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水やりの章 ー キノコ誰の子サザエの子 ー
霜の衣とブロンズの上皿天秤
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オリオンが西の空に沈み、セイート遺跡群に朝が来た。
「おはようございまーす……」
ミャケは、寝ぐせだらけの頭で台所に降りてきた。ボッカとコリ神父は台所で朝食を作り、その足元ではマメシバが、固くなったパンをミルクに浸したものをピチャピチャと食んでいた。トノの姿はない。
「あれ、トノさんは?」
「まだじゃ。ちょうど今、仕上げに入ったところじゃて。邪魔しちゃいかん」
コリ神父は人数分のチーズトーストとハムステーキが乗った大皿をテーブルに置きながら、トノの研究室のある二階を指さした。
三人が朝食をムシャムシャと食べていると、やがて二階のドアが開く音がした。階段を下りてきたトノの両手には、全面にダイヤの粉を振りまいたかのように輝く白い布がかかっていた。
「ほら、イモ娘、お望みの物ができたよ」
トノは椅子に座っているミャケの後ろから、その背中に霜の衣を羽織らせると、まるでマフラーのように、首にくるくると巻き付けた。
「今年はいつもより幅を狭くして、その分長さを出してみた。短い癖っ毛のあんたに似合うように作ったつもりだよ」
「すごい! きれいです! かわいい!」
ミャケは椅子から立ち上がると、鏡の前でくるくる回ったり、衣の端の飾りつけをつまんで広げてみたり、はしゃぎ始めた。
「待ちなイモ娘、あんた寝ぐせだらけじゃないか。みっともない」
トノは引き出しから銀製の櫛を取り出すと、ミャケの寝ぐせをぐいぐいと梳かし始めた。
「痛い! 痛いですトノさん、抜けてる抜けてる」
黒い毛が数本、絡まったままの櫛を、再び引き出しに放り込むと、トノはソファにどっかと腰かけた。間髪入れず、コリ神父がコーヒーを差し出す。
「今年のは、特にうまくできたようじゃね。霜の粒がそろっていて、キメも細かい」
「アレのおかげだよ」
トノはコーヒーをすすりながら、台所の片隅を顎で指した。そこにあったのは、籠いっぱいのマッコチ・ハラカイタケである。
「よくもまあ、あんなに採ってきたね。一本あれば十分だったんじゃないかい」
「わしらも、そのつもりだったんじゃが……」
コリ神父とボッカは、顔を見合わせた。
* * *
時は、最初にマッコチ・ハラカイタケを見つけた瞬間にさかのぼる。
「このキノコは、僕も見たことがあります。生ではなくて、干したものですが。BBシティではマガリックスと呼ばれているものですね。魔法使い達に重宝されていて、品薄になっているらしいです」
「待って神父。ほら、あっちにも生えてる」
ミャケが指さした先にも、神父が鞄に入れたのと同じ、赤い頭のキノコが生えていた。しかも、それだけではなかった。
―――ぽむ、ぷふ、ぷほっ
一行の見ている目の前で、赤いキノコが点々と、まるで小道を作るように列をなして生えていく。キノコの列は深い霧に閉ざされた、沢の下流の方へと続いていた。
振り返ると、シロミ族達は姿を消していた。
ウォーン、と一声鳴いたマメシバが、キノコ小道を辿って沢を駆け下りていった。待て、とボッカは制止したが、それも聞かない。ボッカの声はむなしく山々に木霊した。
残された人間達は、その後を追うしかなかった。沢が大きく反対側に蛇行したあたりに、土砂が大量に積み重なっている。その土砂に鼻先を突っ込むようにして、マメシバは一心不乱に穴を掘っている。
「マメシバ、何やってるんだ?」
ボッカが様子をのぞき込むのとほぼ同時に、マメシバは土の中から、なにか平べったい物体を掘り出し、ボッカの足元に置いた。
「何それ。お皿?」
「鏡のようにも見えるのう」
金属とも木とも異なる素材でできている。ボッカが表面の土塊を手で払うと、その下から文字のようなものが現れた。しかし、誰にも読むことはできない。
―――『たすけてあげて』
―――『すなめさま』
―――『くるしんでる』
シロミ族の姿は見えない。胞子のメッセージだけが、川辺の石の上に浮かび上がった。
―――『おねがい、ゆうしゃさま』
* * *
「それで、これがその謎の物体なのかい」
話を聞き終わったトノは、キノコの山の中から取り出した、件の謎の物体を気味悪げに見まわしている。
「シロミ族ら、貴重なキノコを大盤振る舞いまでして、いったい勇者さんに何を期待しとるのかのう」
物体の中央には穴が開いている。トノは手で触れるのも気味が悪いとばかりに、その穴に長キセルの先を突っ込み、ボッカに突き返しながら言った。
「あんたの古巣の、BBシティの勇者ギルドに頼めば、何かわかるんじゃないのかい」
