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「シロ!」

「はーい!なぁに、リルメリアちゃん?」
私がシロを呼ぶと、白いモフモフが胸の中に飛び込んできた。


「シロ、この子達がちゃんと生まれ変われるように、助けてあげて下さい。」

「ああ、可哀想に。祝福の花に呑まれちゃったんだねぇ。」

「祝福の花?これが?」

「うん。この花は、大地から溢れる魔力を取り込んで、人に分け与えることが出来るんだぁ。これを作った子は、増強アイテムって言ってたよぉ。でもねぇ、必要以上に欲を出すと、使用者の魔力を食い荒らすんだよぉ。人への戒めのためにねぇ。」 


私は、シロの言葉に声を失う。
サンクティーを生み出した異世界人は、何を願って、この花に祝福と名付けたのだろうか。
目の前に広がるあまりにも酷い現実に、私の胸が締め付けられた。



「シロ、どうかこの子達に、神の祝福を。」

「うーん。僕、何も出来ないよぉ?」

「私も手伝いますから!」

「仕方ないなぁ。」
シロが私の腕から飛び出して、子供達が眠る大地に近付いていく。

土に半分埋まった彼らの体には、焼けこげたサンクティーの根が縄のように絡みついていた。



どうか、犠牲になった尊い命に、この世界の優しい救済が届きますように。

私はシロという神へ、ただ一心に願った。









「みんなお疲れ様ぁ。そろそろ帰るのぉ?」
窓辺で日向ぼっこをしていたシロが、集まった私達に少し寝ぼけた声をかける。


「そうね。私は元々、サンクティーを探しに来ただけだし。これ以上この国に、介入するつもりはないわ。」


多くの犠牲を生み出したアズバンド王族の所業を知った国民は、各地でクーデターを起こし始めた。
それに恐れをなした議会は、直ぐ様王族の捕縛を命じる。
絶大な人気を誇っていたオーレリー王妃とアマンディア王女は、今後国民の前で、その罪を裁かれることになった。
けれど荊棘の呪いに苦しむ彼女達に、これ以上の罰はあるのだろうか。




「リル、大丈夫?」
隣に座るリズベルが、私の肩を優しく摩る。


「心配してくれて、ありがとう。リズベルこそ、大丈夫?」

「うん。私、強くなったみたい!ギルド長に鍛えられたからかも!」
リズベルの笑顔につられて、私も笑顔になる。ルーイ先生のギルドが楽しそうで、私も嬉しい。




そこへ、資料を抱えたローズがやってきた。よく見ると、ローズの騎士服に皺が寄っている。しっかり者のローズにしては珍しい。


「お疲れ様、ローズ。それ、サンクティーの取引先?」

「はい。アズバンド国内のサンクティーは、魔法士ギルドの協力を得て、破棄は完了しました。そ、それでですね...。」

「どうかした?」

「あ、あの、実は、アマンディア王女の離宮で、バレントの公女を発見しまして...。今、ロバートが拘束しています。」

ローズが疲れた顔をしていた理由に納得がいった。ロバートのためにも、私が行った方がいいだろう。
それに、丁度いい意趣返しにもなる。

私はニヤリと笑って、ソファから腰を上げた。










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