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背徳のマスカレイド
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小林凛子は35歳。分厚い眼鏡をかけ、長い黒髪を無造作に束ねた地味な事務員である。同僚のおっちゃん達にも「なんかこう花がないよなあ。もう少し若いねーちゃんでも来てくれたらやる気も出るってもんだ」と陰口を囁かれるような存在だった。愛想もなく、飲み会に誘われても一度も参加した事がなかった。
いつも通り、的確な事務を効率的に終わらせた凛子は、就業のチャイムと共に 席を立つ。
「お先に失礼します。」
「ああ、お疲れ」
電車で30分程揺られた郊外に凛子の自宅はある。交通の便のいいところだが、どちらかというと貧困層が住んでいる古いアパートが立ち並ぶ。
凛子の夫は典型的なブルーカラーで夜勤交代制の工場で働いている。拘束時間が長い割には実入りが少ない。凛子自身も高卒で何の資格もないため、小さな会社で驚くような薄給でしか雇ってくれるところはなかったので、2人の生活は決して豊かなものではなかった。
凛子の夫は、いつも仕事で疲れていて、気がつけば20代の頃から、夫婦関係もなく、休みも合わなかった為、すれ違いがずっと続いていた。
その日も夫は夜勤だった。
帰ってくるのは朝だ。
凛子は自宅に戻らずに曽根崎警察の近くにある地下の化粧室に入った。
凛子は個室に入ると地味な通勤服から派手な膝丈ほどのワンピースに着替えた。
そして、分厚い眼鏡を外し、コンタクトに付け替え、束ねた黒髪をおろした。
化粧っけのない顔が鮮やかに彩られていく。
化粧室から出た女は凛子とはまるで別人だった。
凛子は、そのまま、怪しげなネオンが煌めく歓楽街の突き当たりを少し折れた路地にある雑居ビルに入っていく。
そこは会員制のSM&フェテイッシュバー 『マスカレイドの誘い』がある。
重い扉を開けると、ボンテージに身を包んだお店の女の子達が迎えてくれる。
「あら、美麗(みれい)さん。いらっしゃい!」
美麗というのは、凛子のこの店での通り名だ。ここでは、本名を名乗る客は存在しない。
「ライムちゃん、こんばんは」
ライムと呼ばれた女の子は、ついこの間まで、お客さん側だったあどけなさが残る女子大生だ。少し見ない間に大人の女の艶を身にまとっている。
会員制のSMバーというと、何か特別な人達が集う秘密結社のように思われがちだが、実際は少し違う。
女子大生だったり、普通の主婦だったり、風俗嬢だったり、プロの女王様だったりと実にカオスな空間である。他のSMバーと、このマスカレイドが全く違う点がひとつある。他のバーは女王様が経営者で、集まってくるお客さんもM男君が多いが、このマスカレイドは、お客さんに素人の主婦や女子大生やOLが圧倒的に多い事だった。彼女達の多くは、ここのオーナーであるカリスマ緊縛師、縄の魔術師との異名を持つ堂島聖(どうじまひじり)の縄を受けるのが目的だった。
マスカレイド
普段の自分と違う仮面を被る場所…
だが、美麗にとっては、むしろ普段被っている鉄の仮面を外す場所だった。
「美麗ちゃん、何飲む?」
この店では古株の西園寺亮子がおしぼりを差し出す。
「そうね。ジンジャーエールでいいわ」
美麗がお酒を頼まないのには訳がある。
緊縛前にアルコールが入ると血圧があがって危険だからだ。それは、彼女が初めてこの店に来た時に聖から教わったことだった
当時の彼女のパートナーの名前は冬李(とうり)と言う名の僧侶で穏やかで他のM女さん受けも良い紳士だった。
美麗と冬李の出会いは数年前に遡る。ナンパの嵐である他のノーマルなグループチャットにうんざりしていた彼女は、ある日、もっと落ち着いたグループチャットはないかと誰かに尋ねてみた。
「年齢的に落ち着いた紳士淑女が集うチャットなら、十二単があるよ。あそこはナンパ禁止やし、ちゃんと会話が楽しめると思うよ」
十二単とは知る人ぞ知るSMグループチャットの総称だった。
十二単には地域毎の部屋があり、美麗は大阪に住んでいたが、最初に招待されたのがチャット東海の管理人だったこともあり、チャット東海のメンバーと話をすることが多かった。ほどなく、美麗を知らないなんてモグリと呼ばれるほどの超常連になった彼女は、チャット東海の美麗と呼ばれるようになっていった。しかしその後、管理人とささいなトラブルがあり、東海から大阪へ籍を移すことになる。そして、自然な流れで月に一度開催されるオフラインミーティングにも出席するようになっていた。
