下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

ハルイロ

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「お久しぶりです、アルト嬢。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」

「いいえ、リークロン卿。辺境の森で魔物を討伐されていたと聞きました。お怪我はありませんでしたか?」

「貴女はお優しいですね。私は大丈夫ですよ。これからは私も貴女の護衛に加わりますので、よろしくお願いします。」
そう言ってリークロン卿は、右手を私に差し出してきた。私が判断を迷っていると、その手をゲイツ様が退ける。


「勝手に決められても困るんだが、ジョーゼル?」

「セイルース隊長...」

「ルード卿達が魔物の調査を終えた後、招火の儀を執り行う。ジョーゼルは教会へ行き、周辺の調査と警備を。」

「畏まりました。」
アルバス様の命令を受けて、リークロン卿は部屋を出て行った。


「ふう。」
私から少し大きめの溜息が出る。


「リルメリア嬢、おそらく招火の儀は3日後ぐらいになると思う。大分証拠は集まってきたからね。大丈夫?辛いならいつでもこの件から降りてもいいからね。」

「はい、お気遣いありがとうございます。でも私も最後まで見届けます。」




マーデアンを尋問したあの夜、私に代わりアルバス様達が彼女から色々と聞き出していた。
けれど、彼女が持つ情報は末端に過ぎず、子供達の行方やサンクティーの入手ルートなどは分からなかった。
今は、黒翼を中心にそれぞれ調査を行っている。
ルーイ先生を乗せたアルト商会の船も昨夜出発した。



マーデアンが言っていた魔法の薬という言葉を思い出しながら、私は目の前に置いた瓶に触れる。

「この薬を調べました。これには一つの植物の粉末しか確認できませんでした。魔法すらかかっていません。」
私はハンカチに包まれた一輪の花を瓶の横に置いた。


「この薬を時間の回帰魔法を使って原料に戻しました。それがこの花です。」

白い小さな一輪の花。リングドン領の妖精の森で見たあの花によく似ていた。


「うん、間違いなくサンクティーだね。」
アルバス様はそう言うとすぐに、その花を燃やしてしまった。
あっという間に燃え尽きた花は、塵になって空気に溶けていった。



それから2日後、黒翼から報告が入った。行方不明の子供達とされる魔鉱石の一部が見つかったと。
それは私にとって絶望的な報告だった。







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