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第4章. ワリメ大論戦

044. ワリメ絶対神説

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 新妖怪ワリメがジャパンで周知され始めて4か月が経過した今、宇宙人説にまでなってワリメ大論戦が繰り広げられているのだが、そこへ新たに〈第3の説〉と呼ぶに値する異説が超特急浮上してきた。
 ネット界隈でリアルに1番熱い〈ワリメ絶対神ぜったいしん説〉がそうである。たとえば「穴留朕歩は宇宙人に乗っ取られたのではなく、処女受胎したのだ。それで絶対神ワリメの子を産んだ。穴留朕歩は命を賭して神産かみうみをなし遂げた英雄だ!」や「絶対神はジャパンを救うべく穴留朕歩に降臨した!」などと云う突拍子もない諸説を好き勝手に作り出している。
 それらに対して「81歳のジジイがなんで処女やねん!!」とか「絶対神は唯一全能の神だろ? だったら自分の分身なんか産む必要なくね?」とか「ジャパニーズは昔から多神教推しじゃなかったっけ?」と云った反論が多いものの、それでもキーワード〈穴留朕歩の処女受胎〉がトレンド入りするほど熱く盛り上がっている。
 そして〈ワリメ絶対神〉を信仰することを至上命令として掲げる宗教法人〈ワリメ絶対神ぜったいしん学会がっかい〉が爆誕するに至った。これがワリメ歓迎党の支持団体になったことで、世間では政教分離の必要性を訴える声が多くなった。
 ちなみにワリメを神聖化した宗教法人として〈ワリメ正教せいきょう〉と云う教団が既にあるが「いかにもな教団名がストレートすぎて胡散臭い」や「教祖のことをと呼ばせている点が超ヤバい感じ」などの理由で信者は1万人に届いていない。それに対してワリメ絶対神学会の方は誕生から24時間で学会員が390万人を突破すると云う人気ぶりで、この先も大幅に増える見込みになっているとキャスターが伝えている。

 絵露井家の居間でも、このJKHのニュース番組『ニュース・ナインティーン』を助夫と吾郎と栗花が見ている。
 ワリメを神様だと思い込んでいる吾郎でも、この〈ワリメ絶対神説〉に対して慎重な姿勢を見せている。

「オレの中にあるワリメ神様しんさま様的イメージって云うのがあるんだ」
「なによそれ?」
「いやあ、なんて云うか……」

 栗花の言葉に対して、なぜか吾郎は云い淀んだ。
 そうなると助夫が、ここぞとばかりに口出しする。

「おいこら吾郎、その程度か! お前の親爺はもっと強かったぞ!」
「親爺って、筋好総理のことか?」
「違う、お前の親爺はワシだけだ!!」
「自分が強いと云いたいのかよ」
「そうだ。お前もこんなワシを見習って思ったことを男らしくスパッと云え!」
「判った、云うよ」
「さあ云え!」
「父さんがウザくてムカつく」
「おいこら吾郎、少しはオブラートに包め!」

 助夫の云うことは結局いつもと同じで支離滅裂なので、吾郎としては1秒も相手にしたくないが、このとき都合よく出前で頼んだ極上・黒毛ジャパン牛ステーキ重が届いたので、無意味な口論は終わる。
 家政婦がステーキ重やフカヒレスープや玉露茶などを配膳した。満子と四穂もそろい5人で食べることにするが、テレビではJHKの討論番組『緊急討論・ワリメ絶対神学会の実像に迫る!』が始まった。
 番組の冒頭にワリメ絶対神学会の代表・割目わりめ桃核ももさね(20歳)のインタビュー映像が流される。

『ワリメ絶対神学会はどう云う教団ですか?』
『余のワリメを、ワリメ絶対神の御徴みしるしとて、崇めたてまつり、あまつ神、くにつ神、やおよろずの神々の、御魂みたま束ねたてまつり、聞こし召さんと』
『そ、そうですか。いやあ崇高ですね』
『余のワリメを、映すかえ』
『いやいや、それはテレビ的にエヌジーですので、さすがにちょっと……』

 映像はここで終わり、司会の旭弐きょくに入造いるぞうが、ゲストコメンテイターの1人としてスタジオに列席している新自由オナニー党の党首・四里之しりの香織かおりに意見を求める。

「今のインタビューについて、どうお感じになりましたか?」
「狂っています」
「あ、率直に、ありがとうございます」

 続いて、もう1人ゲストコメンテイターとしてスタジオ入りしているワリメ歓迎党の党首・貧乳推しスペルマンが四里之に「自慰体験談で人気をえたあなたも同類ですねえ」と発言をしたことによって、2人の間で激しい論戦が始まる。
 この討論番組もまたネット界隈に大炎上を巻き起こすことになるのだ。
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