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 深い青の瞳を持つ中性的な美貌の青年が、小さな花束を持って微笑んでいる。彼のブロンドの長い髪が風に靡き、光に溶け込んでいるように見えた。

「やあ、気持ちの良い午後だね。私も一緒に過ごしても良いかな?アルベルティーナ嬢、リルメリア嬢。」


はあ。私は心の中で溜息を吐いてから笑顔を作る。

「第2王子殿下、ご挨拶申し上げます。」
ティーナに続いて私も頭を下げる。

「ああ、堅苦しい挨拶は無しだよ。私も同じクラスメイトなんだから。そうだ。リルメリア嬢、これを受け取ってくれるかな?この花を見たら貴女の顔が浮かんだんだ。」

「ありがとうございます、殿下。」

「リルメリア嬢、アルバスだよ。」

「いえ、私には恐れ多すぎて。」


 学期半ばの中途半端な時期に、我が国の第2王子がアルグリア学院に転校してきた。身分を問わず、優秀な学生と交流を持ちたいとの名目で。なぜか魔法科に。
魔法科第5学年の私は第2王子とクラスメイトになった。


「リルメリア嬢は謙虚だね。私は貴女と仲良くなりたいのに。今度、懇意にしている貴族の家のパーティがあるんだけど、一緒にどうかな?」

最近の私の悩みがこれだ。麗しの王子様のアピールがすごい。王家はアルト家との繋がりを狙っているのだろう。私に婚約者がいても関係ないらしい。

「殿下、私は...」

「申し訳ありません、アルバス殿下。我が婚約者は私との先約がございますので。」

私の肩に置かれた手を辿って顔を上げると、ウィルが第2王子に冷ややかな視線を送っていた。
この2人って似た色を持っているからか、どことなく似ているのよね。 

「お迎えが来たようね。リル、また明日ね。」

「ええ、楽しかったわ。ティーナ、またね。殿下、お花ありがとうございました。本日は失礼いたします。」

「うん。また明日ね。」

私達は第2王子に頭を下げ、足早にその場を去った。




「リル、その花捨てていい?」

「でもこれ王宮の薔薇よ。粗末に扱ったら問題になっちゃうわ。」
ウィルは私から花束を受け取るとすぐに従者に押し付けた。

「それ教会に寄付しといて。」

「畏まりました。」
高貴な花を押し付けられた従者は恐縮しながらそれを受け取った。可哀想に。


ウィルの手を借りて馬車へ乗り込むと、すかさず抱きしめられた。

「はあ、本当に腹が立つ。リルは私のなのに。」

「もちろんよ。約束したでしょう?」
私はウィルの背中をあやすように軽く叩く。
ウィルの深い深い溜息が私の耳をくすぐった。

この5年、ウィルと婚約しているにも関わらず、私の下には多くの求婚の手紙が届き続けた。
陞爵の噂が流れ始めた頃からは、上位貴族からのアプローチも受けるようになった。
今まではレブロン家の後ろ盾によって上手く躱せていたけれど、王家が出てくるとなると話は変わる。

「ウィル、心配しないで。ダメなら2人で外国の支店にでも行きましょうよ。新しくお店を開くのもいいじゃない。ね?」

「うん。それもいいかもね。」

私の存在を確かめるように、ウィルの腕に力が籠る。
私はウィルが落ち着くまで背中を撫で続けた。





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