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幽霊屋敷の大改装
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翌日から加奈子は早速、洋館の大改修の為に動き出した。かなり大規模な改修工事であったため、完成までには3ヶ月の時間を要した。その間、加奈子はカコジョのkiraraとしての活動をしつつ、何人かのkiraraの知り合いやファンの人ともコメント欄で交流し、そのかたわら、榊原家の財政状況を分析したり、使われていない部屋のチェックをしたりした。あと定期的に愛瑠の両親のお墓参りも欠かさなかった。改修工事が全部終わったら、そろそろ、新生愛瑠として、リアルの交流関係も新たに築こうと思ってはいたが、しばらくは足元を固めるのに忙しかった。
ようやく、全ての改修が終わる頃には、季節はすでに初夏の装いに変わっていた美しいイングリッシュガーデンの中には、白い椅子とテーブルが置かれ、水のせせらぎが聞こえている...
加奈子は、シースルーのフリルを幾重にもあしらった涼し気な淡いピンクのワンピースに身を包んでいた。加奈子には、もし生まれ変わったら、1度してみたいことがあった。それはお嬢様ごっこである。お嬢様ごっことは、こんな美しいガーデンで執事に給仕されながら優雅にアフタヌーンティーを楽しむことだ。
加奈子はこの日の為に、レンタル執事を頼んでいた。今はお金さえあれば、何でも借りられる時代である...
レンタル彼氏、レンタル彼女、レンタル家族...数え上げたらキリがない。
見た目重視の若いイケメン執事もいるにはいるが、加奈子は実力重視で、初老の品のいい紳士を選んだ。名前は鏑木と言った。
「愛瑠お嬢様、今日の紅茶は如何致しましょうか?」
鏑木は、まるでずっと前から愛瑠の執事であったかのように振る舞う。所作も完璧だ。
「貴方に任せるわ」
そもそも加奈子に紅茶の茶葉の違いなどわかるはずもない。
「かしこまりました。お嬢様」
鏑木は慣れた手つきで茶葉を選び紅茶を注ぐ。今回準備されたアフタヌーンティーのスコーンや洋菓子もすべて彼の手作りだという...
爽やかな緑の中でそよ風に吹かれながら過ごす昼下がりは最高だった。
時間に追い立てられることも無く、誰かに気兼ねすることも無く、見たことも食べたこともない美味しいスイーツやスコーンを紅茶と共に頂く。
自分が加奈子であったなどというのは、長い悪夢だったのかもしれない...
加奈子はまるで、生まれたときから愛瑠であったかのような錯覚すら覚えていた。この数ヶ月で、加奈子は愛瑠になりきる為にいろんな知識を吸収した。
大学時代の友人には 今更会おうなどとは思わないが、偶然街で出会った時の為に顔と名前とどの程度親しかったのかくらいは頭に入れていた。
それ以外にも自分が愛瑠として当然知っておかなければならないことも勉強していた。外見がそっくりな他人が成り代わっているなどと噂をたてられたら厄介だからだ。
愛瑠が心を病んでいて、付き合いがあったのは、清掃業者や税理士や弁護士くらいだったのが、加奈子には幸いしていた。
話は戻るが、加奈子はお試しでレンタルした鏑木を気に入り、その後、鏑木はレンタル会社を辞めて、榊原家の住み込みの執事になることになった。もとシェフだった彼は、食事もスイーツも完璧に作れたのでキッチンはすべて彼に任すことにした。
加奈子はもう1人、メイドを雇うことにした。こちらは比較的若くてしっかりしていて世間の流行などをキャッチする能力の高いメイド服が似合う20代の女の子だ。お給金が良かった為、募集すると応募が殺到したが、加奈子自ら面接して、
信頼出来そうな、しっかりと仕事がこなせそうな自分より少し下の女の子を採用することにした。
彼女の名前は一之瀬胡桃と言った。
こちらも住み込みで働いて貰うことにしたが、彼女の仕事は館全体の普段の清掃や、愛瑠の身の回りの世話であった。
いつのまにか幽霊屋敷はお洒落な洋館へと変貌し雰囲気が全く違うものになっていた。
ようやく、全ての改修が終わる頃には、季節はすでに初夏の装いに変わっていた美しいイングリッシュガーデンの中には、白い椅子とテーブルが置かれ、水のせせらぎが聞こえている...
加奈子は、シースルーのフリルを幾重にもあしらった涼し気な淡いピンクのワンピースに身を包んでいた。加奈子には、もし生まれ変わったら、1度してみたいことがあった。それはお嬢様ごっこである。お嬢様ごっことは、こんな美しいガーデンで執事に給仕されながら優雅にアフタヌーンティーを楽しむことだ。
加奈子はこの日の為に、レンタル執事を頼んでいた。今はお金さえあれば、何でも借りられる時代である...
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見た目重視の若いイケメン執事もいるにはいるが、加奈子は実力重視で、初老の品のいい紳士を選んだ。名前は鏑木と言った。
「愛瑠お嬢様、今日の紅茶は如何致しましょうか?」
鏑木は、まるでずっと前から愛瑠の執事であったかのように振る舞う。所作も完璧だ。
「貴方に任せるわ」
そもそも加奈子に紅茶の茶葉の違いなどわかるはずもない。
「かしこまりました。お嬢様」
鏑木は慣れた手つきで茶葉を選び紅茶を注ぐ。今回準備されたアフタヌーンティーのスコーンや洋菓子もすべて彼の手作りだという...
爽やかな緑の中でそよ風に吹かれながら過ごす昼下がりは最高だった。
時間に追い立てられることも無く、誰かに気兼ねすることも無く、見たことも食べたこともない美味しいスイーツやスコーンを紅茶と共に頂く。
自分が加奈子であったなどというのは、長い悪夢だったのかもしれない...
加奈子はまるで、生まれたときから愛瑠であったかのような錯覚すら覚えていた。この数ヶ月で、加奈子は愛瑠になりきる為にいろんな知識を吸収した。
大学時代の友人には 今更会おうなどとは思わないが、偶然街で出会った時の為に顔と名前とどの程度親しかったのかくらいは頭に入れていた。
それ以外にも自分が愛瑠として当然知っておかなければならないことも勉強していた。外見がそっくりな他人が成り代わっているなどと噂をたてられたら厄介だからだ。
愛瑠が心を病んでいて、付き合いがあったのは、清掃業者や税理士や弁護士くらいだったのが、加奈子には幸いしていた。
話は戻るが、加奈子はお試しでレンタルした鏑木を気に入り、その後、鏑木はレンタル会社を辞めて、榊原家の住み込みの執事になることになった。もとシェフだった彼は、食事もスイーツも完璧に作れたのでキッチンはすべて彼に任すことにした。
加奈子はもう1人、メイドを雇うことにした。こちらは比較的若くてしっかりしていて世間の流行などをキャッチする能力の高いメイド服が似合う20代の女の子だ。お給金が良かった為、募集すると応募が殺到したが、加奈子自ら面接して、
信頼出来そうな、しっかりと仕事がこなせそうな自分より少し下の女の子を採用することにした。
彼女の名前は一之瀬胡桃と言った。
こちらも住み込みで働いて貰うことにしたが、彼女の仕事は館全体の普段の清掃や、愛瑠の身の回りの世話であった。
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