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「さあ、全員ついて来なさい。」
私がぼんやりと昨日の遣り取りを思い出していると、グレゴール男爵が戻ってきた。
私達は言われるがまま、男爵の後に続いて馬車に乗り込んだ。
馬車で移動した先は、やはり王宮。
裏門から人目を忍んで、王宮に入った私達は、居住区と思われる場所の客室へ案内された。
「ああ、これで私も、憧れの王妃様にお仕え出来るのね!」
黒髪の少女が、上機嫌で部屋の中をクルクルと回っている。他の子達も、釣られるようにどこか浮かれていた。
「何見てるのよ!」
「い、いえ。えっと、皆さん、王妃様が大好きなんですね。」
「そんなの当たり前でしょ!オーレリー王妃様は、元平民でありながら、その美貌と魔法の才能で王様に見初められた凄い方なのよ!」
「お前、そんな事も知らないで、ここにいるのかよ。」
「えっと、すみません。僕、田舎の出で。」
蔑むような目で見られながらも、私は低姿勢で大人しくやり過ごす。
「これだから、私、孤児は嫌だって言ったのよ!もう、貴方、この話は辞退しなさい!」
黒髪の少女が私の腕を引いて、強引に部屋から追い出そうとする。
しかしその時、ゆっくりとドアが開いた。
「あらあら、喧嘩はいけないわよ?貴方達は、大切な子達なのだから仲良くね?」
ダークブラウンの髪を高く結い上げた妖美な女性が、グレゴール男爵を連れて現れた。
「あ、ああ、王妃様...。」
子供達が、ぎこちなくも必死に礼を執る。
「ふふ、みんな頭を上げて。その可愛い顔を見せてちょうだい。」
顔を上げると、オーレリー王妃と目が合った。
もう四十過ぎとは思えないほど、美しい妖艶な女性だった。胸元を大きく開けたドレスがよく似合っている。
王妃は子供達を見回すと、その真っ赤な唇の端を上げて微笑んだ。
「さあ、可愛い子供達!特別な場所へ連れて行ってあげる。いらっしゃいな。」
「「「はい、王妃様!」」」
子供達が王妃を囲んで、嬉しそうにはしゃいでいた。
「あ、でも、王妃様!この子はダメです!だって汚い孤児なんですよ!王妃様の側に置いておけません!それに、王妃様の事も馬鹿にしていて...私、そんな子、絶対に赦せません!」
黒髪の少女が突然、私を指差して糾弾した。それに周りの子達も賛同している。
「まあ、貴女は私を守ってくれるのね。可愛い子、貴女のお名前は?」
「わ、私は、エリンです!」
「ふふ、エリン、ありがとう。でも、私はみんなと仲良くして欲しいわ。たとえ孤児でもね。出来るかしら?」
「は、はい!王妃様のためなら。」
「良い子ね。みんなもよ?」
「「「はい!」」」
「ふふ、じゃあ行きましょうね。」
オーレリー王妃がこちらに背を向ける直前、一瞬だけ私と目が合った。その目は冷たく、はっきりと嫌悪感が浮かんでいた。
私がぼんやりと昨日の遣り取りを思い出していると、グレゴール男爵が戻ってきた。
私達は言われるがまま、男爵の後に続いて馬車に乗り込んだ。
馬車で移動した先は、やはり王宮。
裏門から人目を忍んで、王宮に入った私達は、居住区と思われる場所の客室へ案内された。
「ああ、これで私も、憧れの王妃様にお仕え出来るのね!」
黒髪の少女が、上機嫌で部屋の中をクルクルと回っている。他の子達も、釣られるようにどこか浮かれていた。
「何見てるのよ!」
「い、いえ。えっと、皆さん、王妃様が大好きなんですね。」
「そんなの当たり前でしょ!オーレリー王妃様は、元平民でありながら、その美貌と魔法の才能で王様に見初められた凄い方なのよ!」
「お前、そんな事も知らないで、ここにいるのかよ。」
「えっと、すみません。僕、田舎の出で。」
蔑むような目で見られながらも、私は低姿勢で大人しくやり過ごす。
「これだから、私、孤児は嫌だって言ったのよ!もう、貴方、この話は辞退しなさい!」
黒髪の少女が私の腕を引いて、強引に部屋から追い出そうとする。
しかしその時、ゆっくりとドアが開いた。
「あらあら、喧嘩はいけないわよ?貴方達は、大切な子達なのだから仲良くね?」
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「あ、ああ、王妃様...。」
子供達が、ぎこちなくも必死に礼を執る。
「ふふ、みんな頭を上げて。その可愛い顔を見せてちょうだい。」
顔を上げると、オーレリー王妃と目が合った。
もう四十過ぎとは思えないほど、美しい妖艶な女性だった。胸元を大きく開けたドレスがよく似合っている。
王妃は子供達を見回すと、その真っ赤な唇の端を上げて微笑んだ。
「さあ、可愛い子供達!特別な場所へ連れて行ってあげる。いらっしゃいな。」
「「「はい、王妃様!」」」
子供達が王妃を囲んで、嬉しそうにはしゃいでいた。
「あ、でも、王妃様!この子はダメです!だって汚い孤児なんですよ!王妃様の側に置いておけません!それに、王妃様の事も馬鹿にしていて...私、そんな子、絶対に赦せません!」
黒髪の少女が突然、私を指差して糾弾した。それに周りの子達も賛同している。
「まあ、貴女は私を守ってくれるのね。可愛い子、貴女のお名前は?」
「わ、私は、エリンです!」
「ふふ、エリン、ありがとう。でも、私はみんなと仲良くして欲しいわ。たとえ孤児でもね。出来るかしら?」
「は、はい!王妃様のためなら。」
「良い子ね。みんなもよ?」
「「「はい!」」」
「ふふ、じゃあ行きましょうね。」
オーレリー王妃がこちらに背を向ける直前、一瞬だけ私と目が合った。その目は冷たく、はっきりと嫌悪感が浮かんでいた。
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