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*ウィルフレイ視点 8
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「リル、この回復薬はどこまでの怪我を治せるの?」
「ええっとね。まだ完成したばかりで実際に試した回数は少ないの。でもこの地の薬草を使って作った回復薬だから効果は保証するわ。きっとどんな怪我も治せるはずよ!」
リルの自信に満ちた笑顔に僕も釣られて笑ってしまった。
「それとウィル。これを貴方に持って行ってほしいの。」
「これは?」
リルの手の中には黒い魔鉱石の付いたペンダントがあった。
「これは、やっと完成した結界魔道具よ。」
「すごい!魔道具化に成功したんだね!」
それは元々、リルがアルベルティーナ嬢のために始めた研究だった。それをアルト商会が見事に完成させた。
結界の需要は多いにも関わらず、結界魔法を使いこなせる魔法士は圧倒的に少ない。
それを理由に現状行き詰まっている分野もある。
そんな希少な結界魔法の魔道具化は、これからの人々の生活を変える切っ掛けになるはずだ。
それを成功させたアルト商会の名も世界中に轟くことになる。
「でもリル、こんなアルト家にとって重要な物、僕には預かれないよ。」
「ウィル、これはウィルだから託すの。この魔道具なら、いざという時絶対力になってくれるわ。それにこれはチャンスなのよ?魔法騎士様が使ってくれたら良い宣伝になるでしょう?」
混乱している僕の隣で、リルは楽しそうに笑っている。その大好きな笑顔が今は少しだけ腹立たしい。
「分かった。じゃあ無事にリルの頼まれごとを終えたら僕の願いを一つ叶えて。」
「願い?いいわよ。任せて。」
「忘れちゃ駄目だよ。」
「分かったわ。そう言えば、お父様から伝言。『頑張ってね。』だって。ふふ、お父様もウィルを認めているのね。」
リル、残念だけど、それは子爵の嫌味だよ。
でもいい加減、子爵には認めてもらうつもりだ。
僕の願いはいつだって決まっているんだから。
「ルード卿よく見ていてくださいね。」
ここにいる人達に奇跡を目撃させる。それが今の僕の仕事。
僕がリルとの約束を果たす為に。
そして僕の願いを叶える為に。
僕は回復薬を騎士の傷口にゆっくりと垂らした。
大きく裂けて、血を流していた傷は見る見るうちに塞がっていく。
唖然としているルード卿達を横目に、僕はもう一つの箱から違う薬瓶を取り出す。今度はその瓶を騎士の口に当て、少しずつ流し込んだ。
僕は騎士の喉が動いたのを確認すると、残りを毒で変色した皮膚に振り掛ける。
暫くすると、爛れた皮膚は剥がれ落ち、元の正常な色へ戻っていった。まだ顔色は悪いものの、呼吸も大分安定した。もう問題無いだろう。
高揚している自分を落ち着かせながら僕は空の瓶を箱へ戻し、ルード卿へ振り返った。
「もう大丈夫ですよ。どうですか?奇跡はあったでしょう?」
ルード卿の反応を楽しむように、僕は回復薬を目の前に掲げた。
「ああ。君の言う通りだ。」
ルード卿もその周りの騎士達もただ呆然と、ベッドで眠る騎士を見ている。
「子爵、恥を忍んで頼みます。その薬をあるだけ提供していただきたい。」
ルード卿が父の前で勢いよく頭を下げた。
「何かあったのですか?」
父の問いかけにルード卿はただ、きつく拳を握りしめている。
「ウィル、どうする?」
父の鋭い視線が僕に決断を迫る。リルに託されたことは僕自身に決めさせたいのだろう。
「構いません。それが彼女の願いですから。」
「すまない。」
僕の返答に、ルード卿はやっと顔を上げた。
「ルード卿、先ずは今の状況を教えて下さい。そしてこれを。」
僕は自ら掛けていたペンダントを外し、ルード卿に託した。
「これは?魔鉱石?」
「ルード卿、その魔道具も含めて提供致します。ですが、彼女が望む時まで緘口令を敷いていただきたい。」
「彼女とは?」
「すぐに会うことになりますよ。」
