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前方に広がる雄大な森を視界に収めながら、私は慎重に芦毛の馬から降りる。
つ、疲れた...。
お尻が、痛い。
地面に着いた脚は、プルプルと震え、力が入らない。
いかなる時も主人の側にあるために、乗馬の訓練はしていたけれど、さすがに騎士達と肩を並べるほどの技術は私にはなかった。
崩れるように座り込んだ私は、その場から、動けなくなってしまった。
すると、俯いていた私の下に、大きな人影がかかる。
「ステラ、体調は大丈夫かい?ここまでよく頑張ったね。ちょっと診察するから、手を出して。」
「は、はい、ゼイン先生。」
触れられた手首から、清涼感のある魔力が入ってくる。
疲れた体に、冷んやりとした魔力が気持ち良かった。
一見、盗賊のようにも見える強面のこの方は、サージェント王国で医局長を務める凄腕のお医者様だ。見た目に反して、物腰が柔らかく、とても優しい。
私の事情も知っていて、こうして定期的に治療を施してくれていた。
そんなゼイン先生は、今回、魔物討伐の筆頭軍医を任されている。
体が大きく、よく体力自慢をしている先生は、森に到着早々、騎士達に混じって野営地の準備をしていた。
それに比べて、移動だけで体力が尽きた私は、何だか酷く情けない。これから魔物の討伐が始まるというのに。
私は痛む体に鞭打って、ふらつく足で何とか立ち上がった。
「先生、私も手伝います。」
「ステラは、本当に良い子だね!最近の仕事は、ストレスばっかり感じてたから、君のような子は癒しだよ!」
ゼイン先生がその大きな手で、私の頭を撫でる。力加減が絶妙で、私はうっとりと酔いしれてしまった。
心地良さに蕩けていると、ふと、どこからか視線を感じた。
見回した先に、黒の甲冑を付けた騎士達の集団が目に付く。その中の一人、ヴェイル殿下と目が合った。
時が止まったかのように、私の体の動きが止まる。その間、ヴェイル殿下の視線は、逸らされることなく、私に注がれ続けていた。
私の願望が見せた錯覚だろうか。
いつもヴェイル殿下から感じていた軽蔑の色が、なぜかその時は見られなかった。
「ゴホン、ゴホン。」
ゼイン先生の咳払いで我に返った私は、慌てて立ち上がり、頭を下げて端に寄る。
ヴェイル殿下は、数名の騎士を連れ、こちらに向かって来ていた。
「要請していた追加の物資が届いた。ゼイン殿には、薬品類の確認を頼みたい。」
「畏まりました。ステラ、この後、少し手伝って。」
「はい。」
私は、ヴェイル殿下とゼイン先生の背中を、小走りで追いかけた。
大きな天幕に入ると、そこには所狭しと木箱が積み上げられていた。
「ここと隣の天幕を、救護所として使ってくれ。もし、今後怪我人が増えるようであれば、天幕は増やす。それで何とかなるか?」
「はい。これだけの薬があれば、当面は大丈夫でしょう。」
「分かった。ここは任せる。」
ゼイン先生とヴェイル殿下が、今後の話し合いをしている中、私は渡された物資の目録に目を通していた。
思った以上に手厚い内容に、私は少しだけ安堵の息を漏らす。
「...バレリー殿。」
「は、はい!」
急に慣れない名前を呼ばれて、不恰好な返事をしてしまった。
私は姿勢を整えて、ヴェイル殿下に体を向けた。
「少し話がしたい。後で俺の天幕まで来てもらえないだろうか?」
え?
話?
すぐに返答出来なかった私に、控えていた獣人騎士達の視線が刺さる。
「は、はい、畏まりました。」
恐れ慄く体を無理矢理押さえつけて、私は何とか返事を返した。
つ、疲れた...。
お尻が、痛い。
地面に着いた脚は、プルプルと震え、力が入らない。
いかなる時も主人の側にあるために、乗馬の訓練はしていたけれど、さすがに騎士達と肩を並べるほどの技術は私にはなかった。
崩れるように座り込んだ私は、その場から、動けなくなってしまった。
すると、俯いていた私の下に、大きな人影がかかる。
「ステラ、体調は大丈夫かい?ここまでよく頑張ったね。ちょっと診察するから、手を出して。」
「は、はい、ゼイン先生。」
触れられた手首から、清涼感のある魔力が入ってくる。
疲れた体に、冷んやりとした魔力が気持ち良かった。
一見、盗賊のようにも見える強面のこの方は、サージェント王国で医局長を務める凄腕のお医者様だ。見た目に反して、物腰が柔らかく、とても優しい。
私の事情も知っていて、こうして定期的に治療を施してくれていた。
そんなゼイン先生は、今回、魔物討伐の筆頭軍医を任されている。
体が大きく、よく体力自慢をしている先生は、森に到着早々、騎士達に混じって野営地の準備をしていた。
それに比べて、移動だけで体力が尽きた私は、何だか酷く情けない。これから魔物の討伐が始まるというのに。
私は痛む体に鞭打って、ふらつく足で何とか立ち上がった。
「先生、私も手伝います。」
「ステラは、本当に良い子だね!最近の仕事は、ストレスばっかり感じてたから、君のような子は癒しだよ!」
ゼイン先生がその大きな手で、私の頭を撫でる。力加減が絶妙で、私はうっとりと酔いしれてしまった。
心地良さに蕩けていると、ふと、どこからか視線を感じた。
見回した先に、黒の甲冑を付けた騎士達の集団が目に付く。その中の一人、ヴェイル殿下と目が合った。
時が止まったかのように、私の体の動きが止まる。その間、ヴェイル殿下の視線は、逸らされることなく、私に注がれ続けていた。
私の願望が見せた錯覚だろうか。
いつもヴェイル殿下から感じていた軽蔑の色が、なぜかその時は見られなかった。
「ゴホン、ゴホン。」
ゼイン先生の咳払いで我に返った私は、慌てて立ち上がり、頭を下げて端に寄る。
ヴェイル殿下は、数名の騎士を連れ、こちらに向かって来ていた。
「要請していた追加の物資が届いた。ゼイン殿には、薬品類の確認を頼みたい。」
「畏まりました。ステラ、この後、少し手伝って。」
「はい。」
私は、ヴェイル殿下とゼイン先生の背中を、小走りで追いかけた。
大きな天幕に入ると、そこには所狭しと木箱が積み上げられていた。
「ここと隣の天幕を、救護所として使ってくれ。もし、今後怪我人が増えるようであれば、天幕は増やす。それで何とかなるか?」
「はい。これだけの薬があれば、当面は大丈夫でしょう。」
「分かった。ここは任せる。」
ゼイン先生とヴェイル殿下が、今後の話し合いをしている中、私は渡された物資の目録に目を通していた。
思った以上に手厚い内容に、私は少しだけ安堵の息を漏らす。
「...バレリー殿。」
「は、はい!」
急に慣れない名前を呼ばれて、不恰好な返事をしてしまった。
私は姿勢を整えて、ヴェイル殿下に体を向けた。
「少し話がしたい。後で俺の天幕まで来てもらえないだろうか?」
え?
話?
すぐに返答出来なかった私に、控えていた獣人騎士達の視線が刺さる。
「は、はい、畏まりました。」
恐れ慄く体を無理矢理押さえつけて、私は何とか返事を返した。
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