Energy vampire

紫苑

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前編

心ここに在らず

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「舞花、ラウンジでカクテルサービスあるらしいから行こうよ。」

「あ…うん!」

色浴衣に身を包んだ2人は本館の最上階にあるラウンジでカクテルを傾けていた。

その時だった。LANDYからrailが入ったのだ。話は今でなくてもいいような話だったのだが、舞花は口数が少なくなってrailのやり取りを始めた。

沙也加はしばらく、彼女のそんな様子を見ていたが、舞花の背後に黒い影がピッタリと張り付いている…あまりタチのいいものではなさそうだ…と感じていた。

2日目。月野resortの朝は快適だった。緑の木々と山と渓流。部屋の窓から自然の美しさを堪能し、早朝のまだ、誰もいない通路を渡り、大浴場に向かった。朝の弱い沙也加は朝風呂は部屋の露天で入るからいいというので、舞花1人でその静寂を堪能していた。1人、広々とした露天風呂に浸かりながら、頭の中ではぼんやりと次の新曲の歌詞のフレーズを考えながら、いまいちピンと来ないなぁとか、LANDYさんならどう表現するだろうか等と、気が付けば、意識は音楽というか、彼に向いてしまう…

ここ数ヶ月、他の作曲家さんよりも圧倒的にLANDYに割く時間が多かった。
一言質問するだけで、とてもたくさんの言葉が返ってくる。結果会話が終わらない。その繰り返しが続いていた。

ぼんやりと彼の事ばかり考えていると、思ったより長風呂になり、朝食の予約時間が迫ってきた。舞花は湯上り処のジュースを1杯飲むと部屋に向かった。

部屋に戻ると、沙也加は既に化粧をしている最中だった。舞花も手早く薄化粧をして身支度を整えた。

新緑の季節。朝は少しひんやりとしていたが、渓流ぞいのテラスで食べる朝食は絶品だった。木製のバスケットは3段重ねになっていて、中からは外でも食べやすい器に入れられたサラダやデザート、サンドイッチなどが入っている。
朝食ブッフェも選べたのだが、舞花は圧倒的にこちらの方が良いと思った。

美しい大自然の流れを見ながら、木漏れ日と木々の緑に囲まれた場所で食べる朝食は開放感があり、とても良かった。

帰りたくないなあ…もっとここにいたいと思わせるのに充分なシチュエーションがそこにあった。

その反面、舞花は、今夜はいつもの自分に戻って、LANDYからの連絡に備えたいという相反する想いもあったのだが。

一方、沙也加の方は舞花が今回の旅の間中、どこか、心ここに在らずだったことを見抜いていて、しばらく、今までより頻繁に連絡を取った方がいいかもと思っていた。

「沙也加、ありがとう(*ˊ˘ˋ*)めちゃくちゃ楽しかった♡」

「こういう案件はちょくちょくあるから、また良いのがあれば声かけるね。私も今回、舞花が来てくれて助かったし(*^_^*)」

「喜んでお供します(笑)」

舞花を家の近くまで送った沙也加は、軽く手を上げて、(*>∀<)ノ))またねーと去って行った。夢のような時間はあっという間に終わってしまった。
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