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第3章. 衆議院総選挙
033. どの政党に投票するか
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視聴者の少なくとも1人以上から「ムカつく」とまで云われているオバさんの顔がテレビスクリーン上に、すこぶる涼しそうな表情で映っている。
世論調査結果の説明がまだ続くのだ。
『次の衆議院議員総選挙で、どの政党に投票なさいますかと云う質問に対して「自由共生党」とお答えになった方が全体の24%、「ジャパニーズ主権党」とお答えになった方が22%、「晴明党」が8%、「社会保守党」が3%、「ジャパン火消し組」、「国民総入れ歯党」、「安久ポコチンの会」、「ワリメ歓迎党」、「あ党」がそれぞれ2%、「新妖怪ワリメからジャパニーズを救う党」が1%未満でした。「判らない、または白票を投じる、または投票に行かない」とお答えになった方と無回答は、全体の32%となりました』
今度は吾郎が辛気臭い政治評論家みたいな顔で云う。
「与党が32%で、内閣不信任決議案に賛成した野党4党が29%か。これだと選挙結果がどうなるのか、ちょっと判らないな」
「内閣不信任ってなによ? アタシには、そっちが判らないわよ」
「おいおい姉さん、それでも大学生なのか??」
吾郎が蔑むような目で見るので、栗花はムカついた。
すかさず助夫が云う。
「吾郎こそ、内閣不信任がなにか知っておるのか?」
「ああ知っているぞ! 内閣を信任しないと云うことだ!」
「吾郎、お前は間違っておる」
「はあ?」
「内閣不信任とは、内閣を不信任することなのだ」
「同じだろっ!!」
助夫が云いたかったのは「内閣不信任決議」とは別の「内閣信任決議」のことだったのが、これは過去に2回だけ可決されたことはあるくらいで、ほとんど馴染みのない決議にすぎず、しかも選挙の投票に行かない奴の発言だから説得力のなさは半端ない、と吾郎は思った。
「それはそうと、姉さんと四穂ちゃんは、投票に行くんだろ?」
「もちろん行くわよ。アタシはジャパニーズ主権党に投票するの」
「私もそうします」
「姉さんは別として、四穂ちゃんはワリメ神様様の存在を信じているんだろ?」
「信じたくないから、主権党さんに投票するんです」
ワリメと遭遇したこと、そればかりかその日に吾郎と遭遇してしまいアソコを見られたり舐められたりしたことを、これまで四穂は生涯の恥辱と思って生きてきた。そんな悲しい過去を総括したいと願う専心の日々をすごし、ようやくにして今度の衆議院議員総選挙では、ワリメを抹消するべく、その存在を否定している政党に票を投じるのだと断言する。聞いた面々に強い意志を感じさせる威圧がある。
要するに四穂は四穂なりに、重いトラウマを背負っているのだ。
「ああそうか。けど、オレは誰がなんと云おうと、自由共生党1択だ! ワリメ神様様は存在しているのだからな。あ、ちょっと待て、今夜は新月じゃないのか!!」
「もうウザいわねえ! 暑苦しい雄叫びはやめてよ。て云うか、新月だからって、それがどうしたのよ?」
「ワリメ神様様がオレと神性交しにこられる日だったんだよ! あああ――っ、そうだった! お前ら、オレの部屋の押入れに隠れて覗こうとしてただろっ!!」
吾郎の脳裏に、すこぶる強烈な閃光が走ったのだ。
ここぞとばかりに栗花が罵声を浴びせる。
「今頃になって思い出すなんて、変態にもほどがあるわ、バカのカバ吾郎」
「誰がカバやねん!」
「あんたよ」
「くそ! それよりも、お前らがしでかしたせいで、ワリメ神様様が姿をお見せにならなかった! これは大問題だぞ」
「あはは、残念だったわね、妖怪とエッチできなくて」
「笑いごとじゃない! どんな祟りがあるか判らないからな!」
「な、なによ、祟りって?」
「世にも奇妙なワリメ神様様の祟りだ」
少し怯える様子を見せ始めている栗花に、吾郎はお仕置きのつもりで説明を与えてやることに決める。
世論調査結果の説明がまだ続くのだ。
『次の衆議院議員総選挙で、どの政党に投票なさいますかと云う質問に対して「自由共生党」とお答えになった方が全体の24%、「ジャパニーズ主権党」とお答えになった方が22%、「晴明党」が8%、「社会保守党」が3%、「ジャパン火消し組」、「国民総入れ歯党」、「安久ポコチンの会」、「ワリメ歓迎党」、「あ党」がそれぞれ2%、「新妖怪ワリメからジャパニーズを救う党」が1%未満でした。「判らない、または白票を投じる、または投票に行かない」とお答えになった方と無回答は、全体の32%となりました』
今度は吾郎が辛気臭い政治評論家みたいな顔で云う。
「与党が32%で、内閣不信任決議案に賛成した野党4党が29%か。これだと選挙結果がどうなるのか、ちょっと判らないな」
「内閣不信任ってなによ? アタシには、そっちが判らないわよ」
「おいおい姉さん、それでも大学生なのか??」
吾郎が蔑むような目で見るので、栗花はムカついた。
すかさず助夫が云う。
「吾郎こそ、内閣不信任がなにか知っておるのか?」
「ああ知っているぞ! 内閣を信任しないと云うことだ!」
「吾郎、お前は間違っておる」
「はあ?」
「内閣不信任とは、内閣を不信任することなのだ」
「同じだろっ!!」
助夫が云いたかったのは「内閣不信任決議」とは別の「内閣信任決議」のことだったのが、これは過去に2回だけ可決されたことはあるくらいで、ほとんど馴染みのない決議にすぎず、しかも選挙の投票に行かない奴の発言だから説得力のなさは半端ない、と吾郎は思った。
「それはそうと、姉さんと四穂ちゃんは、投票に行くんだろ?」
「もちろん行くわよ。アタシはジャパニーズ主権党に投票するの」
「私もそうします」
「姉さんは別として、四穂ちゃんはワリメ神様様の存在を信じているんだろ?」
「信じたくないから、主権党さんに投票するんです」
ワリメと遭遇したこと、そればかりかその日に吾郎と遭遇してしまいアソコを見られたり舐められたりしたことを、これまで四穂は生涯の恥辱と思って生きてきた。そんな悲しい過去を総括したいと願う専心の日々をすごし、ようやくにして今度の衆議院議員総選挙では、ワリメを抹消するべく、その存在を否定している政党に票を投じるのだと断言する。聞いた面々に強い意志を感じさせる威圧がある。
要するに四穂は四穂なりに、重いトラウマを背負っているのだ。
「ああそうか。けど、オレは誰がなんと云おうと、自由共生党1択だ! ワリメ神様様は存在しているのだからな。あ、ちょっと待て、今夜は新月じゃないのか!!」
「もうウザいわねえ! 暑苦しい雄叫びはやめてよ。て云うか、新月だからって、それがどうしたのよ?」
「ワリメ神様様がオレと神性交しにこられる日だったんだよ! あああ――っ、そうだった! お前ら、オレの部屋の押入れに隠れて覗こうとしてただろっ!!」
吾郎の脳裏に、すこぶる強烈な閃光が走ったのだ。
ここぞとばかりに栗花が罵声を浴びせる。
「今頃になって思い出すなんて、変態にもほどがあるわ、バカのカバ吾郎」
「誰がカバやねん!」
「あんたよ」
「くそ! それよりも、お前らがしでかしたせいで、ワリメ神様様が姿をお見せにならなかった! これは大問題だぞ」
「あはは、残念だったわね、妖怪とエッチできなくて」
「笑いごとじゃない! どんな祟りがあるか判らないからな!」
「な、なによ、祟りって?」
「世にも奇妙なワリメ神様様の祟りだ」
少し怯える様子を見せ始めている栗花に、吾郎はお仕置きのつもりで説明を与えてやることに決める。
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