、良かったと思わなきゃ。
さあ、片付けを終わらせちゃいましょ!
私は、畳み終わった服を、どんどん衣装箱の中に詰めていった。
コンコン
「はい。」
ノックの音に返事をすると、正装したサージェントの騎士がひょっこり顔を出した。
「あれ?侍女さん、夜会に行かなかったの?」
「あ、はい。私、今日は夜勤なので。」
「えー!それは、ついてないね。じゃあ、これ!一緒に食べない?」
騎士は、効果音が出そうなほど大袈裟に、バスケットを掲げてみせた。
「これ、どうしたんですか?」
覗き込むと、バスケットの中には、沢山のご馳走が入っていた。
「俺も、これから夜勤でさ。夜会をちょこっと見に行ったついでに貰ってきたんだー!でも、流石に多過ぎたから、一緒に食べてくれると嬉しい!」
人懐っこいこの騎士は、バスケットを抱え直すと、私にダンスを申し込むように、手を差し出してきた。
「ふふ、では、少しだけ。」
片付けも粗方終わった。
後は、主人の帰りを待つだけ。
だから、今ぐらい楽しんでも大丈夫よね。
私は、目の前の騎士の魅力的な誘いに乗ることにした。
とは言え、主人の部屋で食事なんて出来ない。私達は、今は誰もいない使用人用の控え室に移動した。
騎士がテーブルに料理を並べてくれている間に、私はヴェイル殿下から習ったお茶を淹れる。
「良い香り!酒が飲めないのが残念だと思ってたけど、このお茶は、料理に凄く合うよ!美味しい!」
「それは、良かったです。おかわりは、遠慮なく言って下さいね。」
「うん!」
夜会で出される料理は、どれも美味しくて、話しながら食べていたら、いつの間にか完食していた。
「ああー!美味しかった!これで夜勤も乗り越えられるよ!付き合ってくれて、ありがとう。」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
「でさ...、その、よ、良かったら、なんだけど...。」
騎士が、何かを話そうとした時、廊下の方から言い争うような、ざわざわした声が聞こえた。
「何だろう?ちょっと見てくるから、君はそこに居て。」
そう言って、騎士は警戒しながら、扉に近付いていく。すると、勢いよく扉が開いて、人が入ってきた。
「え?サウザリンドの王弟殿下?」
ポカンとしている騎士を、ヴェイル殿下が睨みつける。そしてすぐ、彼のその鋭い瞳が、私を捉えた。
「なぜ、夜会に来なかった?」
いつもより低い声が、私の耳に届く。けれど、あまりの迫力に、私の喉が張り付いて、上手く声を出すことが出来なかった。
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