彼女が名古屋の僧侶と出会ったのはその頃である。当時、仕事が忙しすぎて心身共にぼろぼろだった美麗はあまりグループチャットを覗くこともなくなりつつあった。ある日、久しぶりに覗いてみたら、知らない名前の男性が出入りしているのに気づいた。彼は、突然入ってきて喋りだした美麗を「アラシ」だと勘違いし、スルーした。美麗はなんて失礼な男だとかなり腹を立てていた。
ちなみに「アラシ」とは、グループチャットに乱入し周りの空気をかき乱す迷惑行為をする人のことである。
「私、あの人嫌い!私がちょっと留守をしている間に発言回数ナンバー1になってるのも気に入らない!」と美麗は馴染みのM女友達に愚痴っていた。
「でも、美麗ちゃん。冬李さん次のオフ会来るよ(^_^;)」
そう教えてくれたのは、仲の良い琴梨(ことり)ちゃんだ。
「アイツ来るん?名古屋の坊主がこのチャット大阪のオフラインミーティングに!?うわぁ~最悪!私、欠席しようかな?」
「なんでも、人の目が届かない関西でパートナーを見つけたいみたいよ。だってあの人、地位も名誉もあるし名古屋じゃ人目があるやん?」
「わかった!じゃあ、アイツに見つからないように、スミッコでおとなしくしとくわ!」
運命とは不思議なもので、最悪の出会いをした二人は、その直後に開催されたオフ会で恋に堕ちることになる。
実際に会った冬李は髭を生やした穏やかそうな紳士だった。
彼は普段からよく話している仲の良いM女さん達にお土産を持参していた。
ガラスで出来た可愛い動物とひとくちサイズの名古屋ういろうだったが、ものすごく感じの悪い女だと思われていた美麗には、当然お土産はなかった。
美麗は小さい声でそのかわいらしい動物達をみて、いいなぁ…と呟いた。
他の参加者には聞こえないような声だったと思う。だが、特別に耳の良い冬李にだけはその声は届いていた。
冬李は、端の方に座っていた美麗に
「美麗、1つ余ってるからあげるわ」
と小さな包みを投げてよこしたのだ。
「あ、どうも…ありがとうございます…」
美麗は手のひらに投げ入れられた小さな包みを開けた。それは人参をかじっている可愛いウサギのガラス細工だった。
冬李は嫌いだが、ウサギは可愛い。
美麗は思わず笑顔になった。
(おや?意外に可愛い顔をするんだな…)
ネット上でものすごく感じの悪い女、一体どんな女が来るのかと思っていたが、素顔の美麗は、冬李の想像に反して意外なほど素直で可愛かった。
二次会のカラオケルームに移った時微妙に出遅れた美麗は座るところがなかった。空いているのは冬李の横のわずかな隙間だけだ。ものすごく嫌だったが、仕方がないので、美麗はそこに腰をおろした。今回はかなり大人数が集まったこともあり、席の移動が難しく、美麗はお開きの瞬間まで冬李の横にいることになり、2人はずっとそこで話をしていた。美麗もまた、思ったより悪い奴じゃない…と冬李のことを見直し始めていた。
その翌日から2人は毎日のようにメッセンジャーで話をするようになった。冬李が美麗に正式なパートナー関係を申し込むのには、あまり時間はかからなかった。
冬李が美麗とパートナー関係を結ぶと公表した時に、落胆したフリーのM女さんが二人もいたことに美麗は驚いていた。
「私、ほんとは冬李さん狙ってたんだから!でも…美麗ちゃんじゃ仕方ないなあ」
美麗は二人のM女さんに同じ事をいわれたので、かなりびっくりしていた。
彼女はその時まで、自分のパートナーが女性の人望を勝ち得ていることに気づかなかったのだ。
他のM女さんにしてみれば、突然舞い戻ってきた美麗に素敵なS男性を1人持っていかれて、まさにトンビに油揚げをさらわれた心境だったに違いない。
付き合い始めた頃、美麗はまだ恋愛の延長線上にいた。恋人たちのボディランゲージに少しだけ刺激を上乗せするSMごっこの域を出ていなかったと思う。
ある日突然、冬李から
「お前にほんとの縄を教えたい。堂島聖に紹介するよ」と言われるまでは…
関西でもっとも有名で、ビジュアル的にも美しい聖は縄の魔術師の異名の他に、王子様とも呼ばれていた。
初めて店に入った時、堂島聖は開口一番こう言った。
「アルコール飲んでない?」
「え?一杯だけ飲んで来ましたけど…」
「緊縛の前はアルコール飲むと危険やからね。少し時間おこう」
そして、冬李に向かって聞いた。
「ちょっとプレイ的な要素入るけど、大丈夫ですか?」
「結構ですよ」
冬李も縄が下手な訳ではないが、素人の域は出ない。プロの縄師とは一体どんな縄をかけるのだろう?美麗は興味もあり、怖くもあった。
普通の人はびっくりするかも知れないが、たいていの若い女性はブラとショーツだけになり、美しい肢体を惜しげもなく晒す。素人女性の緊縛ショーが見れると邪な気持ちで来店する輩もいるにはいるが、ここは女性の裸くらいではなんとも思わない強者の方が圧倒的に多い。当時、三十路を過ぎていた美麗は、さすがにそこまで自分の肢体に自信がなく、キャミソール姿になるに留めた。
さっきまで普通のバーのように並べてあった椅子はフォーメーションを変えられ、ちょっとしたステージが出来上がる。
フォーメーションを変えるのは、お店の女の子ではなく客の方だ。女の子が着ていた服を脱ぎ、堂島聖がカウンターから出ると、それはショーの始まりだ。
曽根崎新地の怪しい夜はこれからだった。
聖の縄は芸術的で美しく、しかも速かった。女性のしなやかな肢体がまるで魔法のように美しく縄化粧されていく。
縄に魅せられた女達の表情は恍惚としてその唇からは自然に吐息がもれた。
強く縛り上げられた時の苦痛に顔を歪めても、感じているのは心のエクスタシーだ。
美麗は初めての本格的な緊縛だったので、聖はどこまでなら大丈夫か注意深く観察しながら進めていた。聖の縄は素晴らしかった。素人女のレベルに合わせて、美麗が欲しがる絶妙な強さで必要以上の負担をかけないように考えられた縄だった。吊りを怖がる彼女に消して無理強いはせず、天井から吊り下がる縄で浮遊感だけは体験させた。
聖は放心状態の彼女を優しく抱きしめ、「美麗、良かったよ。また縛らせてな」
と耳元で囁いた。
その日から、美麗にとって聖は、パートナー以外で自分の身体と心を預けられる唯一無二の存在になっていた。
彼女にとって幸せだったのは、事が終わったあと、「よく、頑張ったね」と頭を撫でてくれる優しいパートナーがいた事だった。
冬季は消して焼きもち焼きではなかった。自分の女が他の男性と話したり、縄を受けている間、それをみて女の反応を楽しむ余裕があった。自分が縄をかけているときは、どうしてもそちらに集中してしまい、なかなか女の反応をゆっくり観察するところまでいかないので、お酒を飲みながら、自分の女がどういう表情でどんな風に啼くのか、ゆっくり観察出来るこういう時間は嫌いではなかったのだ。
実際、他の女王様が経営しているJというバーでも、ボンテージを着せて檻に入れてみたり、女王様達に彼女を玩具にさせるという禁断のショーに出演させたりしたこともある。
ただ、冬季の嗜好と美麗の嗜好は少しだけ隔たりがあった。
美麗にとって縄は性的興奮を与えられるものではなく、ひたすらに美しい芸術だった。
秘め事は人前でするものではなく、愛する人と2人で閉ざされた空間でする方がいいに決まっていた。
冬李にはよく使う馴染みのSMホテルがあった。部屋によってコンセプトが違い、美麗はどの部屋も好きだった。
たいていの部屋には梁があり縄緊縛に適しているし、ギロチン台がおいてある部屋もあった。ほんとに切れるわけではなく、首と手を差し入れて身動きがとれなくなるので、首を切り落とされる瞬間を追体験出来るのだ。
心の奥底に自己破壊的な精神を持つ美麗は、それらの玩具を気に入っていた。
とりわけ、美麗が気に入ったのは、産婦人科の診察台のような椅子に手足の拘束具がついているもので、一糸まとわぬ姿のまま拘束されて、怪しげな玩具で長時間にわたり凌辱される遊びだった。
不思議なことにこの女は、どれだけ辱しめても、どれだけ人としての尊厳を奪っても、いや、むしろそうすればそうするほどに、輝きを増し、終わったあとで柔らかな表情をみせた。
美麗はまるで、男の玩具になるためにだけ生まれてきたような女だった。
ただ、誰の玩具になるかを決めるのは、他ならぬ美麗自身であり、彼女に選ばれなければ、その表情もその声も聞くことは出来なかった。
数年に渡り、冬季と美麗の関係は何の問題もなく友好的に続いた。
ところがある日、冬季の前に1人の女が現れた。
福島県に住む資産家のマダム 円城まどかである。彼女はしっとりとした東北訛りと40歳とも思えぬスレンダーな肢体の持ち主だった。金と時間をもて余していた彼女は女磨きに余念がなかった。
かなり以前に、女の子だけのオフ会で美麗と面識があった彼女は、風の噂に、美麗が名古屋の僧侶と付き合い始めたことを知っていた。
資産家の彼女は東北から飛行機で関西に来ることなど造作もなかった。
彼女は冬季に近づいた。
「ねえ、冬季さん。私もマスカレイドに行きたいんだけど、今度連れていってくれるかしら?」
「いいですよ。じゃあ今度、美麗と三人で行きましょう」
「え?美麗ちゃんが一緒は嫌だなあ…彼女には内緒で連れていって」
彼女は持ち前の東北訛りで冬季に、そう囁いた。
「私、東北から来るから、日帰りでは帰れないわ。冬季さん、泊まるところ準備してくれますよね?」
「それでは、ホテルの部屋を二つとりましょうか?」
「冬季さん、そんなのもったいないからひとつでいいですよ。」
「ほんとに…?」
美麗は冬季を信じきっていたので、2人の間でそんな会話が交わされていた事など想像もしなかった。
マスカレイドにまどかを同伴してきた冬季を見て、聖は(美麗は知っているのか?)と釈然としない面持ちだったが、
ここは夜の街。客の事情には口をつぐむのがルールだ。
聖が見る限り、冬李とまどかは友だち同士が遊びに来たという風情に見えた。
特別な関係があるようには見えなかったが、チェックをして店を出る2人を見送ったあとに何があったかは知るよしもなかった。
それから数か月後のことだった。
美麗はまどかから電話を受けた。
「美麗ちゃん、冬季さんは貴女が思っているような男じゃないわよ。だって、あの人、私と寝たのよ。」
美麗にとっては寝耳に水だった。
美麗に内緒で2人でマスカレイドに行った事。
それからも熱いメールをたくさんもらったこと。
「今から、冬季さんが私にくれたラブレター全部転送するわ」
美麗に送られてきたのは、おびただしい数のメールで、その内容は耳を疑うものばかりだった…
「まどかちゃん…もう、わかった…わかったからもう辞めて!」
美麗は振り絞るような声で
「教えてくれてありがと…」
そう言って電話を切るのが精一杯だった。
一方、電話を切られた方のまどかは、
マルボロを1本とりだし火をつけた。細い煙をくゆらせ彼女は呟いた。
「だって、美麗ちゃん。貴女が悪いのよ。あんなに幸せそうな顔されたら、その可愛い顔を少しだけ歪ませたくなっちゃうじゃない(笑)」
円城まどか。福島県在住。その東北訛りと熟女の色香で男を惑わす魔性系美女。
まどかの略奪は、何も今始まったことではない。幸せそうなカップルを見ると、男の方にこなをかけ、相手の女との仲を引き裂いて、2人の仲が完全に壊れたのを見ると、男をさっさと捨てて次の獲物を狙いに行く女豹。
あまりのルール違反、傍若無人振りに彼女はほどなくこの大人の社交場から姿を消すことになる。
一方、その後の美麗と冬季はどうなったかというと、美麗は男の事も女の事も責めずに、ただ、静かに自分の中で壊れていった。
冬季の裏切りを知った美麗は、再び、マスカレイドにいた。荒れる美麗を馴染みの女王様達が慰めてくれていた。
「美麗ちゃん、もうすぐ聖さん来るからね!なんなら私が縛ろうか?」
「やだー(泣)こんな夜は聖の縄じゃないとダメなの!!」
ほどなくして、聖が出勤してきた。
「あ、聖さーん。美麗ちゃんがお待ちかねよ」
カウンターに入った聖に、美麗が泣きながら事の次第を話す。
話を聞いた聖が言った。
「あのね、美麗。まどかさんのような女に誘われて断れる男はいないと思うよ。でも、それは、ずっと一緒にいたいというのとは違うんじゃないかな。少なくとも私には冬季さんは美麗以外の女と付き合いたいと思っているようには見えないよ。」
「ほんとにそう思う?」
寂しくて哀しくてどうしようもない夜は、堂島聖の縄が優しく私を包んでくれる。恋愛とは少し違う。私が私になれる場所…少しだけほんの少しだけでいいから、縄と会話をしている時間だけは聖は私だけのもの…
美麗は、言葉にならない想いを抱いて、その夜は聖の縄に身を預け、自分の心と身体が少しずつ浄化されるのを感じていた…
その後、紆余曲折を経て、元の鞘に戻った冬季と美麗の最後はひどく穏やかなものだった。
2人の息子の大学進学が重なるため、1年程大阪には来れない。その間、男友だちやマスカレイドで遊んでいてもいいから待っていて欲しいという冬季に対して、美麗は即答で「パートナー関係を解消して下さい」と言った。
冬季、貴方のことは好きよ。でも、先の約束を待てるほど、私は若くない…
私だっていつまで女でいられるかなんてわからないもの…
パートナー関係を解消すると発表した冬季と美麗は、最後の思い出にマスカレイドを訪れた。2人のあまりの仲のよさに、聖は「別れると聞いていたんだが、あれは聞き間違いか…」とひとり呟いた。
だが、それ以来、冬季は2度とマスカレイドに来ることはなかった‥
その後、美麗はあまり時を待たずして、とんでもない男と知り合うことになるが、それはまた別の話‥
fin.
いつも通り、的確な事務を効率的に終わらせた凛子は、就業のチャイムと共に 席を立つ。
「お先に失礼します。」
「ああ、お疲れ」
電車で30分程揺られた郊外に凛子の自宅はある。交通の便のいいところだが、どちらかというと貧困層が住んでいる古いアパートが立ち並ぶ。
凛子の夫は典型的なブルーカラーで夜勤交代制の工場で働いている。拘束時間が長い割には実入りが少ない。凛子自身も高卒で何の資格もないため、小さな会社で驚くような薄給でしか雇ってくれるところはなかったので、2人の生活は決して豊かなものではなかった。
凛子の夫は、いつも仕事で疲れていて、気がつけば20代の頃から、夫婦関係もなく、休みも合わなかった為、すれ違いがずっと続いていた。
その日も夫は夜勤だった。
帰ってくるのは朝だ。
凛子は自宅に戻らずに曽根崎警察の近くにある地下の化粧室に入った。
凛子は個室に入ると地味な通勤服から派手な膝丈ほどのワンピースに着替えた。
そして、分厚い眼鏡を外し、コンタクトに付け替え、束ねた黒髪をおろした。
化粧っけのない顔が鮮やかに彩られていく。
化粧室から出た女は凛子とはまるで別人だった。
凛子は、そのまま、怪しげなネオンが煌めく歓楽街の突き当たりを少し折れた路地にある雑居ビルに入っていく。
そこは会員制のSM&フェテイッシュバー 『マスカレイドの誘い』がある。
重い扉を開けると、ボンテージに身を包んだお店の女の子達が迎えてくれる。
「あら、美麗(みれい)さん。いらっしゃい!」
美麗というのは、凛子のこの店での通り名だ。ここでは、本名を名乗る客は存在しない。
「ライムちゃん、こんばんは」
ライムと呼ばれた女の子は、ついこの間まで、お客さん側だったあどけなさが残る女子大生だ。少し見ない間に大人の女の艶を身にまとっている。
会員制のSMバーというと、何か特別な人達が集う秘密結社のように思われがちだが、実際は少し違う。
女子大生だったり、普通の主婦だったり、風俗嬢だったり、プロの女王様だったりと実にカオスな空間である。他のSMバーと、このマスカレイドが全く違う点がひとつある。他のバーは女王様が経営者で、集まってくるお客さんもM男君が多いが、このマスカレイドは、お客さんに素人の主婦や女子大生やOLが圧倒的に多い事だった。彼女達の多くは、ここのオーナーであるカリスマ緊縛師、縄の魔術師との異名を持つ堂島聖(どうじまひじり)の縄を受けるのが目的だった。
マスカレイド
普段の自分と違う仮面を被る場所…
だが、美麗にとっては、むしろ普段被っている鉄の仮面を外す場所だった。
「美麗ちゃん、何飲む?」
この店では古株の西園寺亮子がおしぼりを差し出す。
「そうね。ジンジャーエールでいいわ」
美麗がお酒を頼まないのには訳がある。
緊縛前にアルコールが入ると血圧があがって危険だからだ。それは、彼女が初めてこの店に来た時に聖から教わったことだった
当時の彼女のパートナーの名前は冬李(とうり)と言う名の僧侶で穏やかで他のM女さん受けも良い紳士だった。
美麗と冬李の出会いは数年前に遡る。ナンパの嵐である他のノーマルなグループチャットにうんざりしていた彼女は、ある日、もっと落ち着いたグループチャットはないかと誰かに尋ねてみた。
「年齢的に落ち着いた紳士淑女が集うチャットなら、十二単があるよ。あそこはナンパ禁止やし、ちゃんと会話が楽しめると思うよ」
十二単とは知る人ぞ知るSMグループチャットの総称だった。
十二単には地域毎の部屋があり、美麗は大阪に住んでいたが、最初に招待されたのがチャット東海の管理人だったこともあり、チャット東海のメンバーと話をすることが多かった。ほどなく、美麗を知らないなんてモグリと呼ばれるほどの超常連になった彼女は、チャット東海の美麗と呼ばれるようになっていった。しかしその後、管理人とささいなトラブルがあり、東海から大阪へ籍を移すことになる。そして、自然な流れで月に一度開催されるオフラインミーティングにも出席するようになっていた。
彼女が名古屋の僧侶と出会ったのはその頃である。当時、仕事が忙しすぎて心身共にぼろぼろだった美麗はあまりグループチャットを覗くこともなくなりつつあった。ある日、久しぶりに覗いてみたら、知らない名前の男性が出入りしているのに気づいた。彼は、突然入ってきて喋りだした美麗を「アラシ」だと勘違いし、スルーした。美麗はなんて失礼な男だとかなり腹を立てていた。
ちなみに「アラシ」とは、グループチャットに乱入し周りの空気をかき乱す迷惑行為をする人のことである。
「私、あの人嫌い!私がちょっと留守をしている間に発言回数ナンバー1になってるのも気に入らない!」と美麗は馴染みのM女友達に愚痴っていた。
「でも、美麗ちゃん。冬李さん次のオフ会来るよ(^_^;)」
そう教えてくれたのは、仲の良い琴梨(ことり)ちゃんだ。
「アイツ来るん?名古屋の坊主がこのチャット大阪のオフラインミーティングに!?うわぁ~最悪!私、欠席しようかな?」
「なんでも、人の目が届かない関西でパートナーを見つけたいみたいよ。だってあの人、地位も名誉もあるし名古屋じゃ人目があるやん?」
「わかった!じゃあ、アイツに見つからないように、スミッコでおとなしくしとくわ!」
運命とは不思議なもので、最悪の出会いをした二人は、その直後に開催されたオフ会で恋に堕ちることになる。
実際に会った冬李は髭を生やした穏やかそうな紳士だった。
彼は普段からよく話している仲の良いM女さん達にお土産を持参していた。
ガラスで出来た可愛い動物とひとくちサイズの名古屋ういろうだったが、ものすごく感じの悪い女だと思われていた美麗には、当然お土産はなかった。
美麗は小さい声でそのかわいらしい動物達をみて、いいなぁ…と呟いた。
他の参加者には聞こえないような声だったと思う。だが、特別に耳の良い冬李にだけはその声は届いていた。
冬李は、端の方に座っていた美麗に
「美麗、1つ余ってるからあげるわ」
と小さな包みを投げてよこしたのだ。
「あ、どうも…ありがとうございます…」
美麗は手のひらに投げ入れられた小さな包みを開けた。それは人参をかじっている可愛いウサギのガラス細工だった。
冬李は嫌いだが、ウサギは可愛い。
美麗は思わず笑顔になった。
(おや?意外に可愛い顔をするんだな…)
ネット上でものすごく感じの悪い女、一体どんな女が来るのかと思っていたが、素顔の美麗は、冬李の想像に反して意外なほど素直で可愛かった。
二次会のカラオケルームに移った時微妙に出遅れた美麗は座るところがなかった。空いているのは冬李の横のわずかな隙間だけだ。ものすごく嫌だったが、仕方がないので、美麗はそこに腰をおろした。今回はかなり大人数が集まったこともあり、席の移動が難しく、美麗はお開きの瞬間まで冬李の横にいることになり、2人はずっとそこで話をしていた。美麗もまた、思ったより悪い奴じゃない…と冬李のことを見直し始めていた。
その翌日から2人は毎日のようにメッセンジャーで話をするようになった。冬李が美麗に正式なパートナー関係を申し込むのには、あまり時間はかからなかった。
冬李が美麗とパートナー関係を結ぶと公表した時に、落胆したフリーのM女さんが二人もいたことに美麗は驚いていた。
「私、ほんとは冬李さん狙ってたんだから!でも…美麗ちゃんじゃ仕方ないなあ」
美麗は二人のM女さんに同じ事をいわれたので、かなりびっくりしていた。
彼女はその時まで、自分のパートナーが女性の人望を勝ち得ていることに気づかなかったのだ。
他のM女さんにしてみれば、突然舞い戻ってきた美麗に素敵なS男性を1人持っていかれて、まさにトンビに油揚げをさらわれた心境だったに違いない。
付き合い始めた頃、美麗はまだ恋愛の延長線上にいた。恋人たちのボディランゲージに少しだけ刺激を上乗せするSMごっこの域を出ていなかったと思う。
ある日突然、冬李から
「お前にほんとの縄を教えたい。堂島聖に紹介するよ」と言われるまでは…
関西でもっとも有名で、ビジュアル的にも美しい聖は縄の魔術師の異名の他に、王子様とも呼ばれていた。
初めて店に入った時、堂島聖は開口一番こう言った。
「アルコール飲んでない?」
「え?一杯だけ飲んで来ましたけど…」
「緊縛の前はアルコール飲むと危険やからね。少し時間おこう」
そして、冬李に向かって聞いた。
「ちょっとプレイ的な要素入るけど、大丈夫ですか?」
「結構ですよ」
冬李も縄が下手な訳ではないが、素人の域は出ない。プロの縄師とは一体どんな縄をかけるのだろう?美麗は興味もあり、怖くもあった。
普通の人はびっくりするかも知れないが、たいていの若い女性はブラとショーツだけになり、美しい肢体を惜しげもなく晒す。素人女性の緊縛ショーが見れると邪な気持ちで来店する輩もいるにはいるが、ここは女性の裸くらいではなんとも思わない強者の方が圧倒的に多い。当時、三十路を過ぎていた美麗は、さすがにそこまで自分の肢体に自信がなく、キャミソール姿になるに留めた。
さっきまで普通のバーのように並べてあった椅子はフォーメーションを変えられ、ちょっとしたステージが出来上がる。
フォーメーションを変えるのは、お店の女の子ではなく客の方だ。女の子が着ていた服を脱ぎ、堂島聖がカウンターから出ると、それはショーの始まりだ。
曽根崎新地の怪しい夜はこれからだった。
聖の縄は芸術的で美しく、しかも速かった。女性のしなやかな肢体がまるで魔法のように美しく縄化粧されていく。
縄に魅せられた女達の表情は恍惚としてその唇からは自然に吐息がもれた。
強く縛り上げられた時の苦痛に顔を歪めても、感じているのは心のエクスタシーだ。
美麗は初めての本格的な緊縛だったので、聖はどこまでなら大丈夫か注意深く観察しながら進めていた。聖の縄は素晴らしかった。素人女のレベルに合わせて、美麗が欲しがる絶妙な強さで必要以上の負担をかけないように考えられた縄だった。吊りを怖がる彼女に消して無理強いはせず、天井から吊り下がる縄で浮遊感だけは体験させた。
聖は放心状態の彼女を優しく抱きしめ、「美麗、良かったよ。また縛らせてな」
と耳元で囁いた。
その日から、美麗にとって聖は、パートナー以外で自分の身体と心を預けられる唯一無二の存在になっていた。
彼女にとって幸せだったのは、事が終わったあと、「よく、頑張ったね」と頭を撫でてくれる優しいパートナーがいた事だった。
冬季は消して焼きもち焼きではなかった。自分の女が他の男性と話したり、縄を受けている間、それをみて女の反応を楽しむ余裕があった。自分が縄をかけているときは、どうしてもそちらに集中してしまい、なかなか女の反応をゆっくり観察するところまでいかないので、お酒を飲みながら、自分の女がどういう表情でどんな風に啼くのか、ゆっくり観察出来るこういう時間は嫌いではなかったのだ。
実際、他の女王様が経営しているJというバーでも、ボンテージを着せて檻に入れてみたり、女王様達に彼女を玩具にさせるという禁断のショーに出演させたりしたこともある。
ただ、冬季の嗜好と美麗の嗜好は少しだけ隔たりがあった。
美麗にとって縄は性的興奮を与えられるものではなく、ひたすらに美しい芸術だった。
秘め事は人前でするものではなく、愛する人と2人で閉ざされた空間でする方がいいに決まっていた。
冬李にはよく使う馴染みのSMホテルがあった。部屋によってコンセプトが違い、美麗はどの部屋も好きだった。
たいていの部屋には梁があり縄緊縛に適しているし、ギロチン台がおいてある部屋もあった。ほんとに切れるわけではなく、首と手を差し入れて身動きがとれなくなるので、首を切り落とされる瞬間を追体験出来るのだ。
心の奥底に自己破壊的な精神を持つ美麗は、それらの玩具を気に入っていた。
とりわけ、美麗が気に入ったのは、産婦人科の診察台のような椅子に手足の拘束具がついているもので、一糸まとわぬ姿のまま拘束されて、怪しげな玩具で長時間にわたり凌辱される遊びだった。
不思議なことにこの女は、どれだけ辱しめても、どれだけ人としての尊厳を奪っても、いや、むしろそうすればそうするほどに、輝きを増し、終わったあとで柔らかな表情をみせた。
美麗はまるで、男の玩具になるためにだけ生まれてきたような女だった。
ただ、誰の玩具になるかを決めるのは、他ならぬ美麗自身であり、彼女に選ばれなければ、その表情もその声も聞くことは出来なかった。
数年に渡り、冬季と美麗の関係は何の問題もなく友好的に続いた。
ところがある日、冬季の前に1人の女が現れた。
福島県に住む資産家のマダム 円城まどかである。彼女はしっとりとした東北訛りと40歳とも思えぬスレンダーな肢体の持ち主だった。金と時間をもて余していた彼女は女磨きに余念がなかった。
かなり以前に、女の子だけのオフ会で美麗と面識があった彼女は、風の噂に、美麗が名古屋の僧侶と付き合い始めたことを知っていた。
資産家の彼女は東北から飛行機で関西に来ることなど造作もなかった。
彼女は冬季に近づいた。
「ねえ、冬季さん。私もマスカレイドに行きたいんだけど、今度連れていってくれるかしら?」
「いいですよ。じゃあ今度、美麗と三人で行きましょう」
「え?美麗ちゃんが一緒は嫌だなあ…彼女には内緒で連れていって」
彼女は持ち前の東北訛りで冬季に、そう囁いた。
「私、東北から来るから、日帰りでは帰れないわ。冬季さん、泊まるところ準備してくれますよね?」
