下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ

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「お腹空かないわね。」

「そうだな。」

「眠くもならないのよね。」

「夜が来ないからな。」

「疲れも感じないのよ。」

「まだまだ俺ら、若いからな。」

ボソボソと会話をしながら、私とデルは気になった植物を採取していく。


「なんか君達、熟年夫婦みたい!もうちょっとキャピキャピしなよー!老人の農作業にしか見えないじゃん!」


ズカズカと足を踏み鳴らしてやってきたルーイ先生に、私とデルは胡乱な目を向ける。


「ルーイ先生、疲れてます?」

「もう若くないですもんね?休憩入れましょうか?」

「ちょっと酷いよ、デル君!」
ルーイ先生が頬を膨らませて拗ねている。

この人、本当に何歳なのかしら?絶対に教えてくれないのよね。


「僕も疲れてませんから!ここだと疲れないんじゃないかな?時間停滞してる空間だし。これだけの魔力を使ってるのに、体内魔力が消費された感じしないんだよねー。」



村を出てから、大分時間は経過したはずだ。けれど、ここは日が暮れないため、正確な時間が分からない。体が睡眠を必要としないせいもあり、私は既に時間の感覚を失いつつあった。


「景色も代わり映えしないから、進んでいるのか、いまいち分からないのよね。」

「ですが、出現する魔物は確実に強くなっていますよ。」
そう言ってライが、拳大の魔鉱石を私に差し出した。


「先程戦った二足歩行の魔物から出た物です。その魔物は武器を使って攻撃してきました。まだこちらの戦力に余裕はありますが、メリアお嬢様もこの先あまり油断しないで下さい。」

「分かったわ。気を付ける。」


シロは、ダンジョンで人が死ぬことはないと言っていた。けれど、例え死ななくても、その後、どんな影響があるか分からない。
十分気を引き締めないと。




採集の片付けをしていると、突然、大地を揺らすほどの咆哮が、辺りに響き渡った。
風に乗ってビシビシと嫌な空気が、私の肌に当たる。
屈んだ体勢のまま、デルは私をその腕に庇い、ライとゲイツは剣を構えた。



「リル!上だ!」

声が聞こえたのと同時に、私達の上には黒く大きな影が、羽を伸ばした。

私は反射的にライとゲイツの袖を掴んで、短距離転移魔法を使う。
転移先を瞬間的に設定したため、私は受け身が取れず、強かに体を地面へ打ちつけてしまった。


「大丈夫か!?」

デルの手を借りて立ち上がると、先程まで私達がいた場所に、粉塵が立ち上っているのが見えた。

その中で、蠢く影が再び咆哮を上げる。
吹き飛ばされた砂埃の合間から現れたのは、全身を覆う艶やかな黒い鱗。そして空を覆うように広げられた同色の翼だった。



「あれって...。」

「あんなの物語の中だけだと思ってた...。」


絶対的な存在感を放ちながら現れた黒竜は、私達を嘲笑うかのように、開いた口から炎を滴らせていた。









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