僕はその問いに答えず、1通の手紙を渡した。
「一度場所を変えますか。」
父の一言に、僕達は医務室を後にした。
「ええっとね。まだ完成したばかりで実際に試した回数は少ないの。でもこの地の薬草を使って作った回復薬だから効果は保証するわ。きっとどんな怪我も治せるはずよ!」
リルの自信に満ちた笑顔に僕も釣られて笑ってしまった。
「それとウィル。これを貴方に持って行ってほしいの。」
「これは?」
リルの手の中には黒い魔鉱石の付いたペンダントがあった。
「これは、やっと完成した結界魔道具よ。」
「すごい!魔道具化に成功したんだね!」
それは元々、リルがアルベルティーナ嬢のために始めた研究だった。それをアルト商会が見事に完成させた。
結界の需要は多いにも関わらず、結界魔法を使いこなせる魔法士は圧倒的に少ない。
それを理由に現状行き詰まっている分野もある。
そんな希少な結界魔法の魔道具化は、これからの人々の生活を変える切っ掛けになるはずだ。
それを成功させたアルト商会の名も世界中に轟くことになる。
「でもリル、こんなアルト家にとって重要な物、僕には預かれないよ。」
「ウィル、これはウィルだから託すの。この魔道具なら、いざという時絶対力になってくれるわ。それにこれはチャンスなのよ?魔法騎士様が使ってくれたら良い宣伝になるでしょう?」
混乱している僕の隣で、リルは楽しそうに笑っている。その大好きな笑顔が今は少しだけ腹立たしい。
「分かった。じゃあ無事にリルの頼まれごとを終えたら僕の願いを一つ叶えて。」
「願い?いいわよ。任せて。」
「忘れちゃ駄目だよ。」
「分かったわ。そう言えば、お父様から伝言。『頑張ってね。』だって。ふふ、お父様もウィルを認めているのね。」
リル、残念だけど、それは子爵の嫌味だよ。
でもいい加減、子爵には認めてもらうつもりだ。
僕の願いはいつだって決まっているんだから。
「ルード卿よく見ていてくださいね。」
ここにいる人達に奇跡を目撃させる。それが今の僕の仕事。
僕がリルとの約束を果たす為に。
そして僕の願いを叶える為に。
僕は回復薬を騎士の傷口にゆっくりと垂らした。
大きく裂けて、血を流していた傷は見る見るうちに塞がっていく。
唖然としているルード卿達を横目に、僕はもう一つの箱から違う薬瓶を取り出す。今度はその瓶を騎士の口に当て、少しずつ流し込んだ。
僕は騎士の喉が動いたのを確認すると、残りを毒で変色した皮膚に振り掛ける。
暫くすると、爛れた皮膚は剥がれ落ち、元の正常な色へ戻っていった。まだ顔色は悪いものの、呼吸も大分安定した。もう問題無いだろう。
高揚している自分を落ち着かせながら僕は空の瓶を箱へ戻し、ルード卿へ振り返った。
「もう大丈夫ですよ。どうですか?奇跡はあったでしょう?」
ルード卿の反応を楽しむように、僕は回復薬を目の前に掲げた。
「ああ。君の言う通りだ。」
ルード卿もその周りの騎士達もただ呆然と、ベッドで眠る騎士を見ている。
「子爵、恥を忍んで頼みます。その薬をあるだけ提供していただきたい。」
ルード卿が父の前で勢いよく頭を下げた。
「何かあったのですか?」
父の問いかけにルード卿はただ、きつく拳を握りしめている。
「ウィル、どうする?」
父の鋭い視線が僕に決断を迫る。リルに託されたことは僕自身に決めさせたいのだろう。
「構いません。それが彼女の願いですから。」
「すまない。」
僕の返答に、ルード卿はやっと顔を上げた。
「ルード卿、先ずは今の状況を教えて下さい。そしてこれを。」
僕は自ら掛けていたペンダントを外し、ルード卿に託した。
「これは?魔鉱石?」
「ルード卿、その魔道具も含めて提供致します。ですが、彼女が望む時まで緘口令を敷いていただきたい。」
「彼女とは?」
「すぐに会うことになりますよ。」
僕はその問いに答えず、1通の手紙を渡した。
「一度場所を変えますか。」
父の一言に、僕達は医務室を後にした。
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