12 / 308
2ー1 学院編
しおりを挟む
今朝は侍女達に起こされる前に自然と目が覚めた。今日から私はアルグリア学院に通う。
清々しい気持ちでカーテンを開けると朝日が部屋に入ってきた。窓の外には、庭の花が春の風に揺れていた。
ノックの音が響きラナに続いてネルも入って来た。
「おはようございますリルお嬢様。随分お早いですね。」
ネルがお茶を用意してくれている間に、私は朝の準備を始める。
アルグリア学院の制服は可愛い。
濃紺を基調とした制服は、膝下丈のワンピースで、少し幅の広いプリーツスカートが大人っぽい雰囲気を作り出している。胸元には真紅のリボンタイを結び、魔法科はこの上にショート丈のマントを羽織る。マントの左胸には学院の校章が刺繍されていた。
制服を着て鏡の前で浮かれていた私にネルがドレッサーの前の椅子を引いて座るように促す。
「リルお嬢様。髪型はいかがいたしますか?」
「このリボンを付けてくれる?」
私は以前王都で買った真紅のリボンを手に取る。ウィルがくれた花束を思い出し自然と口角があがる。
ネルは私のシルバーブロンドの髪を丁寧に編み上げてハーフアップにしてくれた。
うん可愛い。
食堂に移動するとお父様がもう席に着いていて、私を待ってくれていた。
「おはようございます、お父様。お待たせしました。」
「おはよう、リル。制服よく似合ってる。早くお母様にも見せてあげたいね。」
少しゆっくり朝食を取った後、私は馬車で学院に向かった。
アルグリア学院は王都の西側、商業区に近い場所にある。商業区には商店の他に様々なギルドの本部もあり、学院とは密な関係をとっている。
私もお父様に連れられて、領地の商業ギルドに顔を出したことがあったが、受付だけでも中々面白かった。いつか本部にも行ってみたい。
馬車の窓から見える景色を眺めていると、あっという間に学院に着いた。
学院は私が思っていた以上に広かった。魔法科の生徒は全学年50人程だと聞いていたので、あまり広くはないだろうと甘く見ていた。目印になるようなものは無く、似たような作りの建物が並ぶ中で私達は完全に迷子になってしまった。
一緒に来たラナにも分からないだろう。
私達はとりあえず真っ直ぐ、正面の建物へ進むことにした。
そんな時横から声を掛けられた。
「やっほー。待ってたよー。リルメリア・アルトさん。」
横から声を掛けてきた男性は満面の笑みを浮かべ、両手を広げている。
え?さすがにイケメンでも知らない男性の胸に飛び込んだりしませんよ。
ラナは警戒して私を庇うように前に出る。
「あれ?警戒されちゃった?僕はルーイ。これからルーイ先生って呼んでね。ルーイ師匠でもいいよ。この学院では君の先生になるから。よろしくねー。」
すごい軽い人だな。先生と自称しているが、信用できない。ラナも全く警戒を解かない。
「いやいや。ほら!証拠!」
そう言って自称先生は学院の印章が入った身分証を大袈裟に見せる。
私の前にいるラナが困惑しながら私を見た。うん、気持ちは分かる。
どうしようかと思っていると、今度は後ろから声を掛けられた。
「あっリル!良かった。会えたね。」
振り返ると学院の制服を来たウィルが笑顔でこちらに向かって歩いてきた。
あまりの格好良さに思考が止まる。顔が熱い。
この制服ってウィルのためにデザインされたんじゃないだろうか。朝、自分の制服姿を可愛いなんて思ってしまったけれど烏滸がましかったかもしれない。
「リル。制服凄く似合ってるね。可愛い。」
褒められて益々顔が赤くなってしまった。
「ウィルも凄い素敵.....」
やっとの思いで声を出したけれど、下を向きながら言ったからちゃんと聞こえただろうか。
「リル。何かあったの?もう教室には行ってみた?」
軽く深呼吸して少しでも自分を落ち着かせる。
「今から行こうと思ってたんだけど、どこに行けばいいか分からなくて困ってたんだ。」
「なら会えて良かった。一緒に教室に行こう。」
そう言ってウィルは私に手を差し出してきた。
繋がれた手がすごく熱く感じる。
私たちはウィルのエスコートで教室に向かって歩き出した。
何か忘れている気がするけれど、今の私には他の事を考える余裕がなかった。
「あれーー?僕はーー?」
後ろから誰かの声が聞こえたような気がした。
清々しい気持ちでカーテンを開けると朝日が部屋に入ってきた。窓の外には、庭の花が春の風に揺れていた。
ノックの音が響きラナに続いてネルも入って来た。
「おはようございますリルお嬢様。随分お早いですね。」
ネルがお茶を用意してくれている間に、私は朝の準備を始める。
アルグリア学院の制服は可愛い。
濃紺を基調とした制服は、膝下丈のワンピースで、少し幅の広いプリーツスカートが大人っぽい雰囲気を作り出している。胸元には真紅のリボンタイを結び、魔法科はこの上にショート丈のマントを羽織る。マントの左胸には学院の校章が刺繍されていた。
制服を着て鏡の前で浮かれていた私にネルがドレッサーの前の椅子を引いて座るように促す。
「リルお嬢様。髪型はいかがいたしますか?」
「このリボンを付けてくれる?」
私は以前王都で買った真紅のリボンを手に取る。ウィルがくれた花束を思い出し自然と口角があがる。
ネルは私のシルバーブロンドの髪を丁寧に編み上げてハーフアップにしてくれた。
うん可愛い。
食堂に移動するとお父様がもう席に着いていて、私を待ってくれていた。
「おはようございます、お父様。お待たせしました。」
「おはよう、リル。制服よく似合ってる。早くお母様にも見せてあげたいね。」
少しゆっくり朝食を取った後、私は馬車で学院に向かった。
アルグリア学院は王都の西側、商業区に近い場所にある。商業区には商店の他に様々なギルドの本部もあり、学院とは密な関係をとっている。
私もお父様に連れられて、領地の商業ギルドに顔を出したことがあったが、受付だけでも中々面白かった。いつか本部にも行ってみたい。
馬車の窓から見える景色を眺めていると、あっという間に学院に着いた。
学院は私が思っていた以上に広かった。魔法科の生徒は全学年50人程だと聞いていたので、あまり広くはないだろうと甘く見ていた。目印になるようなものは無く、似たような作りの建物が並ぶ中で私達は完全に迷子になってしまった。
一緒に来たラナにも分からないだろう。
私達はとりあえず真っ直ぐ、正面の建物へ進むことにした。
そんな時横から声を掛けられた。
「やっほー。待ってたよー。リルメリア・アルトさん。」
横から声を掛けてきた男性は満面の笑みを浮かべ、両手を広げている。
え?さすがにイケメンでも知らない男性の胸に飛び込んだりしませんよ。
ラナは警戒して私を庇うように前に出る。
「あれ?警戒されちゃった?僕はルーイ。これからルーイ先生って呼んでね。ルーイ師匠でもいいよ。この学院では君の先生になるから。よろしくねー。」
すごい軽い人だな。先生と自称しているが、信用できない。ラナも全く警戒を解かない。
「いやいや。ほら!証拠!」
そう言って自称先生は学院の印章が入った身分証を大袈裟に見せる。
私の前にいるラナが困惑しながら私を見た。うん、気持ちは分かる。
どうしようかと思っていると、今度は後ろから声を掛けられた。
「あっリル!良かった。会えたね。」
振り返ると学院の制服を来たウィルが笑顔でこちらに向かって歩いてきた。
あまりの格好良さに思考が止まる。顔が熱い。
この制服ってウィルのためにデザインされたんじゃないだろうか。朝、自分の制服姿を可愛いなんて思ってしまったけれど烏滸がましかったかもしれない。
「リル。制服凄く似合ってるね。可愛い。」
褒められて益々顔が赤くなってしまった。
「ウィルも凄い素敵.....」
やっとの思いで声を出したけれど、下を向きながら言ったからちゃんと聞こえただろうか。
「リル。何かあったの?もう教室には行ってみた?」
軽く深呼吸して少しでも自分を落ち着かせる。
「今から行こうと思ってたんだけど、どこに行けばいいか分からなくて困ってたんだ。」
「なら会えて良かった。一緒に教室に行こう。」
そう言ってウィルは私に手を差し出してきた。
繋がれた手がすごく熱く感じる。
私たちはウィルのエスコートで教室に向かって歩き出した。
何か忘れている気がするけれど、今の私には他の事を考える余裕がなかった。
「あれーー?僕はーー?」
後ろから誰かの声が聞こえたような気がした。
19
お気に入りに追加
439
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。
橘ハルシ
恋愛
ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!
リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。
怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。
しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。
全21話(本編20話+番外編1話)です。
宝石精霊に溺愛されていますが、主の命令を聞いてくれません
真風月花
恋愛
嘘でしょう? 王女であるわたくしが婚約を破棄されるだなんて。身分違いの婚約者から、あろうことか慰謝料代わりに宝石を投げつけられたアフタル。だがその宝石には精霊が宿っていて、アフタルに「俺を選べ」と主従関係を命じる。ちゃんと命令を聞いてくれない、強引な精霊にふりまわされるアフタルが、腐敗した王家を立て直す。
継母と妹に家を乗っ取られたので、魔法都市で新しい人生始めます!
桜あげは
恋愛
父の後妻と腹違いの妹のせいで、肩身の狭い生活を強いられているアメリー。
美人の妹に惚れている婚約者からも、早々に婚約破棄を宣言されてしまう。
そんな中、国で一番の魔法学校から妹にスカウトが来た。彼女には特別な魔法の才能があるのだとか。
妹を心配した周囲の命令で、魔法に無縁のアメリーまで学校へ裏口入学させられる。
後ろめたい、お金がない、才能もない三重苦。
だが、学校の魔力測定で、アメリーの中に眠っていた膨大な量の魔力が目覚め……!?
不思議な魔法都市で、新しい仲間と新しい人生を始めます!
チートな力を持て余しつつ、マイペースな魔法都市スローライフ♪
書籍になりました。好評発売中です♪
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる