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18巻
18-2
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ついに官僚たちは立ち上がり、手元にあるあらゆるものを投げ合い、机を乗り越えて殴りかかる。
こうした場での殴り合いは、皇国建国以前からの伝統とされており、はじまりは初代皇王の軍勢における軍議だったという。
この流血茶飯事の伝統については、時代を経るごとにおとなしくなっていくが、この頃はまだその兆しさえ見えていなかった。
官僚たちの背後から力自慢技自慢の官僚見習いたちが躍り出て、別の官庁の見習いたちと殴り合う。殴り合った結果何が得られるというわけでもないのだが、少なくとも負ければ失う名はある。
局長などの高級官僚たちは、部下の邪魔にならないように部屋の隅に逃れる――部屋から出ることは負けを意味する――が、中には腕力と胆力で地位を駆け上った古強者もいる。彼らは若者に交じり、この伝統的な争いに率先して参加していた。
そうした者たちはどこの官庁にもいるから、彼らは彼らで達人同士の果たし合いといった風の戦いを見せる。
公の場で魔法の使用が可能だった時期でもあり、魔導師たちが味方の身体機能を強化する詠唱も聞こえてくる。
そんな中でも、フィリップスは平静を保ったまま議場を眺めていた。
彼は、凡庸な王だった。
これは後世の研究でも明らかで、彼ほど消極的だった皇王は他にいない。
皇国を大きく変化させなかったという意味での非積極的な皇王は他にもいたが、消極的と評される皇は彼ひとりである。
そんな彼が皇太子として見出されたのは、帝国との戦いが終わった直後のことだ。
前提として、その生涯が総て明らかになっている皇王は、第一〇代皇王レクティファールまで数えた一〇人のうち、六人。
他の四人は、生まれすら定かではなく、基本的に〝白〟として大神殿に現れた時点からの記録しかない。
そうした点では、生涯を生まれから辿れるフィリップスというのは、非常に地に足のついた存在である。
彼の生まれは旧帝国の農村で、そこで私塾を開いていた役人兼業農家の息子として生まれた。一〇人兄弟の次男という田舎では珍しくない大家族の一員として幼少期を過ごし、兄弟の中でもっとも頭が良かったために、父の伝手で帝都の寄宿学校へと入学することになった。
他の兄弟といえば、健康に育った七人のうち家を継いだ兄が農家。弟ふたりは軍へ、妹四人は当たり前のように各地へと嫁に出された。
彼が帝都で過ごしている間に、彼の家は両親と兄夫婦、そして兄の子どもたちが暮らす形へと変化していった。
それは、当時の農村部ではさほど珍しくない光景だ。
人々は当たり前のように日々を過ごし、当たり前のように命を繋いでいた。
フィリップスはおそらく、自分もそんな当たり前の一部になるのだろうと漠然と考えていたが、歴史はそれを許さなかった。
皇国暦前五年、旧帝国暦二〇五六年、帝国にて施行された亜人排斥の法に対し、各地で反乱が勃発。
当初軍の動員によってあっさり終了するであろうと考えられていた戦乱は一年、二年と続き、人々がそのことに困惑しはじめた頃――学校を卒業し、地方官吏として現在の皇国方面の小さな村に役人として赴任していたフィリップスは、反乱軍のひとつに村を占領された。
初代皇王が率いる諸族連合軍だ。
龍族や幻想種というお伽噺の存在を擁する、後の皇国の礎となる組織だった。しかし、このときは一〇〇〇程度の小規模な集団に過ぎなかった。
フィリップスは、この時点ではまだ帝国が敗北するとはまったく考えていなかった。
そう考えるのも当然だ。当時の帝国はアルマダ大陸の総てを支配し、その動員兵力は一〇〇〇万とも二〇〇〇万とも言われていた。
いくら強力な種族が加わっていようと、総数が一〇〇〇かそこらの反乱軍が帝国を打ち崩すなど考えられるはずがなかった。
フィリップスはそう考えて、帝国軍が反撃するまでなんとか村を守ろうと初代皇王と交渉し、成功した。
村の蓄えのいくらかを提供する見返りに、手荒な真似は控えられた。
村の若者のうち、帝国の政治に不満を抱いていた者が数名、諸族連合軍に加わったりもしたが、帝国に対しては、村を守るためという言い訳で名目は立つ、とフィリップスは考えていた。
その際、どんぶり勘定この上なかった諸族連合軍――なんと初代皇王自身が数字仕事をしていた――の手伝いをしていたが、彼に危機感などほとんどなかった。
そうした部分を見ても、彼は平凡だったのだろう。
彼が忠誠を誓った帝国政府が、彼のいる村を反逆者に与したと断罪し、討伐の軍勢を差し向けるまでは。
その戦いは、『リューベン包囲戦』として戦史に残っている。
討伐軍は、リューベンというそこそこの大きさの村に諸族連合軍を閉じ込め、村人ごと燃やし尽くそうとした。
それに対して諸族連合軍は、主力の大半と、少数で人間のみの構成というふたつの部隊を作り、それぞれ陽動部隊と伏兵部隊とした。
陽動部隊が包囲突破を図るように見せかけ、そこに帝国軍が戦力を集中させる中、人間のみの伏兵が帝国軍兵士のふりをして敵司令部を奇襲、撃破する。
諸族連合軍が人間種以外で構成された反乱軍である、という敵の認識を利用した策だった。
フィリップスは、この作戦で初代皇王とともに伏兵部隊にいた。
彼の心変わりの理由は明らかにされていないが、彼の平凡ながら優秀な頭脳が、帝国で今後の人生を送ることの危険性を導き出したというのが、史学者たちの結論だった。
平凡であるがゆえに安息を望み、優秀であるがゆえに帝国にあってそれが叶わないことを理解してしまったのだろう。
以降のフィリップスは、諸族連合軍の経理担当として名前が残っている。
この肩書きは、諸族連合軍の拡大によって徐々に重苦しいものへと変化していったが、その頃でもまさか皇太子などというものになるとは思っていなかっただろう。
彼が届けるあてもなく書き綴った家族への手紙にも、それは示されている。
彼が手紙に書いたのは、大きく三つ。
自分は諸族連合軍とともにいるが、国を裏切ったわけではないこと。
家族へ迷惑をかけることへの詫び。
そして、この戦いが終わったら、故郷へ戻ってのんびりと過ごしたい――これまた平凡な願いだけだった。
彼は足かけ五年、諸族連合軍とともに戦場を駆け抜けた。
帝国の常識を弁えた彼がいなければ、諸族連合軍の進軍はもう少し滞っていただろう。もっとも、それは後世から見た結論であり、当時の彼は、自分がいなければ諸族連合軍はならず者集団に成り下がるという危機感を抱いていた程度だ。
そんな考えが事実かは分からない。
事実としてあるのは、諸族連合軍がやがて他の反乱軍の一部を糾合して一大勢力となり、旧帝都への奇襲をもってアルマダ帝国という汎大陸国家を崩したことだけ。
その時期にはもう、彼は諸族連合軍の行政官として人々に認知されていた。これでは故郷に帰るのも難しいかと思いはじめ、なんとか初代皇王に平凡な余生を認めてもらおうと決意したのは、〈アルトデステニア皇国〉建国から二年後のこと。
平凡な決意を胸に初代皇王のもとへ赴いた彼だが、それが叶うことはなかった。
白い髪を持つ彼は、その場で皇太子に任ぜられ、呆然としている間にエルメイレ山へと連れていかれ、そこに存在した四界の主を祀る社にて立太子の儀を行った。
彼は、皇太子となった。
そして彼は知る。
〈皇剣〉という遺失兵器の危険性と、初代皇王に残された命数を――
初代皇王の崩御は、皇国暦二五年の初秋のことだった。
秋風によって木々の色が移り変わる頃、初代皇王は政務を行うことができなくなり、ひと月の後、この世界から消え去った。
歴代皇王としては第九代、第三代に続く短い治世である。
初代皇王が皇国に残したものといえば、意外にも大半が文化的遺産であって、政治的な財産といえば国是ひとつだけと言える。
彼の為政者としての能力はあまり高くなく、しかし何処かの高度な技術体系の知識を持っていた。そのため、文化的側面で多くの遺産を遺すことになったのである。
彼は最初に彼を見つけた白龍妃に礼を言い、他の家族への別れを済ませると、すぐにフィリップスを呼び出した。
フィリップスは初代皇王に対し、自分ではなく皇妃たちと過ごすべきだと説いたが、初代皇王はそれを受け入れず、フィリップスが見守る前で消滅した。
いずれ自分もこうなるのだという恐怖を最後に、フィリップスは〈皇剣〉を受け入れる。
服喪の後、彼は第二代皇王として人々の前に姿を現し、〈アルトデステニア皇国〉が〈皇剣〉によって継承される国であることを内外に宣言する。
それは、かの独立戦争を初代皇王とともに戦った――と、されていた――人物の言葉として深く受け入れられ、偉大なる若者のあとを継いだフィリップスは、大過なく皇国を統治した。
ただ、やはり彼は内政家だったのだろう。
第二代皇王の時代、皇国は軍事的には停滞した。周辺国に合わせて、新たな兵器こそ開発されていたが、軍備は必要最低限に留められており、皇王と軍の関係は決して良好とは言えなかった。
それでもフィリップスは名君として称賛された。
彼は、初代皇王がやり残した国内の開発を進め、耕作地を増やし、鉱山を開き、港を作った。その手腕は誰が見ても優れたもので、国民は盈満な生活を送れるようになったことを喜んだ。
かつて住む場所を追われた自分たちが、豊かな土地を与えられ、そこで誰に命を狙われることもなく生きることができるようになったのだ。民がフィリップスを褒め称えるのも当然だった。
しかし先に述べたとおり、彼と軍との関係は決して良くなかった。
彼は、軍事的行動の価値を最後の最後まで理解できなかったのである。
彼は内政家だった。
いや、内政家でしかなかった。
軍とは如何なるもので、それがどのような意味を持つ集団であるのか、辞書的な意味以上のことをまったく理解できなかった。
もしも彼に軍への理解があれば、皇国の歴史は大きく変わっていただろう。
以降二〇〇〇年にも亘る北の人類国家との戦争は起きなかっただろうし、二〇〇〇年後に彼の正統なる後継が一度途絶え、国が存亡の危機に立たされることもなかったに違いない。
そんな彼にもっとも強く反発したのが、彼の直接の後継者である皇太子エリザベーティアだった。
「殿下! おやめください!」
国防予算に端を発した議場の騒がしさとは別の騒動が、議場と廊下を隔てる扉の前で発生していた。
突然現れたエリザベーティアが、そのまま議場へと入ろうとしていたのだ。
「どきなさい。あなたたちにわたしを押しとどめる権限はないはずです」
エリザベーティアがそう衛兵たちを睨みすえる。これには経験豊富な衛兵であっても、怖気を感じずにはいられなかった。
「もう一度言います。そこをどきなさい」
エリザベーティアが言葉を重ね、一歩を踏み出す。
衛兵ふたりは一歩後退り、踵が壁にぶつかった。
猛獣を前にしても、これほどの恐怖は感じないだろう。
相手はまだ〈皇剣〉を継承していないはずなのに、自分よりも遥かに巨大な生物を前にしているかのような錯覚を覚えた。
衛兵ふたりは喉を鳴らし、しかしその職務を放棄することはしなかった。
しかたなくエリザベーティアが直接手を出そうと結論付けたそのとき、扉の向こうから低い声が響いた。
『――通しなさい』
フィリップスの声だった。
「は……ははッ」
衛兵ふたりはすぐに扉に手をかけ、エリザベーティアの入室を叫ぶ。
「エリザベーティア皇太女殿下、おなりです!!」
扉が開かれ、先ほどまで取っ組み合いをしていた官僚たちが、威儀を正してエリザベーティアを出迎える。
床に散らばった書類と官僚たちの顔に浮かんだ痣が乱闘の激しさを感じさせるが、エリザベーティアにしてみれば大した問題ではなかった。
彼女は立太子以降の大半の時間を、戦場で過ごしている。
それは、軍才に恵まれなかったフィリップスの代理としてであり、彼女自身の望みからだった。
「エリザベーティア、なんの用か。報告は軍からすでに受けている。儀礼的なやりとりは嫌いだっただろう?」
議場を突っ切って自分に向かってくるエリザベーティアに、フィリップスが訊く。
本来ならば、皇太子の戦場からの帰還には、皇王への報告を主とする式典がある。だが、エリザベーティアはその面倒を嫌い、フィリップスもまた常に戦場を駆けている後継者への負担を少しでも軽減すべく、式典を四半年に一度と大幅に減らしていた。
「わたしが陛下に奉呈いたしました予算案について、ご理解いただけなかったと聞きましたので、直接ご説明しようと参じた次第です」
エリザベーティアの言葉に、フィリップスは大きく溜息を漏らした。
こうなるであろうと思っていたから、エリザベーティアが帰還する前に予算案を決着させたかったのだ。
彼の娘は優秀である。
出自や女性であることについて色々と口を出してくる者は後を絶たないが、彼女の能力について不安を抱いている者は皆無に等しい。もっとも、その能力が軍略に傾きすぎているのではないかという懸念はあったが。
「――北方の国境を物理的に完全閉鎖する。なるほど、そうすれば北部の民は安心して生業に励むことができるだろう。彼らを不安にさせている余に不徳があることも認めよう。だが、今の我が国にそれをするだけの能力はない」
「では、北方軍の創設をお認めください。北部諸侯から供出された部隊だけでは手が足りません」
当時の皇国軍の総兵力は五万ほどだったとされている。
必要ならば諸侯から戦力を募り、最大で一〇万程度にまで増強できたというが、軍としての質は劣悪そのものだった。統一された訓練さえ行われず、諸侯の財力がそのまま軍の質に直結していた。
「どれほどの戦力を確保するつもりだ」
「一〇万」
エリザベーティアが即答すると、議場にはざわめきが広がる。
武官たちは何度も頷いているが、財務官僚あたりは真っ青な顔で頭を振っている。軍の既存総兵力よりも多い地方軍を皇太子の思いつきで創設するなど、正気の沙汰ではなかった。
「で、殿下! 恐れながら申し上げます!」
勇気ある官僚のひとりが声を上げる。
統治者とその後継者の会話に口を差し挟むのは、皇国でなければ命を捨てるに等しい行為だった。
「そうなると現在の軍事予算を倍増させても足りません! 財源がどこにも……」
彼の周囲の官僚たちが口々に同意の声を上げる。
ただ、エリザベーティアにしてみれば、騒々しいだけで何ら自分の考えに変化を及ぼす類のものではなかった。
「国境を守りきる軍備がないことで、貴重な財産が北の敵に蚕食されているのです。これまでにどれだけの損失が出たか、あなた方ならば理解しているでしょう?」
エリザベーティアの指摘に、財務官僚たちは一斉に口を噤む。
建国以来、北の人間種国家の政治的状況による幾度かの小康状態――つまりは諸部族を纏め上げられる政治的大物の誕生か、内輪揉めによって外征が不可能になる状況――を除けば、北部国境は常に敵からの侵略を受けていた。
エリザベーティアが赴いた主要な戦場も北部であり、皇国の発展を妨げている最大の問題が、当該地域の安全保障だ。
「北だけではありません。西も東も、南でさえ今の軍備では守りきれません。陛下が初代様とともに戦った頃とは、この国の置かれている状況に大きな違いがあるのです」
「余がもの知らずだというか」
フィリップスはあえてそうエリザベーティアに訊ねた。
愚弄されたとは思わない。彼は平凡ではあったが無能ではなかった。
自分にできないことをしっかりと理解できる種の凡人だった。
「少なくとも、今のいくさはご存じないと思います」
発言したのがエリザベーティアでなければ、議場は彼女に対する罵倒で満ちあふれただろう。
しかし次期皇王という立場は、皇王への諫言を述べるにはこれ以上ないものだ。
彼女は皇王の臣下でありながら、半歩だけ皇王に近しく、半歩だけ皇王と同じ視点でものごとを述べることができた。
「――考えておこう」
「は……それでは失礼します。陛下に四界の恩寵があらんことを」
エリザベーティアは一礼し、髪と裾を翻して出口へと向かう。
その行動には一切の逡巡が感じられず、フィリップスの返答に満足したのかさえ分からない。ただ、自分が言うべきことを総て伝えたという無言の宣告がそこに存在した。
「――――」
エリザベーティアが議場を退出すると、先ほどまで殴り合っていた官僚たちは互いに顔を見合わせて困惑を共有していた。
フィリップスはそれを見て取ると、平坦な声音で散会を告げた。
こうした場での殴り合いは、皇国建国以前からの伝統とされており、はじまりは初代皇王の軍勢における軍議だったという。
この流血茶飯事の伝統については、時代を経るごとにおとなしくなっていくが、この頃はまだその兆しさえ見えていなかった。
官僚たちの背後から力自慢技自慢の官僚見習いたちが躍り出て、別の官庁の見習いたちと殴り合う。殴り合った結果何が得られるというわけでもないのだが、少なくとも負ければ失う名はある。
局長などの高級官僚たちは、部下の邪魔にならないように部屋の隅に逃れる――部屋から出ることは負けを意味する――が、中には腕力と胆力で地位を駆け上った古強者もいる。彼らは若者に交じり、この伝統的な争いに率先して参加していた。
そうした者たちはどこの官庁にもいるから、彼らは彼らで達人同士の果たし合いといった風の戦いを見せる。
公の場で魔法の使用が可能だった時期でもあり、魔導師たちが味方の身体機能を強化する詠唱も聞こえてくる。
そんな中でも、フィリップスは平静を保ったまま議場を眺めていた。
彼は、凡庸な王だった。
これは後世の研究でも明らかで、彼ほど消極的だった皇王は他にいない。
皇国を大きく変化させなかったという意味での非積極的な皇王は他にもいたが、消極的と評される皇は彼ひとりである。
そんな彼が皇太子として見出されたのは、帝国との戦いが終わった直後のことだ。
前提として、その生涯が総て明らかになっている皇王は、第一〇代皇王レクティファールまで数えた一〇人のうち、六人。
他の四人は、生まれすら定かではなく、基本的に〝白〟として大神殿に現れた時点からの記録しかない。
そうした点では、生涯を生まれから辿れるフィリップスというのは、非常に地に足のついた存在である。
彼の生まれは旧帝国の農村で、そこで私塾を開いていた役人兼業農家の息子として生まれた。一〇人兄弟の次男という田舎では珍しくない大家族の一員として幼少期を過ごし、兄弟の中でもっとも頭が良かったために、父の伝手で帝都の寄宿学校へと入学することになった。
他の兄弟といえば、健康に育った七人のうち家を継いだ兄が農家。弟ふたりは軍へ、妹四人は当たり前のように各地へと嫁に出された。
彼が帝都で過ごしている間に、彼の家は両親と兄夫婦、そして兄の子どもたちが暮らす形へと変化していった。
それは、当時の農村部ではさほど珍しくない光景だ。
人々は当たり前のように日々を過ごし、当たり前のように命を繋いでいた。
フィリップスはおそらく、自分もそんな当たり前の一部になるのだろうと漠然と考えていたが、歴史はそれを許さなかった。
皇国暦前五年、旧帝国暦二〇五六年、帝国にて施行された亜人排斥の法に対し、各地で反乱が勃発。
当初軍の動員によってあっさり終了するであろうと考えられていた戦乱は一年、二年と続き、人々がそのことに困惑しはじめた頃――学校を卒業し、地方官吏として現在の皇国方面の小さな村に役人として赴任していたフィリップスは、反乱軍のひとつに村を占領された。
初代皇王が率いる諸族連合軍だ。
龍族や幻想種というお伽噺の存在を擁する、後の皇国の礎となる組織だった。しかし、このときは一〇〇〇程度の小規模な集団に過ぎなかった。
フィリップスは、この時点ではまだ帝国が敗北するとはまったく考えていなかった。
そう考えるのも当然だ。当時の帝国はアルマダ大陸の総てを支配し、その動員兵力は一〇〇〇万とも二〇〇〇万とも言われていた。
いくら強力な種族が加わっていようと、総数が一〇〇〇かそこらの反乱軍が帝国を打ち崩すなど考えられるはずがなかった。
フィリップスはそう考えて、帝国軍が反撃するまでなんとか村を守ろうと初代皇王と交渉し、成功した。
村の蓄えのいくらかを提供する見返りに、手荒な真似は控えられた。
村の若者のうち、帝国の政治に不満を抱いていた者が数名、諸族連合軍に加わったりもしたが、帝国に対しては、村を守るためという言い訳で名目は立つ、とフィリップスは考えていた。
その際、どんぶり勘定この上なかった諸族連合軍――なんと初代皇王自身が数字仕事をしていた――の手伝いをしていたが、彼に危機感などほとんどなかった。
そうした部分を見ても、彼は平凡だったのだろう。
彼が忠誠を誓った帝国政府が、彼のいる村を反逆者に与したと断罪し、討伐の軍勢を差し向けるまでは。
その戦いは、『リューベン包囲戦』として戦史に残っている。
討伐軍は、リューベンというそこそこの大きさの村に諸族連合軍を閉じ込め、村人ごと燃やし尽くそうとした。
それに対して諸族連合軍は、主力の大半と、少数で人間のみの構成というふたつの部隊を作り、それぞれ陽動部隊と伏兵部隊とした。
陽動部隊が包囲突破を図るように見せかけ、そこに帝国軍が戦力を集中させる中、人間のみの伏兵が帝国軍兵士のふりをして敵司令部を奇襲、撃破する。
諸族連合軍が人間種以外で構成された反乱軍である、という敵の認識を利用した策だった。
フィリップスは、この作戦で初代皇王とともに伏兵部隊にいた。
彼の心変わりの理由は明らかにされていないが、彼の平凡ながら優秀な頭脳が、帝国で今後の人生を送ることの危険性を導き出したというのが、史学者たちの結論だった。
平凡であるがゆえに安息を望み、優秀であるがゆえに帝国にあってそれが叶わないことを理解してしまったのだろう。
以降のフィリップスは、諸族連合軍の経理担当として名前が残っている。
この肩書きは、諸族連合軍の拡大によって徐々に重苦しいものへと変化していったが、その頃でもまさか皇太子などというものになるとは思っていなかっただろう。
彼が届けるあてもなく書き綴った家族への手紙にも、それは示されている。
彼が手紙に書いたのは、大きく三つ。
自分は諸族連合軍とともにいるが、国を裏切ったわけではないこと。
家族へ迷惑をかけることへの詫び。
そして、この戦いが終わったら、故郷へ戻ってのんびりと過ごしたい――これまた平凡な願いだけだった。
彼は足かけ五年、諸族連合軍とともに戦場を駆け抜けた。
帝国の常識を弁えた彼がいなければ、諸族連合軍の進軍はもう少し滞っていただろう。もっとも、それは後世から見た結論であり、当時の彼は、自分がいなければ諸族連合軍はならず者集団に成り下がるという危機感を抱いていた程度だ。
そんな考えが事実かは分からない。
事実としてあるのは、諸族連合軍がやがて他の反乱軍の一部を糾合して一大勢力となり、旧帝都への奇襲をもってアルマダ帝国という汎大陸国家を崩したことだけ。
その時期にはもう、彼は諸族連合軍の行政官として人々に認知されていた。これでは故郷に帰るのも難しいかと思いはじめ、なんとか初代皇王に平凡な余生を認めてもらおうと決意したのは、〈アルトデステニア皇国〉建国から二年後のこと。
平凡な決意を胸に初代皇王のもとへ赴いた彼だが、それが叶うことはなかった。
白い髪を持つ彼は、その場で皇太子に任ぜられ、呆然としている間にエルメイレ山へと連れていかれ、そこに存在した四界の主を祀る社にて立太子の儀を行った。
彼は、皇太子となった。
そして彼は知る。
〈皇剣〉という遺失兵器の危険性と、初代皇王に残された命数を――
初代皇王の崩御は、皇国暦二五年の初秋のことだった。
秋風によって木々の色が移り変わる頃、初代皇王は政務を行うことができなくなり、ひと月の後、この世界から消え去った。
歴代皇王としては第九代、第三代に続く短い治世である。
初代皇王が皇国に残したものといえば、意外にも大半が文化的遺産であって、政治的な財産といえば国是ひとつだけと言える。
彼の為政者としての能力はあまり高くなく、しかし何処かの高度な技術体系の知識を持っていた。そのため、文化的側面で多くの遺産を遺すことになったのである。
彼は最初に彼を見つけた白龍妃に礼を言い、他の家族への別れを済ませると、すぐにフィリップスを呼び出した。
フィリップスは初代皇王に対し、自分ではなく皇妃たちと過ごすべきだと説いたが、初代皇王はそれを受け入れず、フィリップスが見守る前で消滅した。
