17 / 72
第2章. 新妖怪ワリメ
017. 筋好太郎の重大発表
しおりを挟む
大迫力32Kエキシビション大画面に筋好の全身立ち姿が映し出された。
発情騒ぎの最中に用意されていた、まるでヒーローインタビューを行うのかと思えるようなお立ち台の上に筋好が上がっているのだ。その両手には、重そうなビッグサイズのマイクがガッシリと握られている。
この模様を大勢のジャパニーズに伝えるべく、テレビ帝京放送をキー局として全国50局で構成されているジャパンの視聴世帯120%をカバーできているテレビエクスペリエンスネオネットワーク、略称〈TENN〉によって、オールジャパン生中継放送が実施されており、また同系列各社のホームページからもライブ映像がオンライン配信されると云う用意周到さだ。
マウンド上お立ち台の下には、さっき逃げ去ったチンパンが戻っている。筋好からは指1本すら触れられなかったと云うのに、彼女の着ているTシャツが破れてしまって薄黄色の透け透けブラジャーが少しだけ見えている。そんなテレ帝のエロ度No.1美人アナの背後では、黒を基調とした制服姿のアンパイアが4人で横1列を作り、両手を後ろに組む姿勢の直立不動状態となって身構えている。
チンパンも手にミドルサイズのマイクを持っているのだが、小さい体で小顔の彼女が持つと、とてもビッグなサイズに見える。観客席にいる男たちの大半とテレビ画面やスマホ画面を見ている大勢の男たちが、彼女の姿に萌えているのに決まっている。
そんな中、エキシビション大画面に筋好の顔がアップで映されて、鼻毛の1本までもがクリアに明瞭ではっきりクッキリよく見える。まさに大迫力だ。彼は沈痛に満ちた表情をして数秒間の沈黙を貫く。
観客席にいるすべてのジャパニーズも同じように無言で、筋好から発せられる言葉を待った。集まっている男たちは、今日どんなライブが行われるのかを知らないで、ここへきているのだ。MEBSの掻升にしてもその点は同様である。
絶妙な間をおいた筋好が第1声を発する。
「ワシは、ハメられたのじゃ」
「誰にハメたのでしょうか?」
「おーい、アンパイア! こんなポンコツなキャスターを退場させろ!」
「はは!」
「はい!!」
「はっ!」
「はっけよい!!」
「それは相撲の行司が云う言葉だ。がはは……ん? おい観客たち、笑え!」
この筋好と云う前総理は、たまにこのような下らないギャグで人を笑わせようとするが、いつも120%スベっていて、それにつけても懲りない老人なのだ。
なにはともあれ、チンパンはアンパイアの1人が運転するエレキカーに乗せられ、観客席にいるすべての男たちからの熱い声援、と云うか暑苦しいほどの濁声を浴びつつ、笑顔で手を振りながらマウンドから立ち去った。
こうなったからには筋好の独壇場である。まさに単独ライブなのだ。
「ワシは、ハメられたのじゃ」
エキシビション大画面にも、今の筋好の言葉が1字1句間違いなく表示された。それに続けてウグイス嬢の声で『誰にハメられたのですか?』とスタジアム中に響き渡り、その言葉も大画面に表示される。これこそが筋好の期待していた言葉の野球だったのだ。
「ワシは、妖怪に、いや正確には〈新妖怪〉にハメられたのじゃ」
この言葉に対しても、ウグイス嬢が『新妖怪とは、どのような妖怪ですか?』と質問して、それもまた大画面に表示される。
つまりこれは退場したチンパンに代わって、ウグイス嬢とエキシビションが筋好の投げる球を打つピンチヒッターになったと云うことを意味している。あらかじめ計画していた演出なのだ。
「このワシ・男1匹79歳の筋好太郎をハメた新妖怪の名前は仮名3文字だが、それを今は明かすことができない。イニシャルはダブリューだ」
『新妖怪ダブリューですか?』
「そうだ。新妖怪ダブリューに、ワシはハメられた」
『どのようにハメられたのですか?』
筋好は身の上に起こった〈ダブリュー体験〉を、これでようやく大勢のジャパニーズに向かって熱く語ることができる。先月末に2度のテレビ出演をして自らの醜態を晒したのは、ある意味において今日の単独ライブを大爆発的成功へと導く導火線だったのだ。
