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私達、大失敗しちゃったかも。
完全に見誤ったわ。
まさか彼が、あんな属性を秘めてたなんて。
もしかして私達、完全に詰んだ?


ウィルの鼓動を聞きながら、私の頭の中に、そんな投げやりな呟きが、聞こえたような気がした。


でも、待って!

私は、理花の魔力の根元を全て使って、ウィルの根元を修復しようとしたのだ。
その結果、私の中の理花ごと、神の力を失う事を覚悟していた。
そうしなければ、ウィルは助けられないと思ったから。


それなのに。
私の中にはちゃんと、リルメリアと理花の、二つの魔力の根元が残っている。


私はウィルの腕から出るのを一旦諦めて、もう一度、ウィルの鼓動に耳を澄ませた。


トクン、トクン、トクン...。

駄目だと分かっているのに、心地良い心臓のリズムと、温かい腕に癒される。


ん?
あれ?


「フフ、リル、擽ったい。」

「ウィル、これ!」
私はある事に気付いて、ウィルの胸を凝視した。


「気付いた?そうだよ。だから、私達はもう離れられない。これから一生ね。」

「ま、待って。...そんな事ある?こんな...。」
私は力一杯、ウィルを押し除けて、ベッドから体を起こした。

先ずは、深呼吸を一つして、光魔法で小さな光を手のひらに出す。
これは問題ない。

直ぐに頭を切り替えて、次は温風を出す複合魔法を発動する。
温風は、出た。
でもなぜか、私の発動している魔法陣へ、私とウィルの両方の体から魔力が流れている。



「こ、これって...。」
私は呆然と、自分の手を見つめた。


「一部だけど、理花の魔力の根元が、私の中にあるからね。そっちの魔法を使う時は、私も必要みたいだ。」
ウィルも起き上がって、私の後ろから魔法陣を覗き込む。そして、ベッドに座る私を後ろから抱きしめた。



私の中には、リルメリア本来の魔力の根元と理花のそれが、独立して存在している。
今まで全く意識していなかったけれど、私が複合魔法のような複雑な魔法を使う時は、理花の方の根元から生まれる魔力を使用して、魔法を発動していたようだ。それは、理花の魔力が、神から授かった無属性だからだろう。

それに対して、単一の属性魔力で発動出来る魔法は、リルメリアの魔力だけでも使用出来た。
つまり...。



「理花の魔力を使う魔法を発動する時は、ウィルが必要ってこと?」

先程、光の魔法を使った時は問題なかった。でも、複合魔法で温風を出した時は、ウィルの中にある理花の魔力も使っていた。
つまり、ウィルがいなければ、私は複合魔法が使えないのだ。


「嬉しい。凄く、嬉しい。リル、もう私からは離れられないよ。」
私を抱きしめるウィルの腕に、力が入る。感極まったウィルが、私の髪を掻き分けて、頸に唇を当てた。


「やんっ...。」
私の首に温かい吐息が掛かって、変な声が出た。


諦めて、ここまで堕ちてきて。

私の首に顔を埋めているウィルから漏れた微かな呟きが、耳を擽る。




ああ、これ、ヤンデレ属性だわ。
怖っ!
これは、逃げられる気がしない...。
絶対、無理だ...。


理花の諦めの声が、私の頭の中にいつまでもこだましていた。




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