いずれ自分もこうなるのだという恐怖を最後に、フィリップスは〈皇剣〉を受け入れる。
服喪の後、彼は第二代皇王として人々の前に姿を現し、〈アルトデステニア皇国〉が〈皇剣〉によって継承される国であることを内外に宣言する。
それは、かの独立戦争を初代皇王とともに戦った――と、されていた――人物の言葉として深く受け入れられ、偉大なる若者のあとを継いだフィリップスは、大過なく皇国を統治した。
ただ、やはり彼は内政家だったのだろう。
第二代皇王の時代、皇国は軍事的には停滞した。周辺国に合わせて、新たな兵器こそ開発されていたが、軍備は必要最低限に留められており、皇王と軍の関係は決して良好とは言えなかった。
それでもフィリップスは名君として称賛された。
彼は、初代皇王がやり残した国内の開発を進め、耕作地を増やし、鉱山を開き、港を作った。その手腕は誰が見ても優れたもので、国民は盈満な生活を送れるようになったことを喜んだ。
かつて住む場所を追われた自分たちが、豊かな土地を与えられ、そこで誰に命を狙われることもなく生きることができるようになったのだ。民がフィリップスを褒め称えるのも当然だった。
しかし先に述べたとおり、彼と軍との関係は決して良くなかった。
彼は、軍事的行動の価値を最後の最後まで理解できなかったのである。
彼は内政家だった。
いや、内政家でしかなかった。
軍とは如何なるもので、それがどのような意味を持つ集団であるのか、辞書的な意味以上のことをまったく理解できなかった。
もしも彼に軍への理解があれば、皇国の歴史は大きく変わっていただろう。
以降二〇〇〇年にも亘る北の人類国家との戦争は起きなかっただろうし、二〇〇〇年後に彼の正統なる後継が一度途絶え、国が存亡の危機に立たされることもなかったに違いない。
そんな彼にもっとも強く反発したのが、彼の直接の後継者である皇太子エリザベーティアだった。
「殿下! おやめください!」
国防予算に端を発した議場の騒がしさとは別の騒動が、議場と廊下を隔てる扉の前で発生していた。
突然現れたエリザベーティアが、そのまま議場へと入ろうとしていたのだ。
「どきなさい。あなたたちにわたしを押しとどめる権限はないはずです」
エリザベーティアがそう衛兵たちを睨みすえる。これには経験豊富な衛兵であっても、怖気を感じずにはいられなかった。
「もう一度言います。そこをどきなさい」
エリザベーティアが言葉を重ね、一歩を踏み出す。
衛兵ふたりは一歩後退り、踵が壁にぶつかった。
猛獣を前にしても、これほどの恐怖は感じないだろう。
相手はまだ〈皇剣〉を継承していないはずなのに、自分よりも遥かに巨大な生物を前にしているかのような錯覚を覚えた。
衛兵ふたりは喉を鳴らし、しかしその職務を放棄することはしなかった。
しかたなくエリザベーティアが直接手を出そうと結論付けたそのとき、扉の向こうから低い声が響いた。
『――通しなさい』
フィリップスの声だった。
「は……ははッ」
衛兵ふたりはすぐに扉に手をかけ、エリザベーティアの入室を叫ぶ。
「エリザベーティア皇太女殿下、おなりです!!」
扉が開かれ、先ほどまで取っ組み合いをしていた官僚たちが、威儀を正してエリザベーティアを出迎える。
床に散らばった書類と官僚たちの顔に浮かんだ痣が乱闘の激しさを感じさせるが、エリザベーティアにしてみれば大した問題ではなかった。
彼女は立太子以降の大半の時間を、戦場で過ごしている。
それは、軍才に恵まれなかったフィリップスの代理としてであり、彼女自身の望みからだった。
「エリザベーティア、なんの用か。報告は軍からすでに受けている。儀礼的なやりとりは嫌いだっただろう?」
議場を突っ切って自分に向かってくるエリザベーティアに、フィリップスが訊く。
本来ならば、皇太子の戦場からの帰還には、皇王への報告を主とする式典がある。だが、エリザベーティアはその面倒を嫌い、フィリップスもまた常に戦場を駆けている後継者への負担を少しでも軽減すべく、式典を四半年に一度と大幅に減らしていた。
「わたしが陛下に奉呈いたしました予算案について、ご理解いただけなかったと聞きましたので、直接ご説明しようと参じた次第です」
