39 / 61
下拵えC⑧
しおりを挟む
王宮に到着すると、ずらりと行列を作る馬車にエミリアとクロエはポカンと口を大きく開ける。
「何これ、国中の貴族が集まってるわけ?」
ポツリと呟いたエミリアの言葉に、アーノルトはほとんどの貴族家の当主夫妻と子供が参加していると答えた。
「やっぱり! お貴族様なんてあんまりいないのに、この数はおかしいと思ったのよ。それにしても、こんなにいるとあたしたちの番までどれだけ待たされるのかしら」
エミリアが遠くに見える建物を見ながら言う。
だが、本来ならこの時間に公爵家の馬車が到着している方が異例なのだ。
入場の時間調整ということで、下位貴族は早めに到着し高位貴族は遅めに到着することが暗黙のルール。
伯爵家が揃う時間よりも早くに到着していながら、「待たされる」と言われてはかなわない。
「こんな時、公爵家の特権とかでどうにかならないの?」
「普段はもっと数が少ないんだが」
アーノルトははやる気持ちを押さえられないエミリアたちのおねだりによって、予定時刻よりも早めに出発したことを忘れて首をかしげる。
そんな時、横を別の馬車が通過していき、列を離れ別の出入り口から中に入ったのを見たクロエが、「なにあれ!」と叫んだ。
「あれは、アインバッハ公爵家の馬車か」
忌々しそうに言ったアーノルトの横でクロエは「並ばないなんてずるい!」と文句を言う。
エミリアも「なんで並ばないの?」と不思議そうに首をかしげた。
「あいつが乗ってるんだろうな。カイル殿下の婚約者だから先に顔を合わせておくんだろう」
アーノルトの言葉に「何それ!」とエミリアが叫んだ。
「ずるい! 婚約者だからってそんな贔屓ってありなの!?」
「婚約者同士が揃って登場するのも珍しいことじゃない」
言外に列を追い越していくのはありだというアーノルト。
エミリアは「ずるい」と機嫌を悪くする。
「実の家族がここで順番待ちをしているのに自分だけ先に行くなんて、ララスティさんは薄情ね」
クロエは呆れたように言いながら、のろのろと進む列を見て息をついた。
一時間後、やっと建物の中に入ることができたエミリアたちは、早速会場に移動する。
中には下位貴族や伯爵家の者しかおらず、通常より早く入場したアーノルトたちに視線を向ける。
「なんか見られてるよね?」
「エミリアの社交デビューだからな。見慣れない令嬢が気になっているんだろう」
「そっか」
アーノルトの言葉にうなずくエミリアだが、それは間違っていた。
会場にいる貴族たちはこんなに早く登場した空気を読めない行動に呆れ、ランバルト公爵家として入場しておきながら、ララスティを除外していることに憤っている。
分家の者もいるが、誰も挨拶に行かず様子を見ている。
本来なら公爵家の者が入場したのに挨拶に来ないのを不審に思うべきだが、アーノルトは初めての大規模なパーティーにはしゃぐクロエとエミリアの相手で忙しく、周囲の貴族を気に留めていない。
その様子を見て、周囲の貴族たちはますます遠巻きにしてしまう。
「あれが元庶子の異母妹か」
「母親は元平民よ。いつもはシシルジア様にフォローされてどうにかなっていたけど、いらっしゃらないこの場であんなにはしゃいで……、状況を理解していないのかしら」
「ララスティ様はどちらかしら?」
「王家の方かアインバッハ公爵と一緒じゃないかしら」
「むしろその方がいいだろう。あの三人と一緒ではララスティ様の品位に影響が出そうだ」
「どうしてこんな時間に公爵家の人間がいるのかしら」
「それよりもまだ他の高位貴族の方々もいないのに、もう食前酒に手を付けているぞ」
「見てよ。娘の方はお皿にあんなに食べ物を取っているわ」
「卑しいな」
「付き合う人が変わるとダメになるタイプなのかしらね」
「そうなんだろう。ミリアリス様が一緒の時は、仲は悪そうだったがまともに見えた」
ヒソヒソと交わされる会話に気づかず、三人が和気あいあいと過ごしている間に時間が過ぎ、だんだんと高位貴族も揃ってくる。
高位貴族の中にはエミリアたちを見て、あからさまに眉をしかめる者もおり、その中にはマリーカやシルフォーネの家族もいる。
「あれっ。あの人ってお姉様のお友達だわ」
マリーカに気づいたエミリアが言うと、視線をたどったアーノルトは「ストリオ侯爵家の娘か」と頷く。
「地味な産業しかないが歴史は長い家だ。付き合っておいて損はないな」
「ふーん。だからお姉様もお友達になったのかしら? 友達も家のことを考えて選ぶなんて可哀相ね」
エミリアの声は抑えられておらず、周囲にいる貴族の耳にしっかりと届く。
ララスティとマリーカの仲の良さは周知の事実であるし、そもそも家の事情を考慮せずに友人作りをする貴族の子供の方が少ない。
「じゃあ、あっちにいる子は? あの人もお姉様の友達よ」
「ガインアズト侯爵家の娘だな。あの家は勢いのある家だが、夫人が東の国出身だからな」
親しくするには慎重になった方がいいというアーノルト。
「東って、この国の東には帝国しかないじゃない。お父さんってば、なに言ってるのよ」
おかしそうに笑うエミリアの言葉に、アーノルトがしまったと眉を寄せた。
エミリアの学習内容まで把握していなかったため、まさか大陸図を理解していないとは思わなかったのだ。
「でもまあ、話し方は変だったわね。本当に侯爵令嬢なのかしらって思っちゃった。平民の子供でももっとましな言葉遣いなのに」
おかしそうに笑いながら言うエミリアに周囲の視線が突き刺さる。
シルフォーネの言葉遣いは東の国出身の母親の影響を受けているのだ。
それを馬鹿にするように笑うなど、貴族としてそちらの方がありえない。
「それにしてもカイルさ……カイル殿下はまだかしら?」
エミリアがきょろきょろして言うと、アーノルトが「まだ時間じゃないからな」と返す。
「そっかぁ。あ、でもお姉様は先に会ってるかもしれないんでしょう? やっぱりずるいなぁ」
拗ねるエミリアは声を押さえるつもりはないらしく、その声は周囲に聞こえてしまう。
ララスティはカイルの婚約者なのだから、このパーティーでパートナーとして入場するのは普通のことで、ずるいという感覚が周囲の貴族には理解できない。
そのまま周囲の冷めた視線に気づかず、三人で楽しく会話を続ける。
貴族としての常識や暗黙の了解、マナー不足の部分はアーノルトがフォローをすべきなのに、肝心のアーノルトは最愛の妻を否定することがない。
エミリアのマナーをクロエではフォローしきれず、アーノルトも止めないため、パーティーの開始前だというのに自由に飲み食いをしている。
「…………ね、ねえ。まだカイルさ、じゃなくてカイル殿下は来ないの?」
「そろそろだと思うが、どうかしたのか?」
「う、うん……ちょっと……」
そわそわとしているエミリアを見て、クロエが「なるほど」と頷く。
「そんなに王子様に会いたいの? もうっあたしの娘は可愛いわね!」
「お母さんったら……まあ、会いたいのはそうなんだけど……そうじゃなくって」
エミリアはキョロキョロと視線をさまよわせ、体をゆすり始める。
その様子にアーノルトは心配そうに再度「どうかしたのか?」と聞くが、エミリアは顔を赤くして俯いてしまう。
「……あっ! エミーってばもしかしてトイレに行きたいの?」
「お母さん! しー!」
顔を赤くし、慌ててクロエを止めようとするエミリアだが、クロエは「あれだけ飲み食いすれば仕方ないわよ」と笑った。
「もうっお母さんってばデリカシーがないわよ」
「まあまあ、いいじゃない。まだ王家の人も来ないんだし、今のうちに行ってきなさい」
「……うう、そうする」
そういってエミリアは顔を赤くしたまま会場を出ていくが、どこにトイレがあるかわからず、近くに居る人に道を尋ねる。
「そこを曲がって、次の突き当りを右に行って真っすぐのところにありますよ」
「ありがとうございます!」
エミリアはそう言うと走っていった。
「………………ふっ」
立ち去るエミリアを見送って、王宮の廊下を走るマナー違反に笑みを浮かべていると、背後から声をかけられた。
「ルドルフ、こんなところにいたのか」
「お爺様」
振り返ったルドルフが笑顔で言うと、シングウッド公爵が先ほどまでルドルフが見ていた方向を見る。
「何かあったのか?」
「いえ、迷子にお手洗いの場所の案内をしただけです」
「こんな時間に? もうすぐ陛下たちも入場するというのに……」
困ったように眉を寄せるシングウッド公爵に、ルドルフは「子供でしたし、我慢できなかったんでしょう」とフォローした。
「子供とはいえ……いや、粗相をするよりはましか。しかし、迷子と言っていたが親は一緒じゃなかったのか?」
「一人でしたね」
「まったく、親は何をしている! こんなところで子供を一人にするなんて……」
親が付き添えないのであれば、会場にいる使用人に聞けば付き添いを用意してもらえる。
クロエが知らなくても、アーノルトはその事を知っているはずなのだが、なにもしていない。
(愛娘を一人にするなんて、ひどいことをするものだ)
ルドルフは心の中でだけ笑うと、祖父のシングウッド公爵を促して会場に向かう。
「念のため会場に着いたら使用人に様子を見に行くよう伝えておきましょう」
「そうだな」
子供を一人にしておくのは心配だが、ルドルフ達も会場に行かなければいけない。
親しい家の子供ならまた話は変わってくるが、そうではない家の子供のお手洗いに、保護者の代わりにつきそう義理など全くない。
「何これ、国中の貴族が集まってるわけ?」
ポツリと呟いたエミリアの言葉に、アーノルトはほとんどの貴族家の当主夫妻と子供が参加していると答えた。
「やっぱり! お貴族様なんてあんまりいないのに、この数はおかしいと思ったのよ。それにしても、こんなにいるとあたしたちの番までどれだけ待たされるのかしら」
エミリアが遠くに見える建物を見ながら言う。
だが、本来ならこの時間に公爵家の馬車が到着している方が異例なのだ。
入場の時間調整ということで、下位貴族は早めに到着し高位貴族は遅めに到着することが暗黙のルール。
伯爵家が揃う時間よりも早くに到着していながら、「待たされる」と言われてはかなわない。
「こんな時、公爵家の特権とかでどうにかならないの?」
「普段はもっと数が少ないんだが」
アーノルトははやる気持ちを押さえられないエミリアたちのおねだりによって、予定時刻よりも早めに出発したことを忘れて首をかしげる。
そんな時、横を別の馬車が通過していき、列を離れ別の出入り口から中に入ったのを見たクロエが、「なにあれ!」と叫んだ。
「あれは、アインバッハ公爵家の馬車か」
忌々しそうに言ったアーノルトの横でクロエは「並ばないなんてずるい!」と文句を言う。
エミリアも「なんで並ばないの?」と不思議そうに首をかしげた。
「あいつが乗ってるんだろうな。カイル殿下の婚約者だから先に顔を合わせておくんだろう」
アーノルトの言葉に「何それ!」とエミリアが叫んだ。
「ずるい! 婚約者だからってそんな贔屓ってありなの!?」
「婚約者同士が揃って登場するのも珍しいことじゃない」
言外に列を追い越していくのはありだというアーノルト。
エミリアは「ずるい」と機嫌を悪くする。
「実の家族がここで順番待ちをしているのに自分だけ先に行くなんて、ララスティさんは薄情ね」
クロエは呆れたように言いながら、のろのろと進む列を見て息をついた。
