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前編
彼の中の闇
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「日本製の買ったのに、トリセツ英語やん!私に使いこなせるのだろうか?(^_^;)」
舞花は自宅で独り言を言いながら、録音機材と格闘していた。それでも、なんとか基本の使い方がわかり始めたので、試しに自分の歌声をマイクで録音してみた。カラオケマイクと全然違う。まず、エコーがないし、キー操作も出来ない。ヴォイストレーニングだって必要だ。初心者の舞花は、LANDYがいれてくれた仮歌のフルバージョンを聴きながら練習をした。
結局、あの日、彼は休みの半日を潰して、歌詞の手直しや、伴奏も、アコギのジャカジャカより、アルペジオの音色の方がいいと伴奏も取り直してくれたのだった。当初の仮歌よりスローでメロディアスな曲調に落ち着いた。
舞花は、LANDYが修正してくれた歌詞の一説をひどく気にいっていた。
女の舞花には出てこないフレーズだったからだ。
作詞家と作曲家ってどこか夫婦に似ている…彼のようなへんくつな人でさえ、曲をつくる時は、しっかりと作品を抱き締めて完成させてくれるのだ。
顔も知らない、どこの誰かもわからない相手なのに、彼から渡された最終形態の音楽とフルバージョンの仮歌を聴いた時、まるで舞花自身がその大きな手で抱き締められたかのような錯覚を覚え、息が止まりそうになったのだ。
何かの芸術を誰かと作り上げる時に融合する感じは、男女の営みとよく似ている…たいして恋愛経験もない舞花だったが、そんな感覚を覚えていた。
しかし、それは他の作曲家さんとの音楽の打ち合わせでは感じることのない感覚で、いくら大人びたところがあると言っても相手はまだ子供だ。恋愛感情とは少し違う…まるで前世から知っているような…こういうの何て言ったか…
そう…まるでツインレイみたいだ。
とはいうものの、LANDYは凄く変わった青年だった。クリエイティブなことをする人って変わり者が多いのかも知れないけど、彼の変わり方は、どこかずれていて、妬みや嫉みの感情が強く、他人のことになると酷く毒舌なのに、自分のことを指摘されようものなら、硝子細工のようにもろく傷つく。大変真面目で努力家だけれども、どこか空回りしている。
プライドが異常に高く、怒りっぽい。でもそれは自信のなさの裏返し…昭和の男のように、がんこで男尊女卑の感情、人間嫌悪や人間不信も強かった。
どんないじめだったのかはわからないが、学生時代に苛められていたみたいで、オーバードーズを繰り返す少年だったと。ショートスリーパーで、睡眠は短時間でも平気だが、眠ると悪夢を見るらしい。クラス替えがあってクラスのメンバーを見ると、歴代の嫌いな奴が勢揃いしていて自分の悲鳴で目が覚めるとか…
どういうわけか、LANDYは舞花の前では自分を繕わなかった。ありのままの決して誉められた性格ではない嫌な自分をそのまま出していた。
舞花はどんなLANDYでも、それを彼の個性と理解し受け止めた。
他の女ならば、とっくの昔にドン引きしていたであろうことでも、その頃の舞花にとっては、彼の中の闇を知る、非常に興味深い事柄だったのだ。
舞花は自宅で独り言を言いながら、録音機材と格闘していた。それでも、なんとか基本の使い方がわかり始めたので、試しに自分の歌声をマイクで録音してみた。カラオケマイクと全然違う。まず、エコーがないし、キー操作も出来ない。ヴォイストレーニングだって必要だ。初心者の舞花は、LANDYがいれてくれた仮歌のフルバージョンを聴きながら練習をした。
結局、あの日、彼は休みの半日を潰して、歌詞の手直しや、伴奏も、アコギのジャカジャカより、アルペジオの音色の方がいいと伴奏も取り直してくれたのだった。当初の仮歌よりスローでメロディアスな曲調に落ち着いた。
舞花は、LANDYが修正してくれた歌詞の一説をひどく気にいっていた。
女の舞花には出てこないフレーズだったからだ。
作詞家と作曲家ってどこか夫婦に似ている…彼のようなへんくつな人でさえ、曲をつくる時は、しっかりと作品を抱き締めて完成させてくれるのだ。
顔も知らない、どこの誰かもわからない相手なのに、彼から渡された最終形態の音楽とフルバージョンの仮歌を聴いた時、まるで舞花自身がその大きな手で抱き締められたかのような錯覚を覚え、息が止まりそうになったのだ。
何かの芸術を誰かと作り上げる時に融合する感じは、男女の営みとよく似ている…たいして恋愛経験もない舞花だったが、そんな感覚を覚えていた。
しかし、それは他の作曲家さんとの音楽の打ち合わせでは感じることのない感覚で、いくら大人びたところがあると言っても相手はまだ子供だ。恋愛感情とは少し違う…まるで前世から知っているような…こういうの何て言ったか…
そう…まるでツインレイみたいだ。
とはいうものの、LANDYは凄く変わった青年だった。クリエイティブなことをする人って変わり者が多いのかも知れないけど、彼の変わり方は、どこかずれていて、妬みや嫉みの感情が強く、他人のことになると酷く毒舌なのに、自分のことを指摘されようものなら、硝子細工のようにもろく傷つく。大変真面目で努力家だけれども、どこか空回りしている。
プライドが異常に高く、怒りっぽい。でもそれは自信のなさの裏返し…昭和の男のように、がんこで男尊女卑の感情、人間嫌悪や人間不信も強かった。
どんないじめだったのかはわからないが、学生時代に苛められていたみたいで、オーバードーズを繰り返す少年だったと。ショートスリーパーで、睡眠は短時間でも平気だが、眠ると悪夢を見るらしい。クラス替えがあってクラスのメンバーを見ると、歴代の嫌いな奴が勢揃いしていて自分の悲鳴で目が覚めるとか…
どういうわけか、LANDYは舞花の前では自分を繕わなかった。ありのままの決して誉められた性格ではない嫌な自分をそのまま出していた。
舞花はどんなLANDYでも、それを彼の個性と理解し受け止めた。
他の女ならば、とっくの昔にドン引きしていたであろうことでも、その頃の舞花にとっては、彼の中の闇を知る、非常に興味深い事柄だったのだ。
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