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「往生際が悪いぞ!証拠は揃っている!ディナータ侯爵家は廃籍、平民へ降格とする!本来であれば、生涯幽閉となる所を聖女様の慈悲により、ディナータ領での10年間の奉仕活動へ減刑となった。これ以上の温情はない!」

「お待ち下さい!これは何かの陰謀です!そうです!全てはその女がやった事です!復讐のために、我が国を乗っ取ろうとしているのですよ!殿下、騙されてはいけません!」

「勘違いするなよ。」
怒りを露わにしたアルバス様が、低い声で唸る。


「聖女様に対し、何という態度だ!この方は、神の使徒であり、この世界の至宝。本来であれば、お声を掛ける事など許されない方なのだ。この場でお前達の首を落としてもよいのだぞ!」

「「ヒッ!」」
アルバス様の怒気に当てられて、元侯爵夫妻は情けなく震えだした。


「もういい、目障りだ!連れて行け!」
待機していた騎士達が、力無く座り込む侯爵達を無理矢理立たせて外へ連れ出す。

私の横を通り過ぎようとしたその時、リノアーノ様の足が止まった。


「貴女さえいなければ...、私は、私が、アルバス様の婚約者でしたのよ。この疫病神。」

「おい!止まるな!」
不敬な態度を取り続けるリノアーノ様の腕を、騎士が力を入れて引いた。


「聖女様、お気を付け下さいね。確かに私はお父様に言われて、ダリア様に近付きました。でも、ウィルフレイ様の事が好きだから協力して欲しい。リルメリア様を排除して欲しい。そう言ってきたのは、ダリア様です。」

言いたい事を言い終えたのか、リノアーノ様は背筋を伸ばして歩いていった。

あの方は貴女の全てが欲しいのね。

リノアーノ様が残した最後の一言が、私の心に怒りを注ぐ。

でも、それこそ今の私には関係ないことだ。



「ダリアか...。あの子はあれで狡賢い。可哀想な子だと、他人の同情を上手く利用している節があるんだ。」

「そうですか。」

窓から入ってくる日差しが、大分傾いてきた。その光によって出来たアルバス様の影が、私を覆う。


「聞かないのかい?ダリアと彼のその後。」

「はい。どんな結末でも、私には、もう関係のないことです。」

「そうか。」
私を労わるような空気を消し去ると、アルバス様は私を離宮の外へと促した。


「リルメリア嬢、聖火の件は、私が責任を持って陛下へ伝える。貴女の忠言もね。だからそれが終わったら、また会ってくれるかな?」
暮れ行く陽を背景に、アルバス様が可愛らしく首を傾げる。


「どうでしょう。ティリウス聖王国に、アーレント王国の方は立ち入り禁止ですから。」

愛らしくお願いしてもダメです!


「うーん。まあ、やり方はいくらでもあるからね。今度はゆっくり会ってくれると嬉しいな。」

見惚れそうになる笑顔を向けたアルバス様を、ずっとライが威嚇していた。







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