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「もう良い!アルト家への処罰は、使者の受け入れが終わり次第決める!良いな!」
ニセン国王からの手紙を握りしめ、陛下は謁見室から出て行った。



「リル、さあ帰るよ。こんな所、長居したくないしね。」

「そうね!凄く不愉快だわ!」
お父様とお母様が、まだ人が残る謁見室で堂々と嫌みを言った。
不敬なと、呟く声は上がっているけれど、直接言ってくる人はいない。


「リル!」

そこへ今は聞きたくない声が聞こえた。


「ああ、さっきも言ったけど、今後一切リルには関わらないでね。」
お父様は無表情でウィルに告げる。
その間、私はウィルに背を向けていた。私にはもう話す事はない。
必死で掴んでいた希望の糸は、さっき無惨にも切れてしまった。支えを失うってこんなにも不安になるのね。

お母様が心配そうに、私を抱き寄せてくれた。



その時、謁見室に鋭く重い魔力が流れる。


「お疲れー!遅いから迎えに来たよ!怠い話終わった?」
唐突にルーイ先生が空間の切れ目から飛び出してきた。


「なぜ、グランディス殿が?」

「しかもあの姿!噂は本当だったのか!」

周りからは口々に驚きの声が上がる。


ルーイ先生はローブの下に、アルトの騎士服を着ていた。
これは元主席宮廷魔法士がアルトについたとみられたはず。お父様は知っていたのだろうか。
チラッとお父様を見ると全く動揺していない。


「ウィルフレイ様!」
声を張り上げたダリア様が、壇上から駆け降りて、ウィルの腕に抱きついた。


「リルメリア様!どうしてですか!?ウィルフレイ様が可哀想です!」

この声を聞くと溜息が出る。
もうダリア様に合わせなくてもいいだろうか。


「あのね、君、そんな事しても無駄だよ?」
ツカツカとブーツの踵を鳴らしてルーイ先生がダリア様の前で止まる。


「君はね、彼とは結ばれないよ?知らないの?王族の血が濃い者通しは、子供ができないの。今までだって、王家は血が近しい家とは婚姻を結んでないでしょ?だから陛下は、君に彼との婚約を勧めないでしょ?それはそうだよね。どちらにも後継は必要だもん。特に、君の特異体質が次代にも受け継がれることを陛下は熱望してる。だから子供が作れない君達が結婚することを、陛下が許すはずないでしょ?」


「え?でも、そんなこと...だって。」
ダリア様は、ルーイ先生が何を言っているのか理解出来ていないようだった。


「グランディス!」
宰相が慌てたようにルーイ先生を叱責する。


「なぜお前がここにいる⁈」

「はいはい。もう帰るよ。宰相もさ、ちゃんとお姫様に教えてあげなきゃー。変に希望持っちゃってるよ、この子。」

「な⁈」

「君ももうちょっと王族とは何かを勉強しなきゃダメだよー。」
ルーイ先生は満足したのか、私達の下に戻ってきた。


「さあ、帰ろう!」
宰相の制止を無視して、ルーイ先生と転移魔法を掛ける。

ウィルは混乱しているダリア様を放置して、ずっと私を見ていた。
ウィルと目を合わせなかった私は、ウィルの瞳に宿る悲しみに気が付かなかった。








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