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第三章
昔むかし今。5(第三章・終)
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ライブが行われる公園は、野球場くらいの広さだ。
たまに市主催のイベント会場にもなるらしく、一角にステージが設けられていた。鬼さまはここでやろうとしているらしい。地面は芝生がきれいに生えそろっていて、ところどころにスプリンクラーが設置してあった。
ステージの上にはテントのような屋根があり、両端の袖の部分にはちょっとした着替えなどもできる控え室も用意されている。テント屋根を支える鉄骨部分にはライティングセットが控えめにおまけ程度についていた。
前日ではなにも出来なかろうと、先回りして会場を見に来た木山は、どこにしよう、とステージ近くで辺りを見回した。
「やはり、ステージの上は見渡せないと……あとそれから……」
そう言って手にした小さな塊を、目に付きにくいところを選んで両面テープで貼り付けていく……が、十個ほどくっつけたところで、雲行きが怪しくなってきた。
「ま、こんなところか。今夜は雨の予報だが、当日は晴れるはずだしな」
大きなバッグを抱え直し、木山は小走りで自転車置き場へと走って行った。
それから三十分も経たないうちに、そこへ現れたのは鬼さまだ。
裏手の墓地の方に墓地と共用の大型駐車場がある。自転車置き場はもう少し公園寄りなので、時間が被っていたとしても、ここで擦れ違ったりは避けられただろう。そこへミリタリーカラーのジムニーシエラで乗り付けると、下りてそのまま墓地の方へと向かった。
「どこまで進んでんだ? ちゃんとうまく埋めたんだろうな?」
声を掛けた先には女性がひとり、入り口近くの水道で手足を洗っていた。Tシャツにショートパンツ、足元はサンダルという身軽な服装だが、それが似合う健康的なスレンダー美女だ。呪い師の助手よりは山奥の怪しい兄ちゃんとキャンプしている方がサマになりそうでもある。
「ちゃんと自力で起き上がれて、ちょっとした雨でも流されない程度の深さ、でしたね。大丈夫です。言いつけ通りに出来ました」
女の言葉はあまりにも機械的だった。よくよく見れば表情も硬い。
「はい、よく出来ました、と。じゃ帰るぞ」
式だった。
鬼さまが投げキッスとともに息を吐くと、女はひらひら、と紙に戻って地面に落ちた。
洗い場で飛んだ水飛沫の中に落ちて濡れると、鬼さまは小さくため息を漏らす。
「しくったなぁ。せっかくここまで好みに育てたってえのに……あ~あ、また仕込み直しかよぉ」
頭をかりかりと掻きながら、濡れた式をそのまま踏みにじってぼろぼろにして、使えないようにした。あくまでも道具、と割り切っているらしい。
「まぁいい。これであとは、当日、適当に踊らせて、喰らうだけだな。あいつ、釣られてくるかねぇ……ちょいトロそうだったしな。もしこの俺ちゃんに気付いてくれてねぇままだったら、鬼ぃちゃん泣いちゃう~……なぁんつって」
だはははは、と品なく大笑いして、会場となる公園の方を見渡す。
「管理人には金ぇ握らせたし、カメラちゃんたちは慣れた式だしな」
楽しみだなぁ~と鼻唄混じりに鬼さまは車へと向かった。
車に乗り込むと、フロントガラスにぽつぽつと水滴が落ち始める。今夜だけのようだから、明日晴れれば地面も乾くだろう。かえって良い塩梅のお湿りになってくれそうだ、と口元を歪ませた。
たまに市主催のイベント会場にもなるらしく、一角にステージが設けられていた。鬼さまはここでやろうとしているらしい。地面は芝生がきれいに生えそろっていて、ところどころにスプリンクラーが設置してあった。
ステージの上にはテントのような屋根があり、両端の袖の部分にはちょっとした着替えなどもできる控え室も用意されている。テント屋根を支える鉄骨部分にはライティングセットが控えめにおまけ程度についていた。
前日ではなにも出来なかろうと、先回りして会場を見に来た木山は、どこにしよう、とステージ近くで辺りを見回した。
「やはり、ステージの上は見渡せないと……あとそれから……」
そう言って手にした小さな塊を、目に付きにくいところを選んで両面テープで貼り付けていく……が、十個ほどくっつけたところで、雲行きが怪しくなってきた。
「ま、こんなところか。今夜は雨の予報だが、当日は晴れるはずだしな」
大きなバッグを抱え直し、木山は小走りで自転車置き場へと走って行った。
それから三十分も経たないうちに、そこへ現れたのは鬼さまだ。
裏手の墓地の方に墓地と共用の大型駐車場がある。自転車置き場はもう少し公園寄りなので、時間が被っていたとしても、ここで擦れ違ったりは避けられただろう。そこへミリタリーカラーのジムニーシエラで乗り付けると、下りてそのまま墓地の方へと向かった。
「どこまで進んでんだ? ちゃんとうまく埋めたんだろうな?」
声を掛けた先には女性がひとり、入り口近くの水道で手足を洗っていた。Tシャツにショートパンツ、足元はサンダルという身軽な服装だが、それが似合う健康的なスレンダー美女だ。呪い師の助手よりは山奥の怪しい兄ちゃんとキャンプしている方がサマになりそうでもある。
「ちゃんと自力で起き上がれて、ちょっとした雨でも流されない程度の深さ、でしたね。大丈夫です。言いつけ通りに出来ました」
女の言葉はあまりにも機械的だった。よくよく見れば表情も硬い。
「はい、よく出来ました、と。じゃ帰るぞ」
式だった。
鬼さまが投げキッスとともに息を吐くと、女はひらひら、と紙に戻って地面に落ちた。
洗い場で飛んだ水飛沫の中に落ちて濡れると、鬼さまは小さくため息を漏らす。
「しくったなぁ。せっかくここまで好みに育てたってえのに……あ~あ、また仕込み直しかよぉ」
頭をかりかりと掻きながら、濡れた式をそのまま踏みにじってぼろぼろにして、使えないようにした。あくまでも道具、と割り切っているらしい。
「まぁいい。これであとは、当日、適当に踊らせて、喰らうだけだな。あいつ、釣られてくるかねぇ……ちょいトロそうだったしな。もしこの俺ちゃんに気付いてくれてねぇままだったら、鬼ぃちゃん泣いちゃう~……なぁんつって」
だはははは、と品なく大笑いして、会場となる公園の方を見渡す。
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