Energy vampire

紫苑

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前編

プリンセスさあや

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  沙也加は売れっ子のオラクルヒーラーである。幼少期から霊感霊視の能力に長けていて、高校時代には恋占いをしてもらいたい女子に囲まれ、大学に入る頃にはプリンセスさあやという名でプロの占い師となっていた。得意なのは霊感霊視タロットで的中率も凄かったために、彼女は瞬く間に人気占い師の仲間入りをしていた。若いうちに成功を収めた彼女は持ち前のゴージャスな美貌と才能に恵まれたラッキーガールだった。

35歳を過ぎた今でもその美貌と人気は健在である。しかし、ずっと仕事中心の生活をしていた為、誰と付き合っても長続きはしなかった。

つい最近も見栄えだけ良い年下のヒモのような彼氏と別れたばかりだったのだ。

「さて、どうしようかな…?」

リニューアルしたての隠れ家風の宿のプロモートのオファーが入っていたが、突然彼氏と別れた為に、一緒に行くパートナーがいなくなった。

個室露天風呂付きの極上宿なんて男と行く方がいいに決まっているが、たまには女友達とまったりも良いかな?

そう言えば、高校時代からの親友の舞花が、音楽系YouTube始めたとか言ってったっけ?URL送られてきてたのにまだ聴いてもいないや(^_^;) 久しぶりに連絡してみるか…

「もしもし、舞花?久しぶり!」

「え?沙也加?珍しいやん。そっちから連絡くれるなんて」

どこへ行っても目立つ沙也加と対照的な舞花だったが、どういうわけか昔から気が合った。年こそ同じだったが、童顔で愛くるしい舞花のことを沙也加は妹のように可愛いと思っていたのだ。

沙也加は手短に、今回のオファーの内容を話した。顔出しなどは必要なく、カメラを回す手伝いとかしてくれたら、あとはゆっくりお宿満喫出来るから、一緒に行こう!というお誘いだった。

舞花にしてもこれは願ってもないお誘いだったので、二つ返事でOKした。
 
以前から憧れていた月野resort。
しかし、平日でも1泊10万円は下らない
宿に泊まるのは、庶民の舞花にはとうてい無理だった。仕事と家の往復で、休みの日はレコーディング三昧の日々だったので、この辺で少し息抜きするのはいいかも知れない…

ただ、LANDYに出かけるというのは何故か憚られた。前日のうちにたくさん話しておけば1日くらい連絡しなくても不自然じゃないよね?

舞花はこの所、彼への連絡を1日置きにするとか、少し間隔を開けようと考えていた。このままだと煮詰まるのは目に見えていたからだ。

しかし、自分が連絡を自粛しようとしても、LANDYの方からなんらかの問い合わせが入るのが日常となっていて、話し出すと長くなるので、どこで終われば良いのか分からなくなっていたのだ。

月野resortへの1泊旅行が決まった舞花は、次の週は全ての音楽活動を休止して自分の部屋を片付けたり溜まっていた家事をしたりした。久しぶりに自炊もして、何だか少しスッキリした気分になっていた。これからは音楽活動はセーブしていこうと考えていた折に、調度良いタイミングで音楽パートナーであるTatsuyaから本職が忙しくなってきたので、しばらくお休みしたいとの連絡が入った。他の人とのコラボも一段落して、ようやくひと心地つけそうな事に、正直なところほっとしていた。

旅行中は音楽のことは考えない!LANDYのことも考えない!メリハリをつけようと舞花は心に決めていた。

旅行当日。沙也加は真っ赤なランボルギーニで舞花を迎えに来た。艶やかな彼女でないと似合わないようなかっこいい車だ。舞花は助手席に座り、久しぶりにわくわくした気持ちで車窓を眺めた。途中何回かサービスエリアに寄り、なんでもないご当地のお土産ものを見るだけでも楽しかった。railで連絡こそ取り合っていたが、顔を合わせるのは本当に久しぶりだ。2人は学生時代のように楽しく語り合いながらドライブ旅行を楽しんだ。

目的の場所は小高い高原にあり、周りは美しい自然と川のせせらぎでヒーリング効果は満点だ。

舞花は今夜泊まる部屋の広さと和モダンな雰囲気に目を見張った。自力ではとうてい来れなかったであろう最高級なおもてなしの数々。舞花もこの日だけは、自分にもシンデレラの魔法がかかった気がしていた。

(こんなところで、のんびりと誰の目も気にせずにLANDYさんのギターの音色を聴きながらまどろめたらどれだけ幸せだろう…)

LANDYの事は考えないと決めて来たのに、気づいたらふと考えてしまう。

アロマの香る極上の空間。最高のエステ。地産地消の創作料理の数々。
全てが素晴らしかったのに、舞花の心の片隅には絶えず彼の影がチラついていた。

大浴場の方も、個室露天も満喫して夢のような1日は既に終わりかけていた。

    
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