ボッカは物体を受け取りながら、頭をぼりぼりと掻いた。
「うーん。そうかもしれませんが……。高くつくでしょうね、この手の依頼は。手がかりがないから」
「勇者稼業も結局は金ってことかい」
あんたのような半野良以外はねと付け加えながら、ぷはーっ、と煙を吐き出すトノを後目に、ボッカは立ち上がると、キノコでいっぱいの籠を背負った。
「それじゃあトノさん、コリ神父、お世話になりました」
「ハナネの祭りには、わしも行くぞい。ミャケちゃんの晴れ姿、楽しみにしてるからのお」
トノとコリは、キノコ屋を開業できそうないで立ちのボッカと、霜の衣を首に巻いたままのミャケを戸口で見送った。
「さて……。あたしらの思い違いだと、いいけれどね」
トノは引き出しの中から、ミャケの毛が纏わりついた銀の櫛を取り出した。
「まさかとは思うが……。トノちゃんの呪いがかからなかったということは、可能性は否定できんからの」
コリ神父は、流し台の下の扉を開けると、ブロンズ製の上皿天秤を取り出した。
「その天秤、まだちゃんと使えるのかい? ずいぶん長いこと、砂糖やら塩やらを量ってばかりだけど」
神父は天秤をテーブルの上に置くと、中央の支柱の上端に蝋燭を取り付けた。何も言わずとも、トノが小声で呪文を唱え、それに火をつける。そして、櫛から摘み取ったミャケの髪の毛を左の皿に乗せ、右の皿には、火消し壺の中から一つまみ取り出した灰を振りまいた。先だって、ボッカ達にぶちまけたのと同じ灰である。
天秤はしばらくゆらゆらと左右に揺れていたが、やがて、左にカクンと傾いた。
「やはりのう」
コリ神父は眉間にしわを寄せ、深く息を吐き、呻いた。
「ミャケちゃんには、すでに何者かの呪いがかかっておる。クシャミの呪いがかからなかったのはそのためじゃ。強さを調べるのには時間がかかる。一体誰が……」
その時、二人の足元から、不意にワフッと声がした。
「ワン公、お前まだそこにいたのかい」
空になった皿をしつこく舐めていたために、ボッカ達に置いて行かれたのであった。
トノが玄関のドアを開けると、主人に置いていかれたと気づいたマメシバは、慌てて飛び出していった。
「……今年の祭りは、無事に迎えられるだろうかね」
鬼の窟に現れた大ムカデ、シロミ族から託された謎の物体、そしてミャケにかけられた呪い。
セイート村で何かが起きようとしている。それも、ミャケを中心に。
マメシバの巻き尻尾が、遺跡の陰に隠れて見えなくなっても、トノとコリ神父は、そのあとをいつまでも見つめていた。
― 次章へ続く ―
「おはようございまーす……」
ミャケは、寝ぐせだらけの頭で台所に降りてきた。ボッカとコリ神父は台所で朝食を作り、その足元ではマメシバが、固くなったパンをミルクに浸したものをピチャピチャと食んでいた。トノの姿はない。
「あれ、トノさんは?」
「まだじゃ。ちょうど今、仕上げに入ったところじゃて。邪魔しちゃいかん」
コリ神父は人数分のチーズトーストとハムステーキが乗った大皿をテーブルに置きながら、トノの研究室のある二階を指さした。
三人が朝食をムシャムシャと食べていると、やがて二階のドアが開く音がした。階段を下りてきたトノの両手には、全面にダイヤの粉を振りまいたかのように輝く白い布がかかっていた。
「ほら、イモ娘、お望みの物ができたよ」
トノは椅子に座っているミャケの後ろから、その背中に霜の衣を羽織らせると、まるでマフラーのように、首にくるくると巻き付けた。
「今年はいつもより幅を狭くして、その分長さを出してみた。短い癖っ毛のあんたに似合うように作ったつもりだよ」
「すごい! きれいです! かわいい!」
ミャケは椅子から立ち上がると、鏡の前でくるくる回ったり、衣の端の飾りつけをつまんで広げてみたり、はしゃぎ始めた。
「待ちなイモ娘、あんた寝ぐせだらけじゃないか。みっともない」
トノは引き出しから銀製の櫛を取り出すと、ミャケの寝ぐせをぐいぐいと梳かし始めた。
「痛い! 痛いですトノさん、抜けてる抜けてる」
黒い毛が数本、絡まったままの櫛を、再び引き出しに放り込むと、トノはソファにどっかと腰かけた。間髪入れず、コリ神父がコーヒーを差し出す。
「今年のは、特にうまくできたようじゃね。霜の粒がそろっていて、キメも細かい」
「アレのおかげだよ」
トノはコーヒーをすすりながら、台所の片隅を顎で指した。そこにあったのは、籠いっぱいのマッコチ・ハラカイタケである。
「よくもまあ、あんなに採ってきたね。一本あれば十分だったんじゃないかい」
「わしらも、そのつもりだったんじゃが……」
コリ神父とボッカは、顔を見合わせた。
* * *
時は、最初にマッコチ・ハラカイタケを見つけた瞬間にさかのぼる。
「このキノコは、僕も見たことがあります。生ではなくて、干したものですが。BBシティではマガリックスと呼ばれているものですね。魔法使い達に重宝されていて、品薄になっているらしいです」