「それでは、ホテルの部屋を二つとりましょうか?」
「冬季さん、そんなのもったいないからひとつでいいですよ。」
「ほんとに…?」
美麗は冬季を信じきっていたので、2人の間でそんな会話が交わされていた事など想像もしなかった。
マスカレイドにまどかを同伴してきた冬季を見て、聖は(美麗は知っているのか?)と釈然としない面持ちだったが、
ここは夜の街。客の事情には口をつぐむのがルールだ。
聖が見る限り、冬李とまどかは友だち同士が遊びに来たという風情に見えた。
特別な関係があるようには見えなかったが、チェックをして店を出る2人を見送ったあとに何があったかは知るよしもなかった。
それから数か月後のことだった。
美麗はまどかから電話を受けた。
「美麗ちゃん、冬季さんは貴女が思っているような男じゃないわよ。だって、あの人、私と寝たのよ。」
美麗にとっては寝耳に水だった。
美麗に内緒で2人でマスカレイドに行った事。
それからも熱いメールをたくさんもらったこと。
「今から、冬季さんが私にくれたラブレター全部転送するわ」
美麗に送られてきたのは、おびただしい数のメールで、その内容は耳を疑うものばかりだった…
「まどかちゃん…もう、わかった…わかったからもう辞めて!」
美麗は振り絞るような声で
「教えてくれてありがと…」
そう言って電話を切るのが精一杯だった。
一方、電話を切られた方のまどかは、
マルボロを1本とりだし火をつけた。細い煙をくゆらせ彼女は呟いた。
「だって、美麗ちゃん。貴女が悪いのよ。あんなに幸せそうな顔されたら、その可愛い顔を少しだけ歪ませたくなっちゃうじゃない(笑)」
円城まどか。福島県在住。その東北訛りと熟女の色香で男を惑わす魔性系美女。
まどかの略奪は、何も今始まったことではない。幸せそうなカップルを見ると、男の方にこなをかけ、相手の女との仲を引き裂いて、2人の仲が完全に壊れたのを見ると、男をさっさと捨てて次の獲物を狙いに行く女豹。
あまりのルール違反、傍若無人振りに彼女はほどなくこの大人の社交場から姿を消すことになる。
一方、その後の美麗と冬季はどうなったかというと、美麗は男の事も女の事も責めずに、ただ、静かに自分の中で壊れていった。
冬季の裏切りを知った美麗は、再び、マスカレイドにいた。荒れる美麗を馴染みの女王様達が慰めてくれていた。
「美麗ちゃん、もうすぐ聖さん来るからね!なんなら私が縛ろうか?」
「やだー(泣)こんな夜は聖の縄じゃないとダメなの!!」
ほどなくして、聖が出勤してきた。
「あ、聖さーん。美麗ちゃんがお待ちかねよ」
カウンターに入った聖に、美麗が泣きながら事の次第を話す。
話を聞いた聖が言った。
「あのね、美麗。まどかさんのような女に誘われて断れる男はいないと思うよ。でも、それは、ずっと一緒にいたいというのとは違うんじゃないかな。少なくとも私には冬季さんは美麗以外の女と付き合いたいと思っているようには見えないよ。」
「ほんとにそう思う?」
寂しくて哀しくてどうしようもない夜は、堂島聖の縄が優しく私を包んでくれる。恋愛とは少し違う。私が私になれる場所…少しだけほんの少しだけでいいから、縄と会話をしている時間だけは聖は私だけのもの…
美麗は、言葉にならない想いを抱いて、その夜は聖の縄に身を預け、自分の心と身体が少しずつ浄化されるのを感じていた…
その後、紆余曲折を経て、元の鞘に戻った冬季と美麗の最後はひどく穏やかなものだった。
2人の息子の大学進学が重なるため、1年程大阪には来れない。その間、男友だちやマスカレイドで遊んでいてもいいから待っていて欲しいという冬季に対して、美麗は即答で「パートナー関係を解消して下さい」と言った。
冬季、貴方のことは好きよ。でも、先の約束を待てるほど、私は若くない…
私だっていつまで女でいられるかなんてわからないもの…
パートナー関係を解消すると発表した冬季と美麗は、最後の思い出にマスカレイドを訪れた。2人のあまりの仲のよさに、聖は「別れると聞いていたんだが、あれは聞き間違いか…」とひとり呟いた。
だが、それ以来、冬季は2度とマスカレイドに来ることはなかった‥
その後、美麗はあまり時を待たずして、とんでもない男と知り合うことになるが、それはまた別の話‥
fin.
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