一時間後、やっと建物の中に入ることができたエミリアたちは、早速会場に移動する。
中には下位貴族や伯爵家の者しかおらず、通常より早く入場したアーノルトたちに視線を向ける。
「なんか見られてるよね?」
「エミリアの社交デビューだからな。見慣れない令嬢が気になっているんだろう」
「そっか」
アーノルトの言葉にうなずくエミリアだが、それは間違っていた。
会場にいる貴族たちはこんなに早く登場した空気を読めない行動に呆れ、ランバルト公爵家として入場しておきながら、ララスティを除外していることに憤っている。
分家の者もいるが、誰も挨拶に行かず様子を見ている。
本来なら公爵家の者が入場したのに挨拶に来ないのを不審に思うべきだが、アーノルトは初めての大規模なパーティーにはしゃぐクロエとエミリアの相手で忙しく、周囲の貴族を気に留めていない。
その様子を見て、周囲の貴族たちはますます遠巻きにしてしまう。
「あれが元庶子の異母妹か」
「母親は元平民よ。いつもはシシルジア様にフォローされてどうにかなっていたけど、いらっしゃらないこの場であんなにはしゃいで……、状況を理解していないのかしら」
「ララスティ様はどちらかしら?」
「王家の方かアインバッハ公爵と一緒じゃないかしら」
「むしろその方がいいだろう。あの三人と一緒ではララスティ様の品位に影響が出そうだ」
「どうしてこんな時間に公爵家の人間がいるのかしら」
「それよりもまだ他の高位貴族の方々もいないのに、もう食前酒に手を付けているぞ」
「見てよ。娘の方はお皿にあんなに食べ物を取っているわ」
「卑しいな」
「付き合う人が変わるとダメになるタイプなのかしらね」
「そうなんだろう。ミリアリス様が一緒の時は、仲は悪そうだったがまともに見えた」
ヒソヒソと交わされる会話に気づかず、三人が和気あいあいと過ごしている間に時間が過ぎ、だんだんと高位貴族も揃ってくる。
高位貴族の中にはエミリアたちを見て、あからさまに眉をしかめる者もおり、その中にはマリーカやシルフォーネの家族もいる。
「あれっ。あの人ってお姉様のお友達だわ」
マリーカに気づいたエミリアが言うと、視線をたどったアーノルトは「ストリオ侯爵家の娘か」と頷く。
「地味な産業しかないが歴史は長い家だ。付き合っておいて損はないな」
「ふーん。だからお姉様もお友達になったのかしら? 友達も家のことを考えて選ぶなんて可哀相ね」
エミリアの声は抑えられておらず、周囲にいる貴族の耳にしっかりと届く。
ララスティとマリーカの仲の良さは周知の事実であるし、そもそも家の事情を考慮せずに友人作りをする貴族の子供の方が少ない。
「じゃあ、あっちにいる子は? あの人もお姉様の友達よ」
「ガインアズト侯爵家の娘だな。あの家は勢いのある家だが、夫人が東の国出身だからな」
親しくするには慎重になった方がいいというアーノルト。
「東って、この国の東には帝国しかないじゃない。お父さんってば、なに言ってるのよ」
おかしそうに笑うエミリアの言葉に、アーノルトがしまったと眉を寄せた。
エミリアの学習内容まで把握していなかったため、まさか大陸図を理解していないとは思わなかったのだ。
「でもまあ、話し方は変だったわね。本当に侯爵令嬢なのかしらって思っちゃった。平民の子供でももっとましな言葉遣いなのに」
おかしそうに笑いながら言うエミリアに周囲の視線が突き刺さる。
シルフォーネの言葉遣いは東の国出身の母親の影響を受けているのだ。
それを馬鹿にするように笑うなど、貴族としてそちらの方がありえない。
「それにしてもカイルさ……カイル殿下はまだかしら?」
エミリアがきょろきょろして言うと、アーノルトが「まだ時間じゃないからな」と返す。
「そっかぁ。あ、でもお姉様は先に会ってるかもしれないんでしょう? やっぱりずるいなぁ」
