272 / 308
7-37
しおりを挟む
「すごーい!君、言い切ったね!そこまで来ると、寧ろ清々しいよぉー!でも、残念。これを知っちゃったリルちゃんは、このまま無視するなんて出来ないんだなぁー。」
ウィルを揶揄うように、シロは飄々とした口調で話す。
そんなシロを、ウィルはきつく睨みつけていた。
「リルちゃん、騙すようにここに連れて来てごめんねぇー。君がこの世界で生を受けた日、世界はすぐに君の存在に気付いた。だから、いつかこの日が来ることは分かってたんだぁー。僕はねぇー。ずっとずっと、リルちゃんの成長をあの泉の底から見てきた。君も僕の可愛い使徒達同様、強く優しい子になったねぇー。聞き慣れた安っぽい言葉かもしれないけど、僕は、リルちゃんを信じてるんだ。だから、どうかお願い。僕の世界を守って、聖女リルメリア。」
シロは淡い光を纏い、フワリと宙に浮かび上がった。そしてウィルを飛び越えると、私の額に右手を添えた。
シロの手から、温かい何かが私の中に流れてくる。
昔からよく知っている、ずっと共にあったような何かが。
「リルちゃん、受け取って。」
そう言ったシロの輪郭は、光の中でボヤけていた。
私は声を頼りに、光に手を伸ばす。
リン、リン、リン。
澄んだ鈴の音が光と共に、優しく私を包む。その音は、私に燻る不安や恐怖を浄化しているように感じた。
怒りが消え、冷静になった頭で、私は思う。
私は、神という存在に上手く利用されているだけなのかもしれないと。
可愛い狐の姿をしていても、シロは神。
私達、人より遥かに上位の存在だ。
聖女と言われ、特別に力を与えられていても、所詮私は神々にとって道具の一つなのだろう。
でも、私は感謝しているのよ。
一度失った家族を、再び得ることが出来たのだから。大切な人達だって、沢山できた。
理花が失ったものを、私は今、この手に抱きしめられている。
だからシロ、これは私の恩返しでもあるの。貴方と、そしてこの世界への。
目の前の光が、少しずつ弱まっていく。シロの声も、不鮮明になっていた。
「これは...、僕が出来る最後の贈り物。リルちゃんが呼べば、必ず応えてくれる。大丈夫!君なら大丈夫だよぉー。だから...、どうか、お願い...無事...。」
「分かった!私、やってみる!ダリア様を止めるから!シロはちゃんと、私達が帰るのを待っていて!」
その会話を最後に、辺りは真っ暗な闇に包まれる。そして、私の手には温かい何かが残っていた。
ウィルを揶揄うように、シロは飄々とした口調で話す。
そんなシロを、ウィルはきつく睨みつけていた。
「リルちゃん、騙すようにここに連れて来てごめんねぇー。君がこの世界で生を受けた日、世界はすぐに君の存在に気付いた。だから、いつかこの日が来ることは分かってたんだぁー。僕はねぇー。ずっとずっと、リルちゃんの成長をあの泉の底から見てきた。君も僕の可愛い使徒達同様、強く優しい子になったねぇー。聞き慣れた安っぽい言葉かもしれないけど、僕は、リルちゃんを信じてるんだ。だから、どうかお願い。僕の世界を守って、聖女リルメリア。」
シロは淡い光を纏い、フワリと宙に浮かび上がった。そしてウィルを飛び越えると、私の額に右手を添えた。
シロの手から、温かい何かが私の中に流れてくる。
昔からよく知っている、ずっと共にあったような何かが。
「リルちゃん、受け取って。」
そう言ったシロの輪郭は、光の中でボヤけていた。
私は声を頼りに、光に手を伸ばす。
リン、リン、リン。
澄んだ鈴の音が光と共に、優しく私を包む。その音は、私に燻る不安や恐怖を浄化しているように感じた。
怒りが消え、冷静になった頭で、私は思う。
私は、神という存在に上手く利用されているだけなのかもしれないと。
可愛い狐の姿をしていても、シロは神。
私達、人より遥かに上位の存在だ。
聖女と言われ、特別に力を与えられていても、所詮私は神々にとって道具の一つなのだろう。
でも、私は感謝しているのよ。
一度失った家族を、再び得ることが出来たのだから。大切な人達だって、沢山できた。
理花が失ったものを、私は今、この手に抱きしめられている。
だからシロ、これは私の恩返しでもあるの。貴方と、そしてこの世界への。
目の前の光が、少しずつ弱まっていく。シロの声も、不鮮明になっていた。
「これは...、僕が出来る最後の贈り物。リルちゃんが呼べば、必ず応えてくれる。大丈夫!君なら大丈夫だよぉー。だから...、どうか、お願い...無事...。」
「分かった!私、やってみる!ダリア様を止めるから!シロはちゃんと、私達が帰るのを待っていて!」
その会話を最後に、辺りは真っ暗な闇に包まれる。そして、私の手には温かい何かが残っていた。
1
お気に入りに追加
439
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
うーん、別に……
柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」
と、言われても。
「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……
あれ?婚約者、要る?
とりあえず、長編にしてみました。
結末にもやっとされたら、申し訳ありません。
お読みくださっている皆様、ありがとうございます。
誤字を訂正しました。
現在、番外編を掲載しています。
仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。
後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。
☆☆辺境合宿編をはじめました。
ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。
辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。
☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます!
☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。
よろしくお願いいたします。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
転生先は選べない 〜子連れ予定の悪役令嬢は、王太子殿下から逃げ回る〜
一 千之助
恋愛
地球とは別な世界ラステル。
剣と魔法が生きる異世界で、一人の女性が眼を覚ました。彼女の名前はエカテリーナ・ラ・アンダーソン。悪名高き御令嬢である。通称黒薔薇。
エカテリーナは自国の王太子に懸想しており、ある夜、協力者を得て王太子に薬を盛り、その不埒な願望を成就させた。しかし、その翌日、錯乱した王太子の魔法で意識不明の重体に陥る。
命は助かったものの、その衝撃で彼女の魂は昇天してしまう。つまり昏睡状態で空っぽな身体。
そんな彼女の中で目覚めたのはエカテリーナでなく、日本人の主婦橘薫。
ある事故で亡くなってしまった薫は神に頼まれ、同じく中身が死んでしまい植物人間状態だったエカテリーナの身体に転生する。
《チビを救ってくださいっ!》
悲壮な顔の神、ヒューズから聞いた話に薫は激怒した。彼の説明によれば、エカテリーナの中に芽吹いた命が、薫の元愛犬だったチビの生まれ変わりだというではないか。
『ふざけんなぁぁぁーーーーっっ!!』
謀で生まれたチビの将来は果てしなく暗い。
そう考えた薫は、チビと生き抜くために王太子から逃げ回る。………なので、彼女だけが気づかなかった。王太子が、必死の形相で、心配げにエカテリーナを追いかけてきていることに。
子供を守るため死物狂いで逃げる薫と、完全な思惑の食い違いから逃げまくられる王太子。すれ違うどころが、追いまくっても追いつけない王太子に未来はあるのか。
☆ いくらかの性的表現、残酷な描写、奴隷などの人権無視もございます。御注意を。
悪役令嬢に転生したおばさんは憧れの辺境伯と結ばれたい
ゆうゆう
恋愛
王子の婚約者だった侯爵令嬢はある時前世の記憶がよみがえる。
よみがえった記憶の中に今の自分が出てくる物語があったことを思い出す。
その中の自分はまさかの悪役令嬢?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる