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後編
思いもよらぬ出来事…
しおりを挟むそれから、更に数ヶ月が過ぎ、年も明けてしまっていたが、舞花の体調は相変わらず芳しくなかった。色んな病院で検査や投薬をしてもあまり改善が見られず、西洋医学ではなく、東洋医学の方面での治療に切り替えたのは年があけて、しばらくした頃のことだった。
その頃、沙也加は、自分からの返信があろうとなかろうと、定期的に近況報告をしてくる舞花から全く連絡がなかった事が気がかりだったが、彼女も日々の仕事に忙殺されて、ついつい連絡をしそびれていた。
実家に帰ることは聞かされていたので、一度お見舞いに行ってみようとは思っていたので、自分のスケジュールの空いている日を探していた。
なんだか、妙な胸騒ぎがする…
あの日、月野resortで感じた、黒い影とは距離が出来たようだが、まだ、遠くからじっと様子を伺っているような…
やっぱり、一度占った方がいいかも…
「舞花、連絡しようしようと思っていたのに遅くなってごめんね🙏あれから体調どう?一度お見舞いに行きたいんだけど、行っても大丈夫?」
舞花から返信があったのは、1週間も過ぎてからだったが、
「治療法を変えてから、少し回復の傾向が見られているので、来てもらっても大丈夫だよ。私も沙也加に相談したいことがあるの…」
沙也加は平日の昼間にお見舞いに行くことを約束した。
そして、その日。沙也加は、とっておきのタロットや商売道具を持参して、舞花の元を訪れた。彼女は、少し痩せてやつれてはいたが、思ったよりは元気そうで、ようやく身の回りの事が出来るようになったという。母親は留守のようだった。
沙也加の手土産の地元では有名なパティシェの作ったケーキとローズヒップティーでお茶をすることにした。
雑談もそこそこに、舞花は本題を切り出した。
昨年、彼女を襲った災難の数々は、今までこの小説でご紹介した通りなのだが、この話には、まだ驚くべき後日談があったのだった…
それは、今年に入ってからの事だった。
体調不良やストレスで、しばらく、自分のYouTubeを放置していた舞花だったが、たいした動きは無いだろうが、そろそろチェックしとかなきゃ…と久しぶりに自分のYouTubeを確認してみた。
(え…?何なの?これ…)
体調不良で更新が出来なかった為、
初期の頃の歌を何曲か療養中にアップロードしていたのだが、その曲のコメント欄に、某スタジオ代表とおぼしき人から、1週間に渡る事実無根の中傷コメントが羅列されていたのだ。
もちろん、舞花はその人を全く知らない。にもかかわらず、その人が言うことには、舞花が彼のスタジオを臭いとか汚いとか罵ったメールを何度も送り付けてきたような事が書かれていたのだ。
YouTubeのコメントは後で編集や削除をすることが可能である。
「これが彼女の本性です。この歌声でこの文章ですよ?」と舞花ではない別の女性シンガーから送られたと思われるメールを貼り付けた形跡もあった。
その時には、メールの内容は削除されていて読むことは出来なかったが、彼の怒り具合から察するには、よほどの暴言が書かれていたと思われた。
しかも、彼の書き込みは話題のコメントとして大勢の人に閲覧されており、皮肉な事に舞花のその曲は、1日で100回再生を超えるほどの話題となっていた。
何億再生とかを見慣れている方々には100回再生されたからって何なの?と思われるかもしれないが、今は、音楽は全く売れない時代で、プロでさえ音楽だけで食べていけるのはひと握りだ。
無名の素人で、全く宣伝もしていないミュージシャンの音楽が聴いてもらえる確率はほとんどといっていいほどなかったのである。
一日で数回、よくて数十回回れば良い方である。
売れてない人なら、ライブハウスで定期的に音楽活動をしていてさえ、1年かけてようやく3桁にのるかのらないかというのが現状であった。
(ちなみにYouTubeは同じ人が連続再生しても1日1回としかカウントされない)
予想もしなかった出来事に、舞花の動悸は激しくなった…
(一体どういうこと…?私と同じ名前の女性シンガーと勘違いしてる…?それとも歌声が酷似していた…?)
パニックを起こしながら、とりあえず、その人のYouTubeを報告し削除した。
どういうことか本人と連絡をとろうにも連絡先もわからなかったので、他に出来ることはなかった。
勘違いで人のYouTubeを攻撃するなんて…いい迷惑だわ。この人も早く人違いであることに気づいてくれたらいいけど…
その時はまだ、舞花は彼とトラブルのあった、どこかの女性シンガーが舞花と同じ名前か、歌声が酷似している為、彼が間違えて攻撃してきたのだと思っていた…
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