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ヴェイル殿下に、いったい何があったのだろう。
そもそも、なぜ私は、ヴェイル殿下に呼び出されたの?
謝罪のため?
あのヴェイル殿下が、態々それだけのために時間を割くだろうか。
けれど、私の姿を写す度に、嫌悪を滲ませていた黄金の瞳は、今日はずっと穏やかなままだった。
あの後、緊急の伝令が飛び込んで来たため、話は中断してしまったけど、ヴェイル殿下は最後まで私を気遣ってくれていた。別れ際に、私が美味しいと言ったお茶までくれたのだ。
誰もいない女性用の天幕の中で、私は綺麗に細工が施されたお茶の缶を眺める。
ダメダメ!
今、悩んでも分からないもの。
私は、モヤモヤした疑問と共に、お茶の缶を荷物の中に仕舞い込んだ。
「ステラ!そこの騎士の傷を消毒してあげて。」
「はい。回復薬は使いますか?」
「いや。魔法薬を使うかは、私が診察してから決めようかな。初期治療だけお願い。」
穏やかだった午前中とは打って変わり、魔物討伐に向かった騎士達が、段々と怪我をして戻ってくるようになった。そのため、今の私の仕事は、ゼイン先生の治療の補助が主になっている。
セルヴィン様は、大丈夫だろうか。
先程すれ違ったセルヴィン様も忙しそうにしていた。
ここが一段落したら、そちらの仕事も手伝いに行こう。
私は今日の予定をサッと思い出した後、頭を切り替えて、腕から血を流す獣人騎士の手当てを始めた。
「ありがとう。えっと、ステラちゃんだったよね?」
ニコニコしながら話しかけてきた獣人の騎士は、酷い怪我を負っているのに、まったく痛がる素振りがない。
す、凄い...。
こんなに消毒液をかけているのに。
さすが、騎士様。
「は、はい、そうです。あの、騎士様、怪我は腕だけですか?痛いようでしたら痛み止めもお出し出来ますが、どうなさいますか?」
「騎士様なんて、硬いよー。俺、リバーって言うんだ!よろしくね、ステラちゃん!」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
なぜか握手を求められたので、恐る恐るリバー様の手を握る。
嬉しそうに笑っている彼の背後では、長い尻尾が小刻みに揺れていた。
「ねえねえ、ステラちゃん!今日の夕食は、どこで取るの?てか、いつもどこで食べてるの?せっかく知り合ったんだし、俺達と食べない?みんなステラちゃんと話したいみたいでさ!」
「わ、私ですか?でも...。」
返答に困った私は、ゼイン先生に視線を送る。けれど先生は、他の怪我人を治療中で、こちらに背を向けていた。
「ステラちゃんって花の妖精みたいだって、俺達の中で話題になってるんだよー。赤い髪が可愛いって。」
可愛い?
私が?
私は呆気に取られて、目の前のリバー様を凝視してしまった。
すると、目が合った彼の顔が、どんどん赤くなっていく。
「ス、ステラちゃん?あ、あの、どうかした?」
信じられない。
この赤毛が、可愛い?
これは、獣人特有のお世辞なの?
「...バレリー様!ステラ・バレリー様!」
「あ、はい!」
ぼうっとリバー様を見ていた私に、大きな呼び声がかかった。
急いで返事をした先には、ニルセン様が、引き攣った笑顔を浮かべて立っていた。
そもそも、なぜ私は、ヴェイル殿下に呼び出されたの?
謝罪のため?
あのヴェイル殿下が、態々それだけのために時間を割くだろうか。
けれど、私の姿を写す度に、嫌悪を滲ませていた黄金の瞳は、今日はずっと穏やかなままだった。
あの後、緊急の伝令が飛び込んで来たため、話は中断してしまったけど、ヴェイル殿下は最後まで私を気遣ってくれていた。別れ際に、私が美味しいと言ったお茶までくれたのだ。
誰もいない女性用の天幕の中で、私は綺麗に細工が施されたお茶の缶を眺める。
ダメダメ!
今、悩んでも分からないもの。
私は、モヤモヤした疑問と共に、お茶の缶を荷物の中に仕舞い込んだ。
「ステラ!そこの騎士の傷を消毒してあげて。」
「はい。回復薬は使いますか?」
「いや。魔法薬を使うかは、私が診察してから決めようかな。初期治療だけお願い。」
穏やかだった午前中とは打って変わり、魔物討伐に向かった騎士達が、段々と怪我をして戻ってくるようになった。そのため、今の私の仕事は、ゼイン先生の治療の補助が主になっている。
セルヴィン様は、大丈夫だろうか。
先程すれ違ったセルヴィン様も忙しそうにしていた。
ここが一段落したら、そちらの仕事も手伝いに行こう。
私は今日の予定をサッと思い出した後、頭を切り替えて、腕から血を流す獣人騎士の手当てを始めた。
「ありがとう。えっと、ステラちゃんだったよね?」
ニコニコしながら話しかけてきた獣人の騎士は、酷い怪我を負っているのに、まったく痛がる素振りがない。
す、凄い...。
こんなに消毒液をかけているのに。
さすが、騎士様。
「は、はい、そうです。あの、騎士様、怪我は腕だけですか?痛いようでしたら痛み止めもお出し出来ますが、どうなさいますか?」
「騎士様なんて、硬いよー。俺、リバーって言うんだ!よろしくね、ステラちゃん!」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
なぜか握手を求められたので、恐る恐るリバー様の手を握る。
嬉しそうに笑っている彼の背後では、長い尻尾が小刻みに揺れていた。
「ねえねえ、ステラちゃん!今日の夕食は、どこで取るの?てか、いつもどこで食べてるの?せっかく知り合ったんだし、俺達と食べない?みんなステラちゃんと話したいみたいでさ!」
「わ、私ですか?でも...。」
返答に困った私は、ゼイン先生に視線を送る。けれど先生は、他の怪我人を治療中で、こちらに背を向けていた。
「ステラちゃんって花の妖精みたいだって、俺達の中で話題になってるんだよー。赤い髪が可愛いって。」
可愛い?
私が?
私は呆気に取られて、目の前のリバー様を凝視してしまった。
すると、目が合った彼の顔が、どんどん赤くなっていく。
「ス、ステラちゃん?あ、あの、どうかした?」
信じられない。
この赤毛が、可愛い?
これは、獣人特有のお世辞なの?
「...バレリー様!ステラ・バレリー様!」
「あ、はい!」
ぼうっとリバー様を見ていた私に、大きな呼び声がかかった。
急いで返事をした先には、ニルセン様が、引き攣った笑顔を浮かべて立っていた。
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