「待って神父。ほら、あっちにも生えてる」
ミャケが指さした先にも、神父が鞄に入れたのと同じ、赤い頭のキノコが生えていた。しかも、それだけではなかった。
―――ぽむ、ぷふ、ぷほっ
一行の見ている目の前で、赤いキノコが点々と、まるで小道を作るように列をなして生えていく。キノコの列は深い霧に閉ざされた、沢の下流の方へと続いていた。
振り返ると、シロミ族達は姿を消していた。
ウォーン、と一声鳴いたマメシバが、キノコ小道を辿って沢を駆け下りていった。待て、とボッカは制止したが、それも聞かない。ボッカの声はむなしく山々に木霊した。
残された人間達は、その後を追うしかなかった。沢が大きく反対側に蛇行したあたりに、土砂が大量に積み重なっている。その土砂に鼻先を突っ込むようにして、マメシバは一心不乱に穴を掘っている。
「マメシバ、何やってるんだ?」
ボッカが様子をのぞき込むのとほぼ同時に、マメシバは土の中から、なにか平べったい物体を掘り出し、ボッカの足元に置いた。
「何それ。お皿?」
「鏡のようにも見えるのう」
金属とも木とも異なる素材でできている。ボッカが表面の土塊を手で払うと、その下から文字のようなものが現れた。しかし、誰にも読むことはできない。
―――『たすけてあげて』
―――『すなめさま』
―――『くるしんでる』
シロミ族の姿は見えない。胞子のメッセージだけが、川辺の石の上に浮かび上がった。
―――『おねがい、ゆうしゃさま』
* * *
「それで、これがその謎の物体なのかい」
話を聞き終わったトノは、キノコの山の中から取り出した、件の謎の物体を気味悪げに見まわしている。
「シロミ族ら、貴重なキノコを大盤振る舞いまでして、いったい勇者さんに何を期待しとるのかのう」
物体の中央には穴が開いている。トノは手で触れるのも気味が悪いとばかりに、その穴に長キセルの先を突っ込み、ボッカに突き返しながら言った。
「あんたの古巣の、BBシティの勇者ギルドに頼めば、何かわかるんじゃないのかい」
ボッカは物体を受け取りながら、頭をぼりぼりと掻いた。
「うーん。そうかもしれませんが……。高くつくでしょうね、この手の依頼は。手がかりがないから」
「勇者稼業も結局は金ってことかい」
あんたのような半野良以外はねと付け加えながら、ぷはーっ、と煙を吐き出すトノを後目に、ボッカは立ち上がると、キノコでいっぱいの籠を背負った。
「それじゃあトノさん、コリ神父、お世話になりました」
「ハナネの祭りには、わしも行くぞい。ミャケちゃんの晴れ姿、楽しみにしてるからのお」
トノとコリは、キノコ屋を開業できそうないで立ちのボッカと、霜の衣を首に巻いたままのミャケを戸口で見送った。
「さて……。あたしらの思い違いだと、いいけれどね」
トノは引き出しの中から、ミャケの毛が纏わりついた銀の櫛を取り出した。
「まさかとは思うが……。トノちゃんの呪いがかからなかったということは、可能性は否定できんからの」
コリ神父は、流し台の下の扉を開けると、ブロンズ製の上皿天秤を取り出した。
「その天秤、まだちゃんと使えるのかい? ずいぶん長いこと、砂糖やら塩やらを量ってばかりだけど」
神父は天秤をテーブルの上に置くと、中央の支柱の上端に蝋燭を取り付けた。何も言わずとも、トノが小声で呪文を唱え、それに火をつける。そして、櫛から摘み取ったミャケの髪の毛を左の皿に乗せ、右の皿には、火消し壺の中から一つまみ取り出した灰を振りまいた。先だって、ボッカ達にぶちまけたのと同じ灰である。
天秤はしばらくゆらゆらと左右に揺れていたが、やがて、左にカクンと傾いた。
「やはりのう」
コリ神父は眉間にしわを寄せ、深く息を吐き、呻いた。
「ミャケちゃんには、すでに何者かの呪いがかかっておる。クシャミの呪いがかからなかったのはそのためじゃ。強さを調べるのには時間がかかる。一体誰が……」
その時、二人の足元から、不意にワフッと声がした。
「ワン公、お前まだそこにいたのかい」
空になった皿をしつこく舐めていたために、ボッカ達に置いて行かれたのであった。
トノが玄関のドアを開けると、主人に置いていかれたと気づいたマメシバは、慌てて飛び出していった。
「……今年の祭りは、無事に迎えられるだろうかね」
鬼の窟に現れた大ムカデ、シロミ族から託された謎の物体、そしてミャケにかけられた呪い。
セイート村で何かが起きようとしている。それも、ミャケを中心に。
マメシバの巻き尻尾が、遺跡の陰に隠れて見えなくなっても、トノとコリ神父は、そのあとをいつまでも見つめていた。
― 次章へ続く ―
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