エリザベーティアの言葉に、フィリップスは大きく溜息を漏らした。
こうなるであろうと思っていたから、エリザベーティアが帰還する前に予算案を決着させたかったのだ。
彼の娘は優秀である。
出自や女性であることについて色々と口を出してくる者は後を絶たないが、彼女の能力について不安を抱いている者は皆無に等しい。もっとも、その能力が軍略に傾きすぎているのではないかという懸念はあったが。
「――北方の国境を物理的に完全閉鎖する。なるほど、そうすれば北部の民は安心して生業に励むことができるだろう。彼らを不安にさせている余に不徳があることも認めよう。だが、今の我が国にそれをするだけの能力はない」
「では、北方軍の創設をお認めください。北部諸侯から供出された部隊だけでは手が足りません」
当時の皇国軍の総兵力は五万ほどだったとされている。
必要ならば諸侯から戦力を募り、最大で一〇万程度にまで増強できたというが、軍としての質は劣悪そのものだった。統一された訓練さえ行われず、諸侯の財力がそのまま軍の質に直結していた。
「どれほどの戦力を確保するつもりだ」
「一〇万」
エリザベーティアが即答すると、議場にはざわめきが広がる。
武官たちは何度も頷いているが、財務官僚あたりは真っ青な顔で頭を振っている。軍の既存総兵力よりも多い地方軍を皇太子の思いつきで創設するなど、正気の沙汰ではなかった。
「で、殿下! 恐れながら申し上げます!」
勇気ある官僚のひとりが声を上げる。
統治者とその後継者の会話に口を差し挟むのは、皇国でなければ命を捨てるに等しい行為だった。
「そうなると現在の軍事予算を倍増させても足りません! 財源がどこにも……」
彼の周囲の官僚たちが口々に同意の声を上げる。
ただ、エリザベーティアにしてみれば、騒々しいだけで何ら自分の考えに変化を及ぼす類のものではなかった。
「国境を守りきる軍備がないことで、貴重な財産が北の敵に蚕食されているのです。これまでにどれだけの損失が出たか、あなた方ならば理解しているでしょう?」
エリザベーティアの指摘に、財務官僚たちは一斉に口を噤む。
建国以来、北の人間種国家の政治的状況による幾度かの小康状態――つまりは諸部族を纏め上げられる政治的大物の誕生か、内輪揉めによって外征が不可能になる状況――を除けば、北部国境は常に敵からの侵略を受けていた。
エリザベーティアが赴いた主要な戦場も北部であり、皇国の発展を妨げている最大の問題が、当該地域の安全保障だ。
「北だけではありません。西も東も、南でさえ今の軍備では守りきれません。陛下が初代様とともに戦った頃とは、この国の置かれている状況に大きな違いがあるのです」
「余がもの知らずだというか」
フィリップスはあえてそうエリザベーティアに訊ねた。
愚弄されたとは思わない。彼は平凡ではあったが無能ではなかった。
自分にできないことをしっかりと理解できる種の凡人だった。
「少なくとも、今のいくさはご存じないと思います」
発言したのがエリザベーティアでなければ、議場は彼女に対する罵倒で満ちあふれただろう。
しかし次期皇王という立場は、皇王への諫言を述べるにはこれ以上ないものだ。
彼女は皇王の臣下でありながら、半歩だけ皇王に近しく、半歩だけ皇王と同じ視点でものごとを述べることができた。
「――考えておこう」
「は……それでは失礼します。陛下に四界の恩寵があらんことを」
エリザベーティアは一礼し、髪と裾を翻して出口へと向かう。
その行動には一切の逡巡が感じられず、フィリップスの返答に満足したのかさえ分からない。ただ、自分が言うべきことを総て伝えたという無言の宣告がそこに存在した。
「――――」
エリザベーティアが議場を退出すると、先ほどまで殴り合っていた官僚たちは互いに顔を見合わせて困惑を共有していた。
フィリップスはそれを見て取ると、平坦な声音で散会を告げた。
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