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*アルバス視点 3

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「陛下!お話があります!」

「アルバスか!?よく帰った!して、聖女には会えたのか!?」

「はい、お話をして頂けました。」

「そうか!よくやった、アルバス!それで、聖女はこの国を助けてくれると!?」

興奮した様子の陛下が玉座から立ち上がり、私の前まで降りて来た。
そして侍従にテーブルと椅子を用意させ、私に座るよう示す。
その間、ダリアは感情の見えない表情で、こちらを見ていた。


「お兄様、邪魔しないで下さい。今は私が、お父様と大切な話をしていたのに!」

「煩いぞ、ダリア!お前の話は、もう聞きたくない!目障りだ。下がれ!」
陛下の無慈悲な声が、謁見室に轟く。

ダリアは床に座り込むと、捨てられた小動物のように震えながら泣き出した。
隣では、宰相の小さな溜息が聞こえた。




「陛下、聖女様より警告を受けました。」
私はダリアを無視して、陛下と真っ直ぐ視線を合わせる。陛下の瞳は、ユラユラと不安に揺れていた。


「聖火は、近々枯渇するそうです。」

「な、何だと...?そんな、そんなバカな話があるか!」
激昂した陛下が、テーブルを強く叩く。


「陛下、信じたくない気持ちは分かりますが、これは事実です。聖火は、限りある恩恵でした。私達は、気付くのが遅過ぎたのです。」


「違います!そんな事、ありません!聖火は、私が生み出す神の力です!」
泣いていたダリアが、急に立ち上がって、私を睨む。


「聖火は、聖人により齎された神の加護だ。ダリア、お前の力じゃない。」

「いいえ、私の力です!」

「ならば、出してみろ、今、ここで。」

「酷いです、お兄様。今は錫杖がありません。あれがないと、私は...。」



すると、すぐに動いた宰相が、錫杖を持って戻ってきた。私は、肩で息をする宰相から錫杖を受け取ると、ダリアの手に握らせる。


「出来るのだろう、ダリア?見せてくれ。」


涙を浮かべたダリアが、渋々といった態度で錫杖を胸元に寄せる。
ダリアの祈りに応えて、温かな魔力が集まった。しかしそれも一瞬のことで、すぐに飛散してしまった。


「な、なんだこれは...。どういう事だ、ダリア!?なぜ、聖火が灯らない!?」

「ち、違っ...。今のは失敗しただけです!次はっ!」
何度も何度もダリアが祈りを捧げる。しかし、聖火は儚くも一瞬で消えていった。

もう灯るほどの力も無いのか。


「ダリア、昨日練習したと言っていたな?どの程度、練習していたんだ?」
私の質問に、宰相が顔を青くする。


「ダリア様の訓練で、聖火が底を突いたと、そういう事ですか、アルバス殿下?」

「ああ、残念だけど、恐らくね。」


「違う!違うわ!今は私を、真に愛してくれる人がいないからよ!私の力は、愛の力なの!私が愛されないと、力が出ないの!だからお父様、ウィルフレイ様に会わせて!」
ダリアが錫杖を捨てて、陛下に縋り付く。

雑に扱われたこの錫杖も、聖人が残した我が国の宝だというのに。

国宝が音を立てて、床に転がった。


「アルバス、それは真実なのか?」

「はい、陛下。」

「そうか...。」
項垂れてしまった陛下に代わり、私は近くの近衛騎士に指示を出す。


「ダリアを連れて行け!処遇が決まるまで、決して部屋から出すな!」

「はっ!」


「イヤ!イヤよ!お父様、助けて!ウィルフレイ様!ウィルフレイ様に会わせて!」
暴れるダリアを、近衛騎士が二人がかりで連れて行く。

静かな廊下に、ダリアの叫び声がいつまでも響いていた。






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