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 4日目、雲一つない晴れ渡った空に気持ちのいい風が吹いている。

「今日もいい天気。」
朝の爽やかな風に癒されながら私はお茶を楽しむ。
今日は何を読もうかな。
お茶を飲んだ後、その日に読む本を選ぶのが私の朝の日課になっていた。



ドン!ドドン!ドン!

 空気を揺らす爆発音が穏やかな朝の時間を壊した。

「またなの?」
明け方から始まったこの爆発は私の睡眠を妨げただけでなく、籠城生活の楽しみまで奪うつもりのようだ。


 光と水の融合魔法と風魔法を使い音声付きの映像を壁一杯に映す。
そこには数人の男性が薬草目掛けて火炎魔法を放つ様子が映し出された。
火力の大きさからもここに映る人達は魔法士で間違いないだろう。
魔法士の後ろには深緑のローブを着た初老の男性が難しい顔をして立っていた。

魔法士達が次々に放つ魔法によって少しずつ薬草の壁が壊れていく。


 私は窓から身を乗り出して直接魔法士達がいる方角を見た。木々の合間からは数本の煙が上がっている。
このペースでいけば、昼前にはこちらまで到達する道が出来るだろう。



「このまま一気に魔女を討伐するぞ!」
壁の映像からマリード所長の掛け声が響く。

「お父様、いけません。魔女であってもまだ子供です。まずは捕まえましょう。本邸には地下牢があったはずですわ。そこに閉じ込めてしまえば、簡単には出られないはずです。」
所長の隣でリリーさんが祈るように指を組み、必死に訴えている。
リリーさんの周りでは口々に彼女を称賛する声が上がっていた。

「リリー、子供であっても悪魔の植物を生み出せる魔女だ。危ないからここは父に任せて下がっていなさい。」

「はい、お父様。でも気をつけてくださいね。」
使用人から渡された剣をマリード所長は腰に佩く。そんな所長をリリーさんが涙に濡れた目で見つめていた。



私は思わず映像を切った。

「ふふふ。あはは。」
堪え切れず私はお腹を抱えて笑ってしまった。一度出てしまった笑いは中々治まってくれない。
一頻り笑った後、私はベッドに倒れ込んだ。


 寝転がったまま、私は今の状況を考える。
マリード所長はこの混乱の原因を私だと考えたようだ。私を魔女として討伐するつもりなのだろう。
リリーさんはまた役を変えたのか、今度は健気な心優しい少女を演じていた。


 中々面白い劇だったけれど、今からあの人達がこのお気に入りの空間に入ってくるのかと思うとすごく不愉快だった。対峙するのもめんどくさい。


どうしようかと悩んでいると、小さな光の玉が私の下に近づいてきた。

「手伝ってあげようか?」
魅力的な提案に私の心が動く。

「どうして手伝ってくれるの?」

「楽しそうだから。だから手伝ってあげる。だから何でも出来るよ。」

「じゃあ、あの人達がここまで来られないようにすることは出来る?」
今はまだマリード所長達には会いたくない。

「もちろん!願って願って!君の魔法は願いなんだよ。」

魔法は願い。理解は出来ないけれど、どこか分かる気がする。  
私は目を瞑ってただ願った。そこにほんの少しの魔力を込めて。







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