下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

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「いや、違う。私は貴女の王子様じゃありません。私は貴女をただ利用したんだ、ダリア様。」

「なあに？何、言ってるの？貴方は、私が好きなの。その女より私を選んだ。そうでしょ？」

「私は陛下と取引をしました。新たなシルヴァンフォード公爵として、王家を支持する代わりに、王家はダリア様を全力で聖女にすると。陛下と王太子殿下も聖女誕生には乗り気でしたから、契約はすぐに成立しました。」


どういうこと？
ウィルは何を言っているの？
淡々と語られるウィルの言葉が、私には理解出来ない。



「アハハ、その女より私が聖女に相応しいってことでしょ？そうよ！私は誰よりも凄いの。誰からも愛されるお姫様なの！」

「ダリア様、私は本気で貴女を聖女にするつもりでした。世界に犠牲となることを強いられる聖女に。リルの命を守るために、私は貴女がリルの代わりに犠牲になることを望んだんです。だから私は、進んで貴女の騎士になりました。」

「何それ...。どういうこと？犠牲？ウィルフレイ様は、私の犠牲を望んだの？その女の代わりに？なんで？私が好きなんでしょ？私は選ばれた存在なのよ？そんな女のどこがいいのよ！」

怒りの形相で、ダリア様が地団駄を踏む。
魔力が彼女の周りに渦巻き、枯れた木々を根こそぎ倒していった。



「ああ、あああ！」

ダリア様から噴き出した魔力が、激しい嵐のように私達に降りかかった。
咄嗟に張った私の結界は、圧倒的な魔力を前に、今にも崩れそうだ。


「リル！よく聞いて！君はダリア様と戦っちゃ駄目だ。彼女は私がどうにかする。だから今すぐここから脱出して。」
ウィルは剣を抜くと、その剣に光の魔力を纏わせた。
そして荒れ狂う魔力の中に駆け出すと、一気にダリア様との距離を詰めた。


「どうして...どうして、ウィルフレイ様は私のものなのに...。ああ、どうしてなの！どうしたらいいの？」
頭を抱え、悶えるダリア様に、ウィルは容赦なく剣を振り下ろす。
その剣を、ダリア様の羽が瞬時に受け止めた。ぶつかり合った二人の魔力が火花を散らす。



「ダリア様、私を含め、人は物ではありません。貴女の境遇は、確かに哀れに思います。しかし貴女は聖火を使って、多くの人に冤罪を仕掛けましたね？貴女が人を陥れ、楽しんでいる姿を私は何度も見ました。」

「それの何がいけないの？私は、神に愛されたお姫様なのよ？みんな私を敬わなきゃいけないわ。当然でしょ？だから、私を愛さない敵は倒すのよ。」
ダリア様がウィルに向かって、腕を大きく広げた。