【都市伝説】新妖怪ワリメのエロ恐怖

第2章. 新妖怪ワリメ

025. 2択オジさん

　ワリメにまつわる社会問題も首都圏を中心に広がっている。
　事例は色々とあるのだが、その1つ〈2択オジさん〉と呼ばれる奇人が1番ホットな騒ぎになっている。
　それはパリッとした背広姿をしているけれど迷惑なオジさんだ。昼下がりの街中に現れて、小学校から下校する途中の児童たちに近づき「2択だよ。キミらはワリメが実在すると思うかい？　実在するか実在しないか、どちらかで答えてよ」と質問してくる。
　児童が「実在しない」と答えた場合、オジさんは背広のポケットから、1つずつ包装されているアメかチョコかを取り出して1つだけくれる。「実在する」と答えたり「判らない」と答えたり黙っている場合にはなにももらえず、「キミはバカだな。ワリメなんて実在しないんだよ」と叱られるそうだ。
　ご褒美のお菓子は煎餅やガムやグミの場合もあるらしい。最初に「実在する」と答えた児童が「やっぱり実在しないと思う」と云い直しても、決してお菓子はもらえず、そればかりか「オジさんは嘘つきな奴が1番嫌いなんだよ、バカ！」と怒鳴られる。
　そして、最初から「実在しない」と答えた男子には大人気のカードゲーム『幽玄実効魔導書』のレアカードを見せびらかして、「お父さんとお母さんやお爺ちゃんたちにもワリメが実在しないってことを教えて上げてよ。もしちゃんと説得してきたら、これのレアカード10枚セットで上げるよ」と云うのだ。女子にはテレビアニメで人気の『ミラクル魔法共有ペディキュア』が使っている魔法共有アイテムの〈キラめきパクト〉を見せつけて、男子に指示するのと同じことを云う。さらに巧妙な策略として、「もしオモチャがいらない子にはお金を上げるからね」と云って1000ジャパンドルの新札を1枚見せる。
　子どもたちが元気に走って自宅に帰り、母親や祖父母をちゃんと説得してから元の場所に戻ってきても、既にオジさんの姿はないのだと云う。
　この奇人は毎日場所を変えて同じことをしているのだ。

　1週間くらいが経って、複数の場所で同時に2択オジさんが出現していると云う情報が出まわってきた。警察にも多数の被害届が出されるようになった。
　新バージョンの2択オジさんは、ヨレヨレの背広を着ていて下は赤いジャージで、おつまみイカの匂いを200倍濃縮した強烈な悪臭を放っている。言葉使いも乱雑になっていて「お前らはワリメが実在すると思ってるのか！　実在するかしないか2択で答えろ！」とわめいてくるのだ。
　児童は臭いのと怖いのとですっかり怯えてしまい「実在しません」と答えるのだった。それでもお菓子はもらえないし、もし「実在する」と答えたり黙っていたりしていると、イカの臭い匂いがする液体が染みついたボロ雑巾のようなものを鼻に押しつけられるので、とても気分が悪くなる。
　低学年や小柄な子が狙われやすく、特に女児が多く被害を受けていると云う。そのため警官がパトロールを強化するようになり、保護者たちも児童の下校につきそうようになった。
　また、児童たちに2択で質問している様子の動画が各種SNS上で多数アップされている。そのことでネット界隈が大炎上ババババーンとなっているのは、もはや毎度のことだ。
　逮捕者も続出していて、中には女性や大学生まで2択オジさん姿で犯行に及んでいるのだった。
　そして、最初の出現が確認されてから10日後を迎え、ようやく初代の2択オジさんが逮捕された。帝京都内の食料品ディスカウントスーパーでお菓子の徳用袋を買うためにレジ前で並んでいるところ、通報を受けて駆けつけてきた警官が職務質問したら「はいそうです、私が2択オジさんです」と答えたのだと云う。
　その初代は帝京都議会議員の42歳男性・二桔にけつ太臓たいぞうで、野党第1党・ジャパニーズ主権党の党員でもあった。この報せを受けてインタビューに応じた党首の金珠きんたま華瑠奈けるなは「憤りを隠せずにはいられません。彼は即刻除名します」とコメントした。そしてその言葉通り二桔はその日のうちに主権党から除名処分を云い渡された。