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「あ、あああ!ああ!」

滝のような雨音が響く中、大きな叫び声が上がった。私達が振り向くと、鎖に繋がれたダリア様が、地面に蹲って震えていた。
その体に容赦なく、雨粒が打ち付ける。
ダリア様の体を庇うように広げられた羽からは、白い煙が上がっていた。


「イヤ...、イヤよ。やめて、これは...。」

ダリア様の悲痛な声が、雨音の中から途切れ途切れに聞こえてくる。
ウィルは、そんなダリア様に剣を向けながら、雨から一歩遠ざかっていた。



「ほら!今だよ!」
ルーイ先生が大声で叫ぶと、輝く魔力を纏った二つの影が空を駆けた。


ライ!ゲイツ!
それに、あの魔力は!

魔力の元を目で追うと、そこには、アルバス様の無事な姿があった。


「ダメよ!ダメ!」

羽を広げ抵抗するダリア様へ、アルバス様の魔力を纏ったライとゲイツが、同時に剣を振り下ろした。
二本の剣から放たれた闇の魔力と風の魔力が、鋭い刃になってダリア様へと迫る。
それは、上空から真っ直ぐ下へと加速し、そしてダリア様の羽を綺麗に切り落とした。


「あ、あ、あ、ああ、あ。」
蹲ったままのダリア様から、苦痛に歪む声が聞こえる。
そこへウィルが、もう一度、光の拘束魔法を上掛けしていた。



「うんうん!みんな良くやったね!頑張った!頑張った!リルちゃんも大丈夫ー?」

「はい、大丈夫です!」

ルーイ先生が、私の目の前へフワリと降り立つ。


「先生!心配しましたよ!大丈夫でしたか!?」

「ちょっと危ない時もあったけどねー。デル君が回復薬を、ちょちょいと作ってくれたお陰でねー。何とか生き残りました!それにしても...。」
ルーイ先生が、力無く蹲るダリア様に目を向ける。


「彼女、随分アーティファクトに侵食されてるね。あれは、もうダメかな。」

「アーティファクト!?」

「あれ?気付いてなかった?あの羽が、聖火を生み出すアーティファクトの成れの果て。残念だけど、修復は無理だね。ほっとけば崩れるでしょ。アーティファクトも彼女も。」


ダリア様の側に落ちている三対の羽が、炎を上げて燃えている。
その炎には、僅かな浄化の力を感じた。


「ダリア様だけでも、助けることは出来ないでしょうか?このダンジョンなら、もしかしたら...。」

「残念。それは、無理。多分、このダンジョン自体が、アーティファクトなんだと思うよ。アーティファクトは、お互いの力の影響を受けない。現に今、僕達はこのダンジョンの効果で、怪我一つないのに、彼女の体、傷だらけでしょー?彼女自身が、もう聖火のアーティファクトの一部なんだよ。だから彼女を助けることは不可能だ。」

重い空気が、私とルーイ先生の間に流れる。
そこへ、ライの、私を呼ぶ大きな声が聞こえた。







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