The change~入れ替わった魂~

メイドのお仕事

      夢のような薔薇風呂と和風露天を体験した翌日から、胡桃のメイドとしてのお仕事が始まった。鏑木は、主に厨房関係の仕事をしているので、胡桃は裏手のSPA棟の掃除や洗濯を担った。

  夕方、愛瑠お嬢様がSPA棟を使う前にタオルやバスローブは充分に用意しておき。時間を見計らってお風呂を沸かす。
入浴剤はその日の気分で、昨日のように薔薇風呂用の薔薇を準備する時もあれば、湯の花や、SPAソルトを使用する時もあった。ピカピカに磨きあげるのはもちろん、レジオネラ菌のチェックを忘れずに！

  洋館自体の清掃は、ドアをあけておけば、お掃除ロボットがまわってくれたし、月一は専門の清掃業者が入るので、埃など気づいたところの清掃と、パウダールームの清掃。毎朝各部屋の換気くらいだった。やっぱり1番大変なのは水周りだなと胡桃は思ったが、もともと綺麗なので毎日掃除していればそこまで時間をかけなくても良かった。鏑木はヨーロッパ調の浴室は落ち着かないらしく早朝に露天風呂のほうを使っているようだ。胡桃の清掃は愛瑠お嬢様の朝食が済んでから、夕方までにすれば良いというアバウトなものだった。

 自分の持ち場の清掃や洗濯の合間に自室で休憩するのも自由だったし、鏑木が残り物で作る賄いは、下手な食堂よりずっと美味しかったし、新しいメニューの試食も胡桃の仕事だった(笑)

 このままでは太りそうだと懸念したが、SPA棟の裏にはフィットネスの施設も併設してあって、いつでも自由に使ってくださいとの事だった。こちらは入口が別だったので、愛瑠お嬢様がSPAを利用している時でも使えたし、簡易的なシャワールームもあり、汗をかいた時にいつでも軽くシャワーを浴びれた。もちろん、シャワールームの入口には鍵が付いていて、ドアノブに使用中の札を掛けておけば、いきなり誰かが入ってくる心配もない。まさに至れり尽くせりだった。

  ただし、SPA棟だけは誰が使っているかわかるように中から鍵がかかるのはもちろんだったが、お洒落なイニシャルプレートが作られており、使用者はそれを玄関先のボードに差し込むようになっていた。

  鏑木のK  一之瀬のI 榊原のSだった。

名字にしたのは、名前だとイニシャルが被るからだろう。

 もともと順応性の高い胡桃は、すぐにここの生活に馴染んだ。愛瑠お嬢様には胡桃と呼び捨てにされ、鏑木には胡桃さんと親しげに呼ばれるようになるのに、そう時間はかからなかった。