上 下
2 / 2

参入障壁 ― 卵が先か、鶏が先か ―

しおりを挟む
地域おこし協力隊としての私の勤務先は、「西都はじめる相談窓口」。
西都市への移住定住を促進するのがミッションです。

主となる具体的な業務の一つに、移住希望者の悩み事、相談事への対応があります。
先日、他県で長年農業をしている方から、西都市へ就農を伴う移住をしたいと相談がありました。関係各所との面談や、居住候補となる物件巡りをセッティングし、随行したのです。

未就学のお子さんを含む一家での移住、それも営農経験者で就農希望といえば、農業従事者の高齢化や少子化が課題である西都市にとっては、まさに理想の移住希望者、マッチ度100%!

とはならず。

農地にしても、家にしても、とにかく貸し手が圧倒的に不足しています。
「知らない人には貸せない。まずは移住して、コツコツまじめに働いて周囲の信用を得ること」
いやいやいや。そのために農地や家がまず必要なんです、って話。
卵が先か鶏が先かって話になっとるやないかーい。

ただ立場を変えれば、得体のしれない移住者に農地や家をうっかり貸して、騒動の種を地元に蒔くような真似はしたくないのも当然の考え。農地法や借地借家法の規制もあるし。
ちなみに、「貸す」ではなく「売る」であれば、多少物件は出てくるようですが、いきなり資本を投じるリスクは移住希望者側も避けたいところ。

そんなこんなで、なかなかうまくいかないのです。

移住者側も、移住に夢や希望を持ちすぎてる嫌いがありますが、ここではそれにいったん目をつぶって、せっかく土地や家が空いているのなら、「貸す」ことももう少し視野に入れてほしいって、思います。

「貸す」に抵抗があるのは、日常の中で、部外者との接点が少ないのが、心理的に影響している気がします。

例えばですけど、年に一回でいいから、農家民泊をやってみてもらえないでしょうか。そこで受け入れた家族に対してなら、次は家を貸してもいいかな、って気にはなりやすいんじゃないかと。
無口なお父さんも、一晩お酒を飲み交わして、朝には意気投合、ってなってるかもしれないですし。

そういう形でなら、ムリもないし、何よりも受け入れる側が楽しめるんじゃないかなと思います。
「〇〇さんとこに泊まりに来てたチビちゃん、可愛かったねー」
「次はあの子にとれたてのスイートコーン食べてもらいたいねー」
こんな会話が聞かれるようになれば、卵と鶏が互いに非を押し付けあうような苦しみから解放されて、鶏が卵を温め、温められた卵からヒヨコが孵るようになるんじゃないかと夢想しています。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

かえる
エッセイ・ノンフィクション
『私』の物語 『私』とは何か 『私』は私であり私なのか

英語日記

koichan
エッセイ・ノンフィクション
英語日記boyという本を実践しようと思う

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
青春
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

「45歳からの更年期」

黒子猫
エッセイ・ノンフィクション
私の身に起きた更年期のあれこれを発信していきます✨☺️

一般女性のエッセイ

エッセイ・ノンフィクション

女性は知らない男子トイレの話2

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
男子トイレで一部男どもがやらかしてる、いかがなモノか?と思われる事について

「ダブルブリッド」が私の人生に残した影響について考えてみた

よもぎ
エッセイ・ノンフィクション
電撃文庫の「ダブルブリッド」から受けた影響についてなんとなく考えてみました。

処理中です...