発情騒ぎの最中に用意されていた、まるでヒーローインタビューを行うのかと思えるようなお立ち台の上に筋好が上がっているのだ。その両手には、重そうなビッグサイズのマイクがガッシリと握られている。
この模様を大勢のジャパニーズに伝えるべく、テレビ帝京放送をキー局として全国50局で構成されているジャパンの視聴世帯120%をカバーできているテレビエクスペリエンスネオネットワーク、略称〈TENN〉によって、オールジャパン生中継放送が実施されており、また同系列各社のホームページからもライブ映像がオンライン配信されると云う用意周到さだ。
マウンド上お立ち台の下には、さっき逃げ去ったチンパンが戻っている。筋好からは指1本すら触れられなかったと云うのに、彼女の着ているTシャツが破れてしまって薄黄色の透け透けブラジャーが少しだけ見えている。そんなテレ帝のエロ度No.1美人アナの背後では、黒を基調とした制服姿のアンパイアが4人で横1列を作り、両手を後ろに組む姿勢の直立不動状態となって身構えている。
チンパンも手にミドルサイズのマイクを持っているのだが、小さい体で小顔の彼女が持つと、とてもビッグなサイズに見える。観客席にいる男たちの大半とテレビ画面やスマホ画面を見ている大勢の男たちが、彼女の姿に萌えているのに決まっている。
そんな中、エキシビション大画面に筋好の顔がアップで映されて、鼻毛の1本までもがクリアに明瞭ではっきりクッキリよく見える。まさに大迫力だ。彼は沈痛に満ちた表情をして数秒間の沈黙を貫く。
観客席にいるすべてのジャパニーズも同じように無言で、筋好から発せられる言葉を待った。集まっている男たちは、今日どんなライブが行われるのかを知らないで、ここへきているのだ。MEBSの掻升にしてもその点は同様である。
絶妙な間をおいた筋好が第1声を発する。
「ワシは、ハメられたのじゃ」
「誰にハメたのでしょうか?」
「おーい、アンパイア! こんなポンコツなキャスターを退場させろ!」
「はは!」
「はい!!」
「はっ!」
「はっけよい!!」
「それは相撲の行司が云う言葉だ。がはは……ん? おい観客たち、笑え!」
この筋好と云う前総理は、たまにこのような下らないギャグで人を笑わせようとするが、いつも120%スベっていて、それにつけても懲りない老人なのだ。
なにはともあれ、チンパンはアンパイアの1人が運転するエレキカーに乗せられ、観客席にいるすべての男たちからの熱い声援、と云うか暑苦しいほどの濁声を浴びつつ、笑顔で手を振りながらマウンドから立ち去った。
こうなったからには筋好の独壇場である。まさに単独ライブなのだ。
「ワシは、ハメられたのじゃ」
エキシビション大画面にも、今の筋好の言葉が1字1句間違いなく表示された。それに続けてウグイス嬢の声で『誰にハメられたのですか?』とスタジアム中に響き渡り、その言葉も大画面に表示される。これこそが筋好の期待していた言葉の野球だったのだ。
「ワシは、妖怪に、いや正確には〈新妖怪〉にハメられたのじゃ」
この言葉に対しても、ウグイス嬢が『新妖怪とは、どのような妖怪ですか?』と質問して、それもまた大画面に表示される。
つまりこれは退場したチンパンに代わって、ウグイス嬢とエキシビションが筋好の投げる球を打つピンチヒッターになったと云うことを意味している。あらかじめ計画していた演出なのだ。
「このワシ・男1匹79歳の筋好太郎をハメた新妖怪の名前は仮名3文字だが、それを今は明かすことができない。イニシャルはダブリューだ」
『新妖怪ダブリューですか?』
「そうだ。新妖怪ダブリューに、ワシはハメられた」
『どのようにハメられたのですか?』
筋好は身の上に起こった〈ダブリュー体験〉を、これでようやく大勢のジャパニーズに向かって熱く語ることができる。先月末に2度のテレビ出演をして自らの醜態を晒したのは、ある意味において今日の単独ライブを大爆発的成功へと導く導火線だったのだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる