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 ゲイツ様は自分に割り当てられた部屋に入ると、壊れ物を扱うように私をソファに降ろした。


「あの、ゲイツ様?」
ゲイツ様を見上げると、その逞しい腕に抱き寄せられる。スモーキーな大人の香りに包まれ、一切の思考が止まった。


「私の女神。貴女を泣かせたのは誰ですか?」

「ち、違うんです。これはびっくりしただけで。」
私はゲイツ様の腕の中で、必死に言い訳をする。
ゲイツ様の腕に力が入り、私の顔が彼の胸に押しつけられた。ゲイツ様の少しだけ速い鼓動が私の耳の奥に響く。


「ゲイツ様、私は大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」
私はここから出たい一心で、ゲイツ様の胸を強く押す。けれど、びくともしない。


「次は必ず私に声をかけてください。私は貴女の1番の騎士でありたい。」

ゲイツ様の手が、私の頭をゆっくり撫でる。その手があまりにも優しくて、私は恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうだった。




「おい!ゲイツ!」
ドアの外で騒がしい声が聞こえた。

私が顔を上げてそちらを窺うと、ゲイツ様は私の頬に触れて、少しだけ強引に自分の方へと引き戻す。


「大丈夫です。結界を張りましたので、この部屋には誰も入れません。私達だけです。ほら、これを覚えていますか?」

ゲイツ様の胸元には、私がゲイツ様達を助けた時に渡した結界魔道具が淡い光を放っていた。


「私は、あの日を1日たりとも忘れたことはありません。」
ゲイツ様は愛おしそうに私の頬に触れている。
しっかりと抱えられた私の体は身動き一つ取れない。でもさすがにこれ以上はダメだ。

何とか穏便に、ここから出る方法はないだろうか。そう考えていると、部屋の中央に僅かな魔力の揺らぎを感じた。
それは少しずつ大きくなって、空気がピリピリと私の肌を刺激する。



「ダメだよ。うちの子はそろそろ返してね。」

空間を大きく切り裂いて、ルーイ先生が静かに現れた。
宮廷魔法士の長いローブを纏い、手には今まで見たことのない杖が握られている。

普段は見せないルーイ先生の圧倒的な魔力。その存在がこの空間を完全に支配していた。

私の体が恐怖で震える。そんな私を安心させるかのように、ルーイ先生はにっこりと笑った。




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