拗ねるエミリアは声を押さえるつもりはないらしく、その声は周囲に聞こえてしまう。
ララスティはカイルの婚約者なのだから、このパーティーでパートナーとして入場するのは普通のことで、ずるいという感覚が周囲の貴族には理解できない。
そのまま周囲の冷めた視線に気づかず、三人で楽しく会話を続ける。
貴族としての常識や暗黙の了解、マナー不足の部分はアーノルトがフォローをすべきなのに、肝心のアーノルトは最愛の妻を否定することがない。
エミリアのマナーをクロエではフォローしきれず、アーノルトも止めないため、パーティーの開始前だというのに自由に飲み食いをしている。
「…………ね、ねえ。まだカイルさ、じゃなくてカイル殿下は来ないの?」
「そろそろだと思うが、どうかしたのか?」
「う、うん……ちょっと……」
そわそわとしているエミリアを見て、クロエが「なるほど」と頷く。
「そんなに王子様に会いたいの? もうっあたしの娘は可愛いわね!」
「お母さんったら……まあ、会いたいのはそうなんだけど……そうじゃなくって」
エミリアはキョロキョロと視線をさまよわせ、体をゆすり始める。
その様子にアーノルトは心配そうに再度「どうかしたのか?」と聞くが、エミリアは顔を赤くして俯いてしまう。
「……あっ! エミーってばもしかしてトイレに行きたいの?」
「お母さん! しー!」
顔を赤くし、慌ててクロエを止めようとするエミリアだが、クロエは「あれだけ飲み食いすれば仕方ないわよ」と笑った。
「もうっお母さんってばデリカシーがないわよ」
「まあまあ、いいじゃない。まだ王家の人も来ないんだし、今のうちに行ってきなさい」
「……うう、そうする」
そういってエミリアは顔を赤くしたまま会場を出ていくが、どこにトイレがあるかわからず、近くに居る人に道を尋ねる。
「そこを曲がって、次の突き当りを右に行って真っすぐのところにありますよ」
「ありがとうございます!」
エミリアはそう言うと走っていった。
「………………ふっ」
立ち去るエミリアを見送って、王宮の廊下を走るマナー違反に笑みを浮かべていると、背後から声をかけられた。
「ルドルフ、こんなところにいたのか」
「お爺様」
振り返ったルドルフが笑顔で言うと、シングウッド公爵が先ほどまでルドルフが見ていた方向を見る。
「何かあったのか?」
「いえ、迷子にお手洗いの場所の案内をしただけです」
「こんな時間に? もうすぐ陛下たちも入場するというのに……」
困ったように眉を寄せるシングウッド公爵に、ルドルフは「子供でしたし、我慢できなかったんでしょう」とフォローした。
「子供とはいえ……いや、粗相をするよりはましか。しかし、迷子と言っていたが親は一緒じゃなかったのか?」
「一人でしたね」
「まったく、親は何をしている! こんなところで子供を一人にするなんて……」
親が付き添えないのであれば、会場にいる使用人に聞けば付き添いを用意してもらえる。
クロエが知らなくても、アーノルトはその事を知っているはずなのだが、なにもしていない。
(愛娘を一人にするなんて、ひどいことをするものだ)
ルドルフは心の中でだけ笑うと、祖父のシングウッド公爵を促して会場に向かう。
「念のため会場に着いたら使用人に様子を見に行くよう伝えておきましょう」
「そうだな」
子供を一人にしておくのは心配だが、ルドルフ達も会場に行かなければいけない。
親しい家の子供ならまた話は変わってくるが、そうではない家の子供のお手洗いに、保護者の代わりにつきそう義理など全くない。
290
お気に入りに追加
831
あなたにおすすめの小説
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる