【都市伝説】新妖怪ワリメのエロ恐怖

第4章. ワリメ大論戦

043. ワリメ宇宙人説

　株式会社・淫乱いんらん春夏しゅんかが発行している週刊誌・週刊しゅうかん淫春いんしゅん、略称〈淫春〉の7月29日号（7月22日発売）に掲載された特集記事〈ワリメ宇宙人説〉が超熱い。
　発端は今月1日に起きた現職総理大臣・穴留あなる朕歩ちんぽの急死である。衆議院本会議場で倒れて心肺停止状態となった穴留は、猫の門病院へ救急搬送されたが、間もなく同病院内で死亡が確認された。その死因には不審な点が多く、遺体が第1ジャパン帝国大学へ運ばれて司法解剖が行われた。穴留の遺族は解剖を承諾したものの、遺体の引き渡しのことで大きく揉めてしまい、穴留サイドは訴えを起こす構えを見せている。
　問題になっている穴留の司法解剖に、奇病珍病研究の第1人者でペンネーム〈ドクターくすえ〉として超有名な医学博士・独田どくた楠枝くすえが立ち会っていたのだが、解剖のあった当日以降、住んでいた帝京都内のマンションから忽然と姿を消していた。その後、これは〈淫春〉の編集長と太いパイプを持っている確かな筋からえた情報によるものだが、彼女は密かにジャパンを脱出して大中華国だいちゅうかこくに逃れていたことが判明する。
　7月5日の未明、独田は大中華国版Onaniegramオナニーグラムとして知られている有料の会員制・駄文投稿サイト〈自慰じい倶楽部くらぶ〉に「独田がジャパンから逃れた驚くべき3つの理由」と云うタイトルの手記を投稿した。さらに2日が経った7月7日の正午すぎ、〈淫春〉の編集長宛てに独田から電子メールが送られてきた。そのメール本文は独田の手記と同一の文章だった。しかも「この手記を記事に使ってもいいよ」と云う追伸がつけられていたから特集記事に全文を掲載することができたのだ。

【独田がジャパンから逃れた驚くべき3つの理由】投稿者：ドクターくすえ
　独田は今月2日の午前中、穴留朕歩の司法解剖に立ち会った後、その日のうちに大中華国に逃げてきました。現在も大中華国にいます。
　逃げた恐るべき理由の1つが「身の危険」です。司法解剖に携わった他の医師たちは全員が拘束されたか命を奪われているに違いありません。
　なぜ身の危険があったのか、それこそ独田がジャパンから逃れた恐るべき理由の残り2つにそのまま該当します。1つめは「ジャパンが宇宙人に侵略されつつある」ことで、もう1つの恐るべき理由は「穴留朕歩は人型宇宙船だった」ことです。
　実は死体と化した穴留の司法解剖が始まったとき、彼の腹部が破裂して中から2本の手を持つ2本足の小さい生物が飛び出しました。身長は30センチメートルくらいでした。その容姿は、女性的な丸みを帯びた女体そのもので、ピンク色に近い肌色の素肌、大きな頭部、ペチャンコな乳房、小さいお臍が丸見え状態で、ピンクと白のストライプ模様をしたショーツを穿いていたのです。あれは世間で話題になっているワリメに違いありません。ワリメの正体は宇宙人だったのです！
　以上はジョークでもなければフェイクでもありません。恐るべき真実です。賢明な読者の方たち、どうかお信じになってください。

　この手記が投稿される前は、自慰倶楽部でドクターくすえを〈自慰友だち登録〉しているのは15人だったが、投稿から24時間で〈自慰友〉は4万人を超えて、この先もまだまだ増える見込みになっている。
　また四里之香織に殺人の疑いがかけられていると云う丸秘情報もあったにはあったが、それがどうなったのかは不明のままである。
　以上が〈淫春〉の7月29日号に掲載されている特集記事〈ワリメ宇宙人説〉の冒頭だが、この記事に関してジャパニーズがネット界隈で大大盛り上がり夏祭り開催状態に至るまでに24時間かからなかった。

　絵露井えろい家の居間では男女5人が極上・握り寿司を食べつつ、やはり今夜も大画面256型テレビスクリーンで〈WEB版・淫春〉の特集記事を閲覧しながら、家族討論会もどきをやっている。

「人型宇宙船って、なにそれ!?　アタシには意味不明だわ!!」
「前総理の体そのものが宇宙船になっていたと云う意味だよ。ほら、ここに書いてあるだろ？」

　吾郎が特集記事のページを進めて該当箇所を表示する。穴留の腹から飛び出した小型生物の容姿は吾郎が以前語った真ジャパニーズ、正式名称は〈ジャパニードールジャポニカジャポニアン弥勒菩薩みろくぼさつ大明神だいみょうじんワリメ神様しんさま〉の特徴と完全に一致している。
　解釈の違いは〈淫春〉の記事ではワリメを宇宙人とみなしている点にある。ジャパンを侵略しようとアンドロメダ大銀河からきた地球外生物がジャパニーズの体内、たとえば穴留朕歩の体内に入って精密機器を埋め込んで宇宙船化することで、ジャパン本土とジャパン上空に停留している母船との間を移動する手段としていると云うのが独田楠枝の主張する〈ワリメ宇宙人説〉だ。
　栗花は「こんなバカな話、納得できないわ」と云って理解を示さなかった。
　ワリメを神様なのだと信じている吾郎も「淫春の記事には信憑性がないなあ」などと云って、疑いを抱いている。