96 / 308
3-8
しおりを挟む
ウィルと私は侍女の案内で、王宮の廊下を歩いている。ここは、王族のプライベートな場所。静まり返ったこの場所に、自然と背筋が伸びる。
所々に配置された騎士達の前を通り過ぎ、百合の花が刻まれたドアの前で止まる。
「失礼いたします。リングドン子爵子息様とアルト子爵令嬢様をお連れしました。」
部屋に入ると、侍女と共に頭を下げる。
「ウィルフレイ君、リルメリア嬢、パーティの最中に呼んでしまってすまないね。」
私達が案内された部屋は王族のサロンだった。家具の細部に至るまで、美術品のような彫り細工が施され、触るのが怖い。
足元の絨毯には金糸や銀糸が使われ、カーテンは金よりも高く取引されているシルクレースだった。
壁に掛かっている絵画を見ても、この部屋自体が宝物庫のような豪華さだった。
私は勧められたソファに、浅く座ることしか出来ない。
「殿下、何かありましたか?」
「この子を2人に紹介したくてね。」
第2王子の隣にはダリア王女が恥ずかしそうに座っていた。
「ダリアは君達と同じ15歳なんだ。ぜひ友達になってあげてほしいんだよ。」
「大変光栄ですが、なぜ私達なのでしょうか?リルメリアはともかく、私は下位貴族ですので、王女殿下の友人には役不足かと。」
「ダリアはアルグリア学院に通うことになってね。私は公務もあるから毎日通うことは出来ないし、君達にダリアのことを頼みたいんだ。」
ダリア王女は半年前、母親の元王女を病で亡くし、教会に身を寄せていた。そこで、王族のみが扱える浄化の炎を発現させたため、王家で引き取られることになった。
ダリア王女は、幼い頃に父親が行方不明になり、ずっと辺境の田舎町で母親と生きてきた。
貧しい生活の中でまともな教育は受けられず、出来るのは読み書き程度。マナーは母親から厳しく躾けられたため、基礎的な事は問題ないそうだ。
でも、この状態でどうして実力主義のアルグリア学院側が入学を許可したのか疑問だった。
しかも編入先は私達の第5学年。最終学年進級試験に挑む私達の魔法の実力は、既に一般的な魔法士クラスだ。そこに魔法を発現したばかりの子が、ついていけるのだろうか。
「王族の浄化魔法は、この国には、なくてはならないものだからね。特別に学院長が許可してくれたんだ。だからダリアも私達のクラスメイトになるからよろしくね。」
「そうですか。ダリア王女殿下、これからよろしくお願いいたします。ぜひ、私のことはリルメリアとお呼び下さい。」
「あっはい。よろしくお願いします。」
ダリア王女はすごい勢いで頭を下げた。
「殿下、私達に頭を下げてはいけませんよ。」
私はダリア王女の前に跪き、彼女の手を握る。
「ダリア、リルメリア嬢は優しく聡明なレディだ。彼女から色々学びなさい。ウィルフレイ君もよろしくね。」
「畏まりました。」
ウィルが私を立たせると、王妃様の侍女がダリア王女を迎えにきた。
ダリア王女は俯いたままサロンから出て行った。
所々に配置された騎士達の前を通り過ぎ、百合の花が刻まれたドアの前で止まる。
「失礼いたします。リングドン子爵子息様とアルト子爵令嬢様をお連れしました。」
部屋に入ると、侍女と共に頭を下げる。
「ウィルフレイ君、リルメリア嬢、パーティの最中に呼んでしまってすまないね。」
私達が案内された部屋は王族のサロンだった。家具の細部に至るまで、美術品のような彫り細工が施され、触るのが怖い。
足元の絨毯には金糸や銀糸が使われ、カーテンは金よりも高く取引されているシルクレースだった。
壁に掛かっている絵画を見ても、この部屋自体が宝物庫のような豪華さだった。
私は勧められたソファに、浅く座ることしか出来ない。
「殿下、何かありましたか?」
「この子を2人に紹介したくてね。」
第2王子の隣にはダリア王女が恥ずかしそうに座っていた。
「ダリアは君達と同じ15歳なんだ。ぜひ友達になってあげてほしいんだよ。」
「大変光栄ですが、なぜ私達なのでしょうか?リルメリアはともかく、私は下位貴族ですので、王女殿下の友人には役不足かと。」
「ダリアはアルグリア学院に通うことになってね。私は公務もあるから毎日通うことは出来ないし、君達にダリアのことを頼みたいんだ。」
ダリア王女は半年前、母親の元王女を病で亡くし、教会に身を寄せていた。そこで、王族のみが扱える浄化の炎を発現させたため、王家で引き取られることになった。
ダリア王女は、幼い頃に父親が行方不明になり、ずっと辺境の田舎町で母親と生きてきた。
貧しい生活の中でまともな教育は受けられず、出来るのは読み書き程度。マナーは母親から厳しく躾けられたため、基礎的な事は問題ないそうだ。
でも、この状態でどうして実力主義のアルグリア学院側が入学を許可したのか疑問だった。
しかも編入先は私達の第5学年。最終学年進級試験に挑む私達の魔法の実力は、既に一般的な魔法士クラスだ。そこに魔法を発現したばかりの子が、ついていけるのだろうか。
「王族の浄化魔法は、この国には、なくてはならないものだからね。特別に学院長が許可してくれたんだ。だからダリアも私達のクラスメイトになるからよろしくね。」
「そうですか。ダリア王女殿下、これからよろしくお願いいたします。ぜひ、私のことはリルメリアとお呼び下さい。」
「あっはい。よろしくお願いします。」
ダリア王女はすごい勢いで頭を下げた。
「殿下、私達に頭を下げてはいけませんよ。」
私はダリア王女の前に跪き、彼女の手を握る。
「ダリア、リルメリア嬢は優しく聡明なレディだ。彼女から色々学びなさい。ウィルフレイ君もよろしくね。」
「畏まりました。」
ウィルが私を立たせると、王妃様の侍女がダリア王女を迎えにきた。
ダリア王女は俯いたままサロンから出て行った。
3
お気に入りに追加
439
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません
真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
継母と妹に家を乗っ取られたので、魔法都市で新しい人生始めます!
桜あげは
恋愛
父の後妻と腹違いの妹のせいで、肩身の狭い生活を強いられているアメリー。
美人の妹に惚れている婚約者からも、早々に婚約破棄を宣言されてしまう。
そんな中、国で一番の魔法学校から妹にスカウトが来た。彼女には特別な魔法の才能があるのだとか。
妹を心配した周囲の命令で、魔法に無縁のアメリーまで学校へ裏口入学させられる。
後ろめたい、お金がない、才能もない三重苦。
だが、学校の魔力測定で、アメリーの中に眠っていた膨大な量の魔力が目覚め……!?
不思議な魔法都市で、新しい仲間と新しい人生を始めます!
チートな力を持て余しつつ、マイペースな魔法都市スローライフ♪
書籍になりました。好評